弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年8月24日

選挙「裏」物語

社会

著者:井上和子、出版社:双葉社
 公共事業は土建業界のためにある。そして選挙のときに働いてくれた謝礼として大きなハコ物がつくられる。しかし、そこで使われるのは税金だ。公共事業が少なくなると、それに見返りを求めていた人々が選挙運動に熱心ではなくなった。
 選挙は、公共事業を獲得するための選挙が中心になっていた。高速道路などの土木分野にものすごく予算が回されるので、この方面の業界だけは潤っていた。
 国が損したって構わない。オレたちが潤えば、別にそれでいいんだ。
 でも、これではいけない。税金のかたまりである公共事業をエサにして票を集めるというあざとい選挙スタイルは通用しなくなりつつある。
 著者の考えに賛成します。今回の参院選にあらわれているように、自民党ぶっつぶせを叫んで登場した小泉前首相のおかげで、自民党の支持基盤がかなり崩れつつあるのも事実です。それでも、公共事業という巨額の利権にむらがるゼネコンと暴力団、そしてそれを支えながら甘い汁を吸い続けている政治家たちが、相変わらず大きな顔をしている状況は、まだまだ変わっていないように思います。
 筑後平野に新幹線工事がすすんでいます。一見のどかな広大な田圃のなかを延々とコンクリートむき出しの無骨な高架線路が貫いています。寒々とさせる光景です。日本の国土の荒廃を象徴させるものだと感じます。九州新幹線って、黒字になる可能性なんて初めからないのではありませんか。少なくとも私はそう思います。莫大な赤字路線をつくり、税金で穴埋めしていくことになるのは必至です。大型公共事業を中心とする政治を今のまま続けていいことは、何もありません。
 民主党の候補者は、汗水流して下積みの苦労をしていない人が少なくないので、目に見えない心配りや目立たない苦労への理解が足りないケースが多い。このような公募で当選した民主党の政治家のなかには、自民党の公募で落ちたから、仕方なく来たという無節操なタイプがいる。
 もちろん、無節操ではありますが、自民党と民主党とに本質的な違いがないことの反映だというほうが、より正確ではないでしょうか。ただし、参院選のあと、自民党が大敗したことをふまえて民主党は自民党との違いを浮きたたせようと必死です。それが憲法改正に反対する方向であることを私は心から願っています。
 猛暑の毎日です。だから、なのでしょうか。セミの鳴き声がパタリと止んで、勢いがなくなってしまいました。まだツクツク法師は聞かれません。庭に淡いピンク色の芙蓉の花が咲いています。酔芙蓉はまだです。午前中は真白の花なのに、午後から赤味がさしはじめ、夕方にはピンク色になって、酔った状態に変わります。
(2007年6月刊。1400円+税)

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