弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年5月 7日

IKEA、超巨大小売業、成功の秘訣

世界(ヨーロッパ)

著者:リュディガー・マングブルート、出版社:日本経済新聞出版社
 北欧デザイン、垢抜けたセンスの安い家具として、世界中で売り出しているIKEA躍進の秘密を探った本です。
 創業者は若いころナチス・ヒトラーの信奉者でした。それはヒトラー死亡まで続きました。祖母の影響だったようです。11歳のときから商売をしていたというのも驚きです。種物商から種を買い付けて、近辺の農民に売って歩き、本当にお金をもうけたというのです。信じられませんが、どうやら本当の話のようです。
 IKEAは、世界33ヶ国に230店を展開する。多国籍企業なのだ。2005年度のイケアの総売上高は148億ユーロ。イケアのカタログは1億6000万部。世界一だ。創業者イングヴァル・カンプラードは世界屈指の億万長者の一人であり、総資産は230億ドル。
 祖父母はドイツのザクセン地方からスウェーデンに移住した。祖父はやがてスウェーデンへの移住が失敗だったと絶望し、銃で自殺した。しかし、祖母は開き直ってがんばった。
 カンプラートは高等商業学校に在学中のころ商売を始めた。万年筆をつくっているパリの会社に500本を注文して、スウェーデン中を売り歩いて成功した。
 28歳のとき、大きな家具展示場を開設して家具を売り出し、大あたりした。初日に 1000人のお客が行列して並んでいた。
 カンプラートは、カタログのテキストを自分で書いた。マーケティングのプロだった。なにより人心掌握にたけていた。売れはじめると、イケアは、ポーランドで家具製造をはじめた。
 カンプラート自身には、美的感覚はまったくなかった。自分で無粋な人間だと言った。いくらデザインが最高でも、人々がそれを買えなければ、何にもならないじゃないか。
 イケアは家具販売にキャッシュ・アンド・キャリーの原則をもち込んだ。お客は商品を買って、お金を払い、すぐ自分で持ち帰る。そして自分で組み立てる。
 イケアの家具は、明るい自然な色。イケアの戸棚は開け広げで、実に軽やか。イケアは生意気な若者のイメージをまとうようになった。
 スウェーデンの人々は、長くて暗い冬を家の中にしばりつけられて過ごすから、明るく優しい感じの材質を好み、シンプルで直線的なデザインを求めた。壁や天井に明るい色調を用いることで、光を最大限にとり入れる。鮮やかな色彩の家具に接すると、人は自分は若くてエキサイティングな人生を過ごしているような気分になるものだ。
 ところが、アメリカでイケアは苦戦した。イケアのヒット商品は、アメリカ人の生活習慣にあわなかった。
 イケアは原則として品質第一とは考えていない。日常の要求に数年こたえればそれでいいというのがイケアの基本方針。それ以上の耐用性は求めない。大事なのは使い勝手がいいということ。だから書棚の表面は、台所の調理台のように頑強である必要はなく、質もほどほどでいい。人目につかない部分には安い材料をつかう。家具を頻繁に取り替えましょうとイケアは宣伝する。
 値段の安さがイケア成功の第一要因だとすると、第二の要因はデザインである。文句なく魅力的なデザインだ。イケアはただの家具店ではない。ここはライフスタイルを学ぶ場所でもある。
 なーるほど、一度、イケアの家具を見てみたい、使ってみたいものだと思わせる本でした。
 大型連休はじっとおとなしく庭の手入れなどをして過ごしました。枯れたチューリップの地上部を刈り取り、雑草を抜いて、初夏にそなえました。今は、アイリスから濃紫色のアヤメそして黄色いカキツバタの花が咲いています。アクロステンマの白にピンクの筋の入った花に目が魅かれます。クレマチスは相変わらず次々と咲いてくれています。濃紫色の花弁が見事です。赤紫色の金魚草もいいですね。サクランボの実を食べにヒヨドリがやってきます。庭にヒマワリのタネを置く台をつくってみました。どんな小鳥が来てくれるか楽しみです。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー