弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年1月30日

アジア南回廊を行く

著者:宇佐波雄策、出版社:弦書房
 福岡県うまれの団塊世代の朝日新聞記者による本です。バンコク特派員、ニューデリー支局長、アジア総局長などを歴任したあと、九州国際大学でアジア概論の講義もしています。
 インドでは大理石はありふれているので、ちっとも珍しくない。木材の床の方がよほど高級である。富豪ほど、木造の住宅インテリアを好む。うーん、そうなんですかー・・・。
 ヒンドゥー教徒は、お墓を一切もたない。遺灰はガンジス川や海に流して、自然に環ることを最高の幸せとする。インド人にとって、死体は魂の抜けた遺体であり、単なるボディーにすぎない。
 ヒンドゥー教にとって、牛は313の神々宿る生き物としてあがめられる。牛殺しは母親殺しよりも重罪なのだ。ところが、水牛は死の神ヤマが乗る乗り物とされ、牛より劣る存在だ。だから、牛肉は食べないが、水牛の肉は食べている。
 インドのラジブ・ガンジー首相はスリランカのタミル人女性の自爆テロによって、1991年に首都ニューデリーで暗殺された。インド軍をスリランカに派遣したことへのうらみからである。スリランカでは歴代の大統領がタミル人反政府ゲリラに暗殺されている。1993年にプレマダサ大統領を暗殺したタミル人テロリストは2年間も忍耐強く時間をかけて大統領の日常行動、警備状況を徹底的に調べ、大統領のそばに徐々に近づいていって、ついに爆殺した。
 むむむ、これはすごいことです。これでは報復の連鎖が止まるわけはありませんよね。
 アジア全体のエイズ感染者は820万人。そのうち510万人がインド。インドでは南アフリカに次いでエイズ感染者が多い国。エイズ感染の危険度がもっとも高い売春婦はインドに230万人いる。そのほとんどが人身売買で売られてきた女性だ。売春女性の多くは文盲。コンドームの普及に取り組むNGOがある。コンドームの品質改良は韓国の医療メーカーが協力している。
 1997年にインド大統領になったナラヤナン氏は被差別カースト出身だった。インドの先住民であるドラビダ族の末裔である。独立インドの憲法を起草したアンベドカル博士も被差別カースト出身であり、カースト差別のない仏教に改宗していた。
 インドで1954年に発見されたという狼少年は、まったくの誤解だとされています。身体障害者の捨て子だったというのです。生後まもなく小児マヒになって、半身がマヒした男の子だった。
 インドでは、今でも狼に襲われて44人が死亡し、32人が負傷した。しかし、これは人間の人口が急増して狼の領域に侵入したり、ウサギやキツネのすみ家であった森林にすむウサギやキツネなどの小動物が減ったからだ。
 インドにはアンバサダーという国産車が走っている。何十年者あいだ同じスタイルで生産されている。この車は、インドの悪路で圧倒的な強さがある。部品に鉄製部品が多用されており、デザイン変更が長くないため、ちょっとした故障は簡単に直して走れる。
 日本の自動車メーカーであるスズキは軽乗用車をインドで生産しています。占有率7割といいますから、たいしたものです。

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