弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年7月 6日

エリカ、奇跡のいのち

ヨーロッパ

著者:ルース・バンダー・ジー、出版社:講談社
 柳田邦男氏が推薦していた絵本です。絵はとても写実的です。きれいに整いすぎている感じすらします。
 1944年のことです。1933年から1945年までの12年間に、600万人ものユダヤ人がヒトラー・ナチスによって虐殺されました。600万人といっても、まったくピンときませんよね。でも、福岡県の全人口より多いし、東京都民の半分というと、少しは想像できるようになります。殺されていった一人一人に語られるべき人生があったのですよね。600万人という数字だけで片づけられてはたまりません。
 そのとき、わたしは生まれてやっと2ヶ月か3ヶ月の赤ちゃんでした。父や母と一緒に、牛をはこぶ貨車に押しこめられ、立ったままぎゅうぎゅう詰めで動くこともできなかったでしょう。列車がある村をとおるとき、スピードを落としたので、母は「今だ」と思って、貨車の天井近くにある空気とりの窓から、外にわたしを放り投げてしまいました。
 すぐ近くの踏み切りで、村の人が汽車の通り過ぎるのを待っていて、貨車から投げ出される赤ちゃんを見ていたのです。
 母は、自分は死にむかいながら、わたしを生にむかって投げたのです。
 村人がわたしをひろいあげて、女の人に預けました。ユダヤ人の赤ん坊を預かるなんて、生命にかかわることでしたが、家族の一人として大切に育ててくれました。
 まさしく奇跡が起きたのですね。
 先日、福岡の小さな映画館で「それでも生きる子どもたちへ」という映画を見ました。少年兵として殺し、殺されの毎日を生きているアフリカの男の子、両親からエイズをうつされ、学校でいじめにあうアメリカの女の子、空き缶ひろいなどをしてたくましく生きているブラジルの兄と妹・・・。
 中国の大都会で捨て子として育った女の子は、金持ちの子が両親の不和から大切にしていたお人形さんを投げ捨てたのを拾ってもらって、大切に世話しています。でも、頼りにしていたおじいさんが交通事故で死んでしまうのです。
 たくましく生きていくこどもたちの姿に、何度も目がウルウルになってしまいました。

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