弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年1月25日

歓びを歌にのせて

著者:ケイ・ポラック、出版社:竹書房文庫
 スウェーデン映画史上第3位という大ヒット映画をそのまま本にしたものです。スウェーデンでは2ヶ月間に160万人が見たそうです。国民の6人に1人は見たという計算ですから、すごいものです。
 辛いことも多い世の中ですが、しばし、それを忘れ、心あたたまる思いがしました。
 映画のなかでうわたれる歌のセリフが実に心をうちます。少しだけ耳を貸して下さい。
 私の人生は、今こそ私のもの
 この世に生きるのは束の間だけど、
 希望に向かって ここまで歩んできた
 私に残されたこれからの日々で
 自分の思うままに生きていこう
 生きている歓びを心から感じたい
 私は、それに価すると誇れる人間だから
 そう、私の人生は私のもの
 探し求めていた まぼろしの王国
 それは近くにある どこか近くに
 私はこう感じたい 私は自分の人生を生きた、と。
 ガブリエルが初めてのコンサートでソロを歌いあげたとき、観客席は一瞬、静寂に包まれました。そして、そのあとすさまじい拍手が巻きおこったのです。心にしみわたる天使のような歌声でした。うーん、これがクライマックス。きっと暴力夫も反省したことだろう。そう思ったところ、実は違うのです。やはり、世の中はそう甘いものではありません。
 そして、主人公のダニエルもハッピーエンドのようではありますが、みんなでウィーンに乗りこんだ合唱コンクールに指揮者として壇上に立つことはできませんでした。その直前に心臓発作を起こしたからです。それでも、彼は、子どものころからの夢を実現したのです。歌で、みんなの心を開くこと、自分の心を思いっきり開放することに、ついに成功したのです。
 親富幸通りの映画館はほとんど満員でした。見終わったとき、心満ちた幸せな気分で帰路につくことができました。人生万歳、です。生きていて良かった。そう思うことのできる映画です。
 正月以来、いい映画に何本も出会うことができました。博多駅そばの映画館でみたタイ映画「風の前奏曲」も、とても心うたれるいい映画でした。見ていて力が入り、ついつい手を握りしめてしまいました。ラナートというタイの伝統楽器(木琴のようなものです)の競演は手に汗にぎる熱演で、見事なものです。
 ところが、とても残念なことに、観客はまばらでした。こんないい映画が世の中に知られずに終わるなんて・・・。なんだか、悲しくなってきました。まだやっているようですので、ぜひ映画館で見てください。
 「ハリーポッター」も「あらしの夜に」も見ました。なんだ、おまえはまだ子ども向け映画なんか見てるのか。そう思わないでくださいね。子ども向け映画には本当にいい映画がありますし、だいいち私たちが子どものときの心を忘れてしまって、いいことはひとつもありませんよね。

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