弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年5月29日

生物時計はなぜリズムを刻むのか

著者:ラッセル・フォスター、出版社:日経BP社
 ヒトは、時計をもたずに暗い洞窟に入り、日光の届かない状態で数日過ごすと、遠い昔の生活パターンに戻る。時間を知る手がかりを失うと、ヒトのリズムは外界から徐々にずれていく。
 地球上の時間が体内の時間に正しく反映されるよう、生物時計は毎日の日の出と日没によってリセットされる。ちょうど、テレビやラジオの電波をつかって原子時計の正確な振動に腕時計をあわせるのと似ている。このたとえは、今や古くなってしまいました。私も、安い電子時計をもっています(もらいものです)。衛星から送られてくる電波によって、自動的に時刻を自分であわせる仕掛けになっています。
 機械式時計が地球上にあらわれたのは1300年ころのこと。花時計の方は1751年にできた。オニタビラコとタンポポの花が、毎日誤差30分以内の周期で開いたり閉じたりすることに目をつけて、オトギリソウ、マリーゴールド、スイレンなどを円形に植えてつくったもの。たとえば、ミモザも暗いところに置いても、その葉は、まるで昼夜が分かっているかのように周期的に開いたり、閉じたりする。
 ゴキブリも、暗いなかにおいても、およそ24時間ごとの2〜3時間に活動を集中させる。自分のなかで昼と夜を区別している。
 ハチの「8の字ダンス」は有名です。今ではハチの一匹一匹に小さなバーコードをつけ、巣箱を出入りしたらレーザースキャナーで個体を識別している。ええっ、そこまでしてるのかー・・・、おどろきました。探索バチが巣に戻る時間が夕方遅くなって、ほかのハチがもう出かけられないとき、どうするか。その日はダンスを踊らず、翌朝ダンスする。そして、距離を示す尻振り回数や太陽に対する方向を覚えていただけでなく、12時間の時間差まで正確に補正してみせた。なんという能力でしょうか・・・。
 ニワムシクイという鳥に、時間ごとにエサの置き場所を変えると、鳥は決まったパターンで飛んでいくようになった。では、この鳥を3時間エサ場に行かせなかったら、どうなるか。3時間後に放たれた鳥は、その時間にエサのある場所にまっすぐ飛んでいった。つまり、ニワムシクイは、3時間という時間をきちんと認識して、それにあわせて自分の飛行スケジュールを調整したのだ。うーむ、すごーい・・・。
 ヒトの体内では、1個1個の原子が1016ヘルツで振動している。
 17年セミがいる。このセミの幼虫で、15年間を地中で過ごした幼虫をとりだし、1年に2回花をつけるように操作した桃の木の根から栄養を取らせるようにした。すると、セミは1年早く地上に出てきた。セミは木の根から栄養を取りながら、木の生理学的な変化を感知し、年数をカウントしていることになる。でも、どうやって、カウントした数を覚えているのか、謎のままだ。
 砂漠のラクダはどうやって高温に耐えているか。ラクダの体温は昼は41度にもなるが、まだ死ぬほどではない。夜は、水分を失ったラクダの体温は34.2度まで下がる。これはヒトにとっては危険状態。しかし、ラクダにとって体を冷やしておけば、翌日、体温が高くなるまで長い時間かかるという利点がある。つまり、ラクダは、体を保護するため夜間の低体温症を利用しているということ。そうなんですか、すごい生物の仕掛けですよね。
 ヒトは基本的に昼行性動物である。ヒトは、本来、夜には活動しない。体のあらゆるリズムは24時間の昼行性リズムで動いており、短期間で夜行性のパターンに順応することはできない。午前3時に単独事故を起こす確率は、夜勤を4日続けると、50%上昇する。午前7時から8時には、さらに高くなる。
 チャレンジャー号の爆発事故の直前、NASAの主要スタッフの睡眠時間は2〜3時間であり、しかも、24時間、連続勤務していた。
 フィンランドの客室乗務員の乳ガンの有病率が高いという統計もある。
 ヒトと生き物の時間に対するかかわりを考えさせる本でした。
 百合の花が咲きはじめました。朱色の百合、そして白にピンクのふちどりのついた百合です。大輪のカサブランカを植えたこともあるのですが、見あたらなくなってしまいました。ヒマワリがぐんぐん伸びています。家の近くの小川にホタルが乱舞しています。いつ見ても心がなごみます。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー