弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年4月20日

杉野押花美術館コレクション〜パステルの風〜

著者:杉野俊幸、出版社:杉野押花美術館
 炭都・大牟田にも美術館があったんですね。炭都といっても、三池炭鉱はとっくに消えてなくなりました。早いもので閉山から10年たっています。三井は中央資本だけに、すべてが東京志向であり、地元には美術館も博物館も何も残しませんでした。
 そんな大牟田に美術館が出来ていることを知っても、あまり訪れる気はありませんでした。ましてや押花というと、なんだか、しおれた花の地味でくすんだ色あいしか連想できなかったからです。でも、まあ、ものはためし、だまされたと思って入ってみました。
 なんと入場無料なんです。しかも、小ぢんまりした木造りの美術館にかかっている押花が、どれもこれも生き生きしています。しおれて、くすんだ押花なんかじゃありません。うれしいことに、一つ一つの作品に手書きで作者の思いを語る文章がついてます。読んでいると、なんだか心のあたたまるほのぼのとした気分になります。
 私は群馬にある星野富弘美術館にも行ったことがあります。とても素晴らしい美術館でした。そこでも、一つ一つの絵に作者の思いが手書きされていて、絵を見て文章を読んで、生きる元気をもらったみたいにいい気分に浸ることができました。それと、まるで同じ気分です。
 タダで全部みてまわり、申し訳ない思いから、この本を購入しました。「美しい桃の花」というタイトルの押花があります。そのコメントを紹介します。
 「私の気に入った作品です。ピンクの花と黒い枝とバックの青色が協奏している。協奏は音楽での言葉であるが、絵画では響き合いと言うのであろうか」
 淡いブルーのパステルがを背景にピンクピンクした桃の花が春らしいあでやかさを競うように一面に咲いた作品です。まったくくすんだところはありません。
 いったいどうやってこんな作品をつくるのだろうと不思議な気持ちになります。そして巻末にその解答編があるのです。
 バックはパステルを塗るのです。パステルの持ち方、塗り方まで写真つきで解説されています。色と色を混ぜて、新しい色をつくり出します。そして、その上に押し花を置いてみて、花や葉が美しく見える色を発見し、その色で描くのです。
 押し花教室もあるといいます。
 私は、美術館で押花作品を見終わって、隣の喫茶コーナーに入りました。1階で手づくりパンやベーコンのくん製などを買い、2階に上がりました。ちいさいけれど見晴らしのいい部屋があります。カウンターに腰をおろし、ロイヤルミルクティーをゆっくり味わいました。なかなかうまい味です。
 よく晴れあがった春うららかな日曜日の昼下がり、至福のひとときでした。水曜日は休館です。

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