弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年5月10日

もう戦争はさせない

アメリカ

著者:メディア・ベンジャミン、出版社:文理閣
 ブッシュを追いつめるアメリカ女性たち、というサブタイトルのついた本です。アメリカの「平和を求める女性たち」の運動は、コードピンクとも呼ばれています。
 イラク戦争に送られて戦死した息子をもつシンディー・シーハンの次のような訴えが紹介されています。ブッシュ大統領がハード・ワーク(つらい仕事)と言ったことを受けて、シーハンは次のように言ったのです。
 あなたは、テレビで見ているし、毎日、戦死者と負傷者の報告を受けているから戦争のつらさはよく知っていると言ったわね。でも、本当のつらい仕事がどのようなものか、分かってなんかいないわ。つらい仕事というのはね、かけがえのない自慢の勇敢な息子が、現実には何の根拠を今も持っていない戦争に連れ去られてしまって、二度と戻ってはこないことを思い知らされることよ。・・・。
 でも、なかでも一番つらい仕事はなんだか分かるかしら。それは、家族が何世代にもわたって忠誠を誓い命がけで戦ってきた国家の指導者が、ウソをついて国民を騙していたという事実を受けとめなければならないことよ。
 次は、自爆テロによって一人娘を失ったイスラエルの平和活動家(女性)のロンドンでのスピーチの一部です。
 世界のすべての人々は、はっきりした二つのグループに分かれています。平和愛好グループと戦争屋グループとに。いま、地上では悪の王国が支配しています。指導者と名乗る人たちが、民主的手段をもって、神の名において、国家の利益の名であれ、あるいは名誉や勇気の名においてであれ、殺し破壊する権利と好むままに卑劣と不正をおこなう権利、そして若者を殺人屋にしたてる権利を得てきました。
 私の娘は自分を殺した若者とならんで眠っています。騙された二人が眠っています。少女は両親と国が自分を守ってくれているから、良い子には誰もひどいことをする人はいないから、安全だと信じて町を横切ってダンス教室に行こうとしたのです。
 パレスチナの若者は、自爆テロでは事態を何も変えることはできず、天国に行くこともできないのに、騙されて行けると信じていたのです。
 うーん、そうなんですよね。若者を騙し、その未来を奪う大人たちの責任は重いですよね。
 ブッシュ大統領は記者会見が嫌いだ。強いられなければ開かない。彼は、記者の座席表をあらかじめもらっていて、それを見ながら、お気に入りの記者を選んで質問させている。
 記者たちは、大統領選挙の遊説中に取りこまれ、ごほうびとしてホワイトハウス詰め記者となっていく。選挙中に点数を稼いで、人脈をつくり、親しくなっておく。だから、相手の言うことに挑戦するような質問を避け、初めから自己規制をしている。
 アメリカでは、黒人の子ども100万人が貧困生活をすごし、黒人の成人男女100万人が刑務所にいる。毎晩25万人をこえる退役軍人がホームレスとして路上に寝ている。
 いやあ、なんど読んでもすごく悲惨な現実です。こんなアメリカを日本が見本とすることのないようにしたいものです。
 アメリカでの女性運動の前進に大いに期待します。日本でも負けないように取り組まないと、アメリカみたいに可愛い息子たちを戦死させることになってしまいます。

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