弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年6月27日

セブン・イレブン、覇者の奥義

著者:田中 陽、出版社:日本経済新聞社
 私は極力、コンビニは利用しない主義です。といっても、近くに店がなければ仕方ありません。もはやコンビニを利用しないでは生活できないようになってしまいました。残念です。パパ、ママ、ストアーは衰退の一途をたどり、今や絶滅寸前の品種となってしまいました。嘆かわしいことです。はやく保存措置を講じないといけないと思うのですが。
 消費者の行動は経済学では説明できない。心理学で考えなければいけない。
 鈴木敏文会長の言葉です。なるほど、ですね。セブン・イレブンの1店舗の1日あたり売上高は64万円。ローソンは49万円、ファミリーマートが47万円。
 1日あたりの来客数もセブン・イレブンは1000人をこえ、ローソンとファミリーマートは1000人に届かない。セブン・イレブンの経常利益は1782億円。ローソンはその4分の1の423億円、ファミリーマートは5分の1以下の317億円。セブン・イレブンで自社所有の車は会長車のみ。あとは、トラックなど、すべてリースだ。
 セブン・イレブンの出店戦略は、きわめて明快。同一地域に集中して大量に出店する。これをドミナント(高密度多店舗出店)方式と呼ぶ。同一地域にセブン・イレブンが多数あることで消費者の認知度が上がり、支持も高まる、という考えにもとづく。
 セブン・イレブンの店舗は1万1000店をこえるが、出店地域は34都道府県。ローソン(8000店)ファミリーマート(7000店)が全県に展開しているのと好対照だ。
 ええーっ、セブン・イレブンって、全国どこにでもあるのではないんですね。はじめて知りました。セブン・イレブンの品ぞろえは2500品目。スーパーに比べて、きわめて少ない。
 セブン・イレブンでは、土地・建物をオーナーが用意したときには、オーナーに対する年間所得の最低保証が1900万円、そうでないときには1700万円となっている。売上総利益の43%をチャージ(経営指導料)として支払う仕組みだ。
 私の父は酒類販売店をしていましたが、病気のため権利を売ったところ、買った人は何年かしてセブン・イレブンに業態を変更しました。その人に話を聞いたことがあります。
 それまでは好きなときに魚釣りなどに出かけていたが、セブン・イレブンに変えてからはそれがまったくできなくなった。このように嘆いていました。コンビニのオーナーが、オーナーとは名ばかりで、現代の小作人と呼ばれるのも道理です。
 コンビニの目玉商品がおにぎりです。私自身は意地でも絶対買いませんが、買ってもらったのを食べたことはあります。セブン・イレブンでもっとも販売個数が多いのは「おにぎり」。年間11億個以上。一店で一日あたり3万2000円売れる。コメの共同購入をしていて、年間8000億円にのぼるそうです。コメの炊き方についても、科学的な検証を経て、火加減や水に浸しておく時間、一つの釜で炊くコメの量などを決めておくことで、どこの工場でも同じ味のご飯を炊けるようになった。でも、これって気色悪くありませんか。おコメに化学調味料がまぶしてあるっていう噂もありますが、どうなんでしょう。
 セブン・イレブンは毎週火曜日に全国のOFC(オーナーすなわち加盟店主に店舗運営を指導する相談員)1500人を東京の本部に集め、一日、会議をする。
 午前11時から鈴木敏文会長が30分間、講話をする。単品管理の考え方をOFCに徹底するのだ。単品管理とは、どの商品を、どれだけ発注して、どのように売り場に並べるか、という仮説を立てることが必要だ。仮説を立てるには、天候、気温、店舗周辺の情報を把握する必要がある。
 この毎週の会議に年間30億円の費用をかけている。しかし、逆にいうとそれだけのコストをかけてもいいだけのメリットがあるというわけだ。
 小売業とは教育産業。同じことを繰り返し言い続けて、やっと店舗のレベルが向上する。そのレベルと維持し、さらにレベルアップをするためには、また同じことを言い続ける。ダイレクト・コミュニケーションをやめるつもりはない。鈴木敏文会長は断言する。今は衝動買いの時代だ。だから、待ちの商売ではなく、攻めの姿勢が大切なのだ。
 レジのところに、精算のとき店員が必ず押さなくてはいけないテンキーがある。キーの色は青とピンク。青は男性、ピンクは女性客。数字は12、19、29、49、50となっている。年齢層を意味する。これによって、どんな客が、どんな商品を、いつ、何個購入したか、データとして蓄積される。
 お客の受けとるレシートにも、仕掛けがある。レシートに印刷される広告やお知らせの内容は人によって異なっている。個々の顧客層にふさわしい商品やサービスの情報をレシートに盛りこみ、次の購買を誘おうという作戦だ。
 セブン・イレブンの出入り口の蛍光灯は並行になっている。外から見ると蛍光灯の本数がたくさん見えることで天井が明るく感じられ、入りやすい雰囲気をつくっているのだ。
 日本のセブン・イレブンに陳列している商品の99.99%は本部が推奨する商品で、そのすべてが共同配送センターを経由して店に届けられる。
 あなたは、こんなに管理されているコンビニでこれからも商品を買い続けますか・・・。私は、イヤです。店内にも人間らしさを取り戻したいものです。

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