弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年6月29日

グアンタナモ収容所で何が起きているのか

アメリカ

著者:アムネスティ・インターナショナル日本、出版社:合同出版
 グアンタナモというのは、キューバにあるアメリカの基地です。キューバ政府はアメリカに返還を求めていますが、キューバを敵視するアメリカ政府は無視して居座り続けています。その根拠は100年前に結んだ条約で半永久的な借用が認められているというものです。アメリカって、ホント、厚かましい国ですよね。日本にもアメリカ軍の基地がたくさんあって、治外法権のように我が物顔してのさばっていますけどね・・・。
 このグアンタナモ基地については、アメリカにとって国交のない国の領内にあるため、アメリカの法律も国際法も適用されないというのです。本当に、そんなことってあるのでしょうか。信じられません。
 アメリカは、「テロリスト」として逮捕した人500人を、ここに収容していますが、なんの司法手続きも経ていません。裁判待ちというのでもないのです。これが「民主主義国家アメリカ」のやり方なんですね。
 2002年1月に「テロリスト」の収容が始まりました。しかし、映画『グアンタナモ、僕たちが見た真実』は、収容所のなかに無実の若者がいたことを明らかにしています。たまたまイギリス警察に捕まっていたことが判明したのでした。刑事司法手続きは、そこにありませんでした。裁判で無実が判明したので釈放されたというわけではありません。
 グアンタナモに収容されている人々は「敵性戦闘員」だとされています。捕虜ではないのです。法的地位をもちません。ジュネーブ条約にもとづく捕虜としての保護も受けられません。刑事被疑者としての権利も認められません。尋問についても何の制限もありませんから、肉体的また精神的な拷問が日常的です。
 家族の面会はおろか、弁護士の面会すら認められていません。
 これは、ブッシュ政権の公然たる方針なのです。ブッシュ大統領は、タリバンやアルカイダには、捕虜の人道的取り扱いを定めたジュネーブ第三条約は適用しないと高言しています。
 それでも、アメリカの弁護士たちの取り組みによって、2004年6月、アメリカ連邦最高裁は、「グアンタナモの被収容者は人身保護請求手続きによって、自らの拘束の違法性に関する法的審査を受ける権利を有する」という判決を下したのです。ところが、アメリカ政府はこれに応じませんでした。
 そのうえ、なんと、人身保護請求を認めない法律というのは国会で成立させたのです。
 敵性戦闘員としてグアンタナモに収容している者に対しては、いかなる司法裁判所も人身保護請求の権限を行使することは許されないという法律です。
 ええっ、そんな、バカな。アメリカの野蛮さが、ここにはっきり浮かび出ています。
 国連は、グアンタナモ基地は早く廃止されるべきだという見解です。
 世界に自由と民主主義を広めているはずのアメリカが、とんでもない野蛮な人権蹂躙を公然としているなんて、ホント、許せません。

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