弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年7月27日

最後の錬金術師、カリオストロ伯爵

著者:イアン・マカルマン、出版社:草思社
 本名ジュゼッペ・バルサモ。1743年にシチリア島のパレルモで生まれた。カリオストロ伯爵と名乗り、10年にわたってヨーロッパ中を巡り、魔術の技を見せ、貧しい人々を癒し、エジプト派フリーメイソンの支部をいくつもつくった。フランス大革命の直前の1785年にバスティーユに投獄され、詐欺の疑いは晴れたが、1789年にローマの異端審問官に捕らわれ、1795年に死んだ。
 カザノヴァはカリオストロを激しくねたんでいた。ロシアのエカテリーナ女帝は絞め殺したいと思っていた。ゲーテは憎しみのあまり気も狂いそうなほどだった。フランスのルイ16世は危険な革命家として迫害した。マリー・アントワネットはダイヤの首飾り事件に巻きこんだカリオストロを死ぬまでバスティーユに閉じこめておきたいと望んだ。
 彼が無知なことを言うと、みな彼を賢いと考える。どんな言葉もまともにしゃべれないから説得力があると言う。けっして自分を説明しないから人々が理解する。話し方やふるまいが粗野なので高貴だと信じる。どこから見ても嘘つきに見えるから誠実だと思われる。これはカザノヴァの評です。これって、どこか現代日本にいるインチキ宗教家のことにぴったりですよね。知性が簡単に目をくらませてしまうんです。いえ、あのグル一人のことをさしているんではありません。ワンフレーズ首相も同じではありませんか。
 啓蒙の時代とされている時代に、知性も美も魅力もない人間が、権力のある貴族、位の高い聖職者、ヨーロッパの一流の思想家たちの大部分をだまし、あるいは眼をくらますことがどうしてできたのだろう。
 いかさま師のなかのいかさま師。だましのもっとも驚異的な見本。太って、ずんぐりして、不快な顔。喉にぜい肉がつき、鼻は低く、脂ぎって、貪欲さと、好色さと、雄牛のような頑固さがあり、恥を知らぬあつかましい顔だ。
 カリオストロの時代は理性の時代ではなかったとトマス・カーライルは主張する。カリオストロを特別な人間にしたのは、彼が時代の要求と憧れにすばらしい声を与えたということだ。
 宗教裁判所はフリーメイソン運動を魔術よりも憎むべき犯罪だと考えていた。1738年には、すでにフリーメイソンを死罪によって禁ずるローマ教皇勅書が出されていたし、それ以来、何度かの勅書でそれが確認されていた。
 教皇クレメレス13世とその後継者たちは、フリーメイソンの秘密主義が気に入らず、裕福で権力のあるカトリック教徒のあいだに広まっていることで脅威を感じていた。
 フリーメイソンって、ローマ教皇から公認されるどころか、死罪でもって禁圧されていたんですね・・・。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー