弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月18日

赤ちゃんの値段

著者:高倉正樹、出版社:講談社
 厚労省の統計によると、2000年度から2003年度までの4年間で106人の養子が日本から海外の養親に斡旋されている。しかし、これは、指定8業者の報告をまとめた数字。106人の養子が海外に渡ったあと、どうなったのかの確認はされていない。
 斡旋業者のなかには1人550万円の寄付を強要するところもある。
 日本人養子は、健康で、薬物汚染されていないため、海外で人気がある。養子輸出国は、かつては韓国。今は、一人っ子政策の陰で女児の捨て子が横行する中国である。
 1955年の日本の中絶件数は117万件。未成年は1万4000件で全体の1%。2003年は31万件で、4分の1に減ったが、未成年は4万件、13%と増えた。しかし、統計上の数字の3倍ほど実数はあるとみられている。
 日本人の赤ちゃんを養子にするには、総額で200〜300万円の費用がかかる。
 日本の家庭裁判所を通さない海外養子縁組が非常に多い。日本人の赤ちゃんは、アメリカの移民法にもとづき、養子縁組を前提とした孤児としてビザを取得し、移民として入国する。アメリカ人の養親は、本国に戻ったあと、地元の家庭裁判所に必要書類を出し、養子縁組の手続を完了させる。アメリカ国務省の移民ビザの統計によると、1996〜2003年度の8年間で、334人の日本人が養子として入国している。
 アメリカ国務省の統計によると、アメリカが海外から受け入れた養子の総数は2004年度は2万2884人。ここ15年間で3倍となった。トップは中国からで7,044人。ロシア5,865人。グアテマラ(3246人)、韓国1716人。
 韓国は、かつては孤児輸出国を自称する海外養子の一大供給国だった。韓国保険福祉部の統計によると、1986年度に8680人。1980年代は、6000〜8000人の養子を海外に出していた。うち6割以上がアメリカ向けだったが、フランス、スウェーデン、デンマークも多かった。しかし、政府が抑制策をとり、1990年以降は2000人前後で推移している。
 インターネットの競売サイトに赤ちゃんが競売にかけられたことがある。1200万人の値がついた。
 養子は、養親が自分をありのまま受けいれるかどうかを確かめるため、わざと嫌がることをする時期がある。これを試しの時期という。通常は半年ほどで落ち着きを取り戻す。そこではじめて親子としての信頼関係が確立する。
 養子たちはルーツ探しを始める。フランスでは200年以上前から、母の名前を開かさないままの出生届を出して出産する権利が認められている。世間体を気にして中絶するのを防ぐためだ。

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