弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年7月27日

粘菌、驚くべき生命力の謎

著者:伊沢正名、出版社:誠文堂新光社
 ああっ、これはすごーい。こんな不思議な色と形の生命体がこの世にいたなんて・・・。ホント、世の中は広大無辺だと実感します。
 粘菌の見事な写真のオンパレードです。ぜひ一度、この写真集をどこかで手にとって見てみてください。きっと、世界観が変わることと思います。
 日本の粘菌分類学研究で有名なのは、昭和天皇と南方熊楠(みなかたくまぐす)である。昭和天皇は磯辺にすむ海洋動物の研究をしていたと思っていましたが、違うんですね。
 粘菌は単細胞生物。彼らの住みかは朽ち木の中や枯葉の下の湿った土の中であり、そこでミクロなサイズで生きている。肉眼で見るのはむずかしい。ただ、ときに数センチほどに成長した変形体や1ミリほどの大きさをもつ子実体を見かけることもある。
 朽ち木を壊した拍子に、血管網のようにびっしりと朽ち木に入り込んだ糸状の変形体が現れてびっくりすることもある。変形体は、このような網目構造をつくって活発に這いまわる。その網目構造は、環境や外部の刺激により劇的につくり変えられる。これは体形の変化であり、変形体の行動の一様式である。
 粘菌の登場する映画がある。えっ、何?なんと『風の谷のナウシカ』なんです。宮崎駿監督による映画です。私は子どもたちと一緒に何回も見ました。すごく圧倒されるような映像です。そこに粘菌が登場します。
 粘菌は、土鬼の科学者がトルメキアを倒すために種菌を特殊培養した植物兵器として描かれている。空中戦艦の中で爆発的に成長した粘菌は、艦を覆い尽くし、地に降りて土鬼の領地を浸食し、猛毒の瘴気をまき散らし、あっという間に直径数キロもの姿に変貌する。王蟲と粘菌を菌床に広大な領土は腐海に没し、土鬼帝国は崩壊する。
 いやあ、すごーい写真集ですよ。この世の中に、こんな色と形の生き物がいたなんて、驚きです。みなさんも、ぜひ一度、手にとって眺めてみてください。

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