弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年3月29日

ファルージャ、栄光なき死闘

著者:ビング・ウェスト、出版社:早川書房
 ほとんど全編が戦争映画を見ているかのような描写です。映画と違うのは、ホンモノの殺しあいなのです。屈強で陽気な海兵隊アメリカの若者が次々に敵に殺されていきます。その敵とはいったい誰なのか・・・。
 この本はアメリカ軍の従軍記者が海兵隊に同行、密着取材して書いたものですから、その敵とは、当然、イラク人になります。では、どんなイラク人が敵なのか。もちろん、アメリカ軍と一緒に闘っている新生イラク軍の兵士ではありません。敵であるイラク武装勢力というのは、いったい誰なのか・・・。
 注意深くこの本を読んでいくと、それは要するにアメリカ軍の占領を許せないと怒っているフツーのイラク市民であり、若者であることが次第に分かってきます。
 これまでイラクにおいて、アメリカ兵は2300人以上が戦死しました。これに対して、イラクの人々は10万人も戦死したという推測があります。
 ファルージャでの戦闘の発端は、アメリカの軍事請負会社のアメリカ人社員4人が襲われ、黒こげになって橋に吊された事件にある。これはブルックリン橋の惨劇と呼ばれる。
 アメリカ軍が市街戦に臨むのは、26年前のベトナム戦争におけるフエ市での戦闘以来のこと。平たんな土地が続くイラクでは、ハイウェーが問題だった。アメリカ兵の戦死者の68%がIED(即製爆発物)によるものだった。道路をすすむアメリカ兵は誰もがIEDを恐れている。IEDは簡単につくれる。榴散弾をつくるために金属片をひとまとめにしたものに、ガレージのシャッターの開閉リモコンや携帯電話で遠隔操作する発火装置をつければよいのだ。スイッチを押す人間は、一ブロックほど離れた屋根の上にいればいい。
 武装勢力には、司令官や副司令官といったきちんとした階級制度はない。むしろモスクを中心に近所の連中が地元のリーダーの下に集まったギャングの集団のようなものだ。道路や横丁を知りつくりている彼らは、家並みを利用した防衛ラインを構築するより、走りまわって戦う方が得意だ。
 アメリカ軍の50口径機関銃やマーク19の殺傷力は恐るべきものがある。厚さ2フィートの壁は貫通できないが、砲弾がコンクリートの壁にあたったときの衝撃は大変なもので、巻きおこる砂塵と飛び散るコンクリートの破片は、かつてこういう攻撃を見たことのない武装勢力を驚かすに十分で、彼らはクモの子を散らすように逃げ出す。
 戦闘は山火事のようなものだ。消し止めたかと思うと、火は通りをこえて飛び火し、次のブロックに燃え移る。戦闘がピークに達したときには、あちこちに散らばったライフルを持った海兵隊員300人が、10ヶ所で数百人の武装勢力を相手にしていた。
 アメリカの海兵隊は、司令官も兵士も同じリスクの下に動いている。マティス少将は3回撃たれた。配下の2人の連隊長はIEDで負傷していた。
 イラク人たちは、銃撃戦が終わると、何事もなかったかのように表に出てきて、それぞれのやりかけの仕事に戻っていく。T字路で8人のアメリカ海兵隊員が死んだが、待ち伏せをしていた連中はどこかへ消えてしまった。
 武装勢力の大半はカフィエやTシャツや長袖のシャツを着て、ズボンをはき、ゴム草履や運動靴を履いていた。黒の忍者服を着た者もなかにはいたし、数は少ないが警察の青い制服を着た者もいた。
 アメリカ軍のマティス少将には、ファルージャを占領することで武装勢力を鎮圧できるとは思えなかった。イラク軍が自分たちで戦わない限り、武装勢力は善良な市民を装い、時機を待つだけだ。
 イラク軍は、たとえば400人のイラク人と17人のアメリカ特別軍事顧問からなり、海兵隊と一緒に前線にいて、なかなか善戦する。しかし、イラク軍では、脱走兵や行方不明者が増えている。数ヶ月間かけて大事に育てあげたイラク兵が持ち場を放ったらかして逃走するのは珍しくない。大隊長が倒れたり、警察署長が形勢不利とみて逃亡したりすると、イラク人の部下はみなそれに続く。逃亡したら、命だけは助かるからだ。
 武装勢力側には指揮命令系統といったものは存在しないし、装備も最低限のものしかない。しかし、彼らはアメリカ軍相手によく戦うし、イラク人警備隊を圧倒する。
 イラク兵たちが戦場のまっただなかで制服を脱ぎ、普段着に着替えている現場を見た。全部で50人ほど。兵士たちは、ファルージャの兄弟たちと戦うことを拒否し、同時に兄弟たちが彼らの武器を盗むことにも反対なのだと言った。これはアメリカ人の戦いであり、自分たちには関係のないことだ。自分たちはただ家に帰りたいだけなのだ、と。
 出動した海兵隊員55人のうち21人が負傷した。うち7人は入院が必要だった。
 海兵隊員に犠牲者が増える一方で、ファルージャのテロリストたちは、イタリア人の首をはねたり、日本人5人、トルコ人3人、アメリカ人1人を誘拐したりしていた。
 ファルージャのティーンエイジャーたちは、みなゲーム感覚でアメリカ兵に立ち向かうよう教えこまれている。興奮した導師の説教を村のモスクで開き、彼らのアドレナリンが騒ぎ出すのだ。
 海兵隊のなかの狙撃兵は、毎日10人から20人の武装勢力を射殺していった。標的は魚と同じ獲物なのだ。人間とは思わないことにしている。狙撃兵は3倍率のスコープ付きM16を支給される。夜は、サーマル・スコープ付きの7.62機関銃がスナイパー・ライフルにとって変わる。
 海兵隊員みんなが同じように残忍な戦いができるわけではない。銃をうつのをためらう隊員は、銃弾を拾い集めて隊員に再分配する係りにあてられる。
 1ヶ月のファルージャでの戦いで、150回の空爆が行われ、75軒の一般民家と2つのモスクが破壊され、100トンの爆弾が落とされた。市民の犠牲者は300人から600人と推定された。
 武装勢力を形成しているのは、さまざまなグループで、そのなかには権力奪回をねらうバース党員、イスラム過激派、犯罪者、元軍人、情報部員、過激派スンニ派導師、異教徒の侵略者に対報復や戦いを挑む若者などだ。
 アメリカ軍はパイオニアUAVを使って建物の上空を旋回しながら攻撃の対象を確認する。発着をラジコンでコントロールでき、昼夜を分かたず地上の目標物を撮影できるカメラを搭載している。軍隊の末端組織までこれを活用している。
 こいつ死んだまねしてやがる。ふりをしているんだ。
 そう叫んで、海兵隊員が男の頭に2発うちこんだ。
 ようし、これで本当に死んだな。
 このシーンをテレビ映像がとらえて問題になりました。
 武装勢力の実力は、開戦前とまったく同じだ。
 イラクでは3年たっても戦争状態が続いています。日本の自衛隊は市街戦に巻きこまれる前に一刻も早くイラクから撤退すべきです。アメリカ軍はイラクへ根拠なく侵攻していった占領軍にほかなりません。そんなアメリカ軍のうしろにくっついていて、日本にいいことなんかひとつもありません。

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