弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月31日

今日、ホームレスになった

著者:増田明利、出版社:新風舎
 実に身につまされる本でした。なにしろ、私とまったく同世代の人々が、帰るべき家がなく、公園などで寝起きしているというのです。実に悲惨です。
 ところが、世の中には、ホームレスなんて気楽な稼業でうらやましいという意見があったり、働く意欲のない彼らには何の権利もなくて当然だと高言する人が少なくありません。私には、とても信じられません。冬には凍死寸前、夏は蚊に襲われ、いずれも安眠できない。若者に襲われたり、病気になったらどうしようもない。そんなホームレスに誰が好きこのんでなるというのでしょうか・・・。
 ホームレスになった理由は、失業・倒産、病気で高齢のために働けなくなったことなど。前職は、正社員、会社経営者、自営業者などが4割を占める。まさに明日は我が身かもしれないのです。50も半ばを過ぎた高齢で雇ってくれるところがどれだけあるでしょうか。路上警備の人々の日焼けした顔を見るたびにそう思います。
 家庭崩壊、熟年離婚。これらは、それまでの会社人間で家庭生活を放棄したツケがまわってきたとも言えるものです。私なんか、身震いしてきそうです。
 13人のケースが紹介されていますが、いずれも、悲惨です。大手総合商社の財務部次長だった52歳は、今や雑誌拾いで1日1000円の収入、食事はコンビニの廃棄弁当。ところが、今もスーツを着ている。
 49歳の外資系投資銀行ファンドマネージャーをしていた男性は、今はゲーム喫茶のサンドイッチマンが仕事。日当6000円。彼は、なんとボーナス込みで2000万円の年収を誇っていた人です。
 ゼネコン営業部長だったという56歳の男性は、雑誌拾いとアルミ缶回収で1日1500円の収入。体調不良で野垂れ死に寸前。
 自動車部品メーカーの管理職だった57歳の男性は首切りを仕事としているうちに、自分も解雇通告を受けてしまいました。雑誌拾いで収入は1日500円。意地悪した先輩や退職を迫った役員を包丁でメッタ刺しにする夢を何度もみるという。怖いですよね。本当に何回かありましたからね、そんなことが・・・。
 生まれ変わっても、サラリーマンにだけはなりたくない、もう嫌だね、と言います。よほど辛かったんですね。57歳だと、ハローワークに行っても求人ボックスさえないというんです。ああ、どうしましょ。
 ホームレスの男性の一週間の生活が紹介されています。本当に大変です。
 身体の清潔に気をつけている人は生き延びるが、そんなことどうでもいいと思っている人は短命で死ぬ。そんな統計があります。
 私も、家出してホームレスをしていた人から法律相談を受けたことがあります。全身から発散する独特の異臭に息が詰まりそうでした。本人はもう慣れて何も感じなくなっているのです。この本は、よく調べてあります。現代社会の矛盾をえぐるノンフィクションでした。

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