弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年10月27日

わたしはCIA諜報員だった

著者:リンジー・モラン、出版社:集英社文庫
 10代のころからスパイにあこがれていた女の子。スパイ小説の読みすぎです。ハーバード大学を優秀な成績で卒業して、あこがれのCIAについに入りました。
 CIAのスパイというのは、実はCIA局員ではなく、CIAのケース・オフィサーによってアメリカのために通常は金銭と引き換えにスパイ行為を働くよう勧誘された、不運な愚か者のこと。CIAは、そんな情報提供者を見つけて、査定し、関係をつくり、仲間に引きこむ。これを勧誘サイクルと呼ぶ。
 CIAに入ってすぐ過酷な訓練が始まった。一緒に入った仲間の大半は、鼻持ちならない傲慢な連中の集まりだった。日頃から、自分たちは最高であり、最優秀だと意識させられる。子どものように甘やかされ、大きな任務に貢献しているかのように錯覚させられた。
 厳しいサバイバル訓練を受けさせられる。毎朝、自分の車の安全を点検・確認させられる。海外に住むようになったら必要になると言われて。しかし、これで誇大妄想に陥り、やがて正気を失ったケースは数知れない。
 CIA内の不倫は珍しいことではない。尾行者をまくコツも教えられた。尾行者は変装する。しかし、靴を見る。靴の方まではめったに変わることがない。
 ケース・オフィサーとして情報提供者に会ったものの、きわめて疑わしい人間だった。嘘を言っているとしか思えない。CIAを金づるにしているのだ。
 9.11があってCIAが動揺したのは、ゲームの規則にしたがって動かない人間がいると分かったから。冷戦が終わり、伝統的なスパイ対スパイの戦法がもはや通じなくなった。だけど、CIAは今もなお、ゲームをやめたくない男性たちの集まりだ。
 著者がCIAを辞めたいと思った理由はたくさんあったが、イラク侵攻はアメリカがとったもっとも間違った方向だという確信が大きい。9.11の事件を起こしたテロリストの組織を撲滅しようとする努力がなんの実も結んでいないという事実をあいまいにするための、まったく不要なでっちあげの陽動作戦としか思えなかった。
 CIAの上司はこう言った。ブッシュ大統領は戦争をしたがっている。我々の仕事は、大統領にその理由を与えることだ。
 この話を聞いて著者は仰天した。それで、辞める決心がついた。
 CIAに入って、たちまち幻滅してしまったインテリ女性の体験記として面白く読みました。かの恐るべき謀略機関の総本山であるCIAも、なかの実情を知ると、たいした組織ではないようです。

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