弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月13日

脳はなにかと言い訳する


著者:池谷裕二、出版社:祥伝社

 人間がうつ病にかかるのは、恐怖感や不安感がより強いからではないか。うつ病は動物の進化の過程で、いかに周辺に警戒心を素早く抱くか、ということと関係があるような気がしてならない。
 仕事の正確度を高めたければ、多くの行程をひとまとめにせず、細かなステップに分け、そのたびに報酬を与えるほかない。
 私の受験勉強もそうでした。おおまかな計画をまず立てますが、それは決して実現不可能なものではなく、ちょっとだけ無理したら実現しそうなレベルに設定します。そして当面の目標を次に立てます。こちらは、必ず達成できるものとし、達成感をひとつひとつ味わうようにしていきます。そうすると、ここまでやれたんだから、次へ進もうという気になるのです。ともかく挫折感をもたないように工夫しました。
 バイオリニストやピアニストは、指を動かす脳の領域が普通の人に比べて広い。これは、普通の人に比べて指の脳領域が広いからバイオリニストになるのではなく、バイオリニストをやっているから広くなったのである。
 脳には作業興奮という現象がある。興奮とは、脳の神経細胞が活性化するということ。
 まずは体を実際に動かしてみる。やる気がなくても、まず始めてみる。私も、なんだか気乗りがせず、準備書面を書く気にならないときでも、まずは机に座って何か書き始めてみるようにしています。そうすると、脳が次第に活性化し、やる気が出て、のめり込んでいく。朝、起きるときも同じこと。ともかく、すぐに動き出すこと。脳が目覚める。目覚めない、という前に、まず体を起こし、カーテンをあけ、顔を洗って雨戸を開ける。体を動かすことによって、それに引きずられるようにして脳が目覚めていく。布団のなかにいたら、いつまでたっても脳は目覚めない。
 薬物中毒は足を洗うのが難しいのに、恋愛感情のほうは急に冷めることがある。なぜ冷めるのか、その機構が分かれば覚せい剤の精神依存の治療につかえるだろう。
 快楽のやっかいな点は、ただ気持ちよいだけでなく、習慣性や依存性が出てくること。アルコールを飲んでも、ストレスを発散した気になっているだけで、体のほうは依然としてストレスを感じ続けている。
 重要なことは、ストレスを解消するかどうかではなく、解消する方法をもっていると思っているかどうか。そして、それ以上に重要なのは、別にストレスを感じていてもいいんだと考えること。つまり、ストレスをあまり怖がりすぎると、実際にストレスを受けたときに、必要以上に反応してしまう。
 子どもも日常的にド忘れしている。しかし、子どもたちは物忘れをいちいち気にしない。ところが、大人は年齢(とし)のせいだと落ちこんでしまう。ド忘れしたときには、それだけ自分の脳にはたくさんの知識が詰まっているのだと前向きに解釈するのがよい。うんうん、そうなんですよね。
 人間には後悔を嫌う本能がある。結婚や高額商談など、重要な選択をした後に、人はもっともらしい良いわけをして、後悔していないと思いこみたがる傾向が強い。
 集中力の高い人はアイデアマンではない。集中力の欠如した人のほうが創造性に富んでいる。集中力か創造性か、どちらに価値を置くのかは、その人次第。
 睡眠には、忘れかけた情報を呼び起こして記憶を補強する効果がある。
 自閉症の患者は嘘をあまりつけない。相手の気持ちが想像できないので、思ったままのことを相手に言ってしまう。
 いろいろ勉強になる本でした。それにしても、脳って、本当に不思議な生き物ですよね。

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