弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月 9日

動物地理の自然史

著者:増田隆一、出版社:北海道大学図書刊行会
 わが家の庭の片隅に今年もヘビの抜け殻を発見しました。庭にはヘビ一家が住みついています。最近あまり姿を見かけないのが幸いです。一度は、ヒマワリの枝にぶら下がって昼寝しているのを見たことがあります。引っ越してきた早々にヘビを見たときには怖さのあまり棒で叩き殺しましたが、あとで無用の殺生はすべきでないと深く反省しました。以来、ヘビとは平和共存でやっています。それでも狭い庭ですから、いつ遭遇しないとも限りませんので、藪のなかに素手をつっこむようなことはしないよう用心はしています。
 ヘビがいるのは、モグラがいるからです。庭のなかに縦横無尽にトンネルをつくって走りまわっています。ところどころに噴火山のような特徴のある盛り土がありますので、すぐに分かります。モグラがいるのは、庭にたくさんのミミズがいるからです。家庭の生ゴミを堆肥とし、コンポストに入れた枯れ葉などと混ぜあわせて庭のあちこちを掘って埋めています。園芸用品店から庭の土も買ってきて、混ぜあわせて、土をつくるのです。私の日曜日の午後からの楽しみです。9月に入ってからチューリップの球根を植えはじめました。これは12月まで続けます。アマリリスなどの球根類も掘りあげて移しかえたりして、庭をきちんと整備します。春の来るのが待ち遠しくなります。
 この本によると、日本のモグラは、西日本のコウベモグラと東日本のアズマモグラに分かれています。その接点は静岡・長野・石川を結ぶ線あたりにあります。コウベモグラの方が新興勢力のようです。中期更新世に朝鮮半島を通じて大陸から西日本に侵入してきました。そして、どんどん勢力を拡大しながら日本列島を北上中だというのです。ところが、地下60センチほどの深さのところまで軟土層があるところではコウベモグラはアズマモグラを駆逐できるけれど、軟土層が30センチ以内と浅い地域ではアズマモグラの方がコウベモグラを撃退しています。
 ちなみに、コウベモグラの方がアズマモグラよりも体格は大きいそうですが、私はまだ一度も庭のモグラを見たことがありません。せっかく植えたチューリップの球根がモグラのために地表面に放り出されてしまうのだけには困っています・・・。
 この本には、ヒグマとツキノワグマのことも紹介されています。ヒグマは今は津軽海峡より北にしかいませんが、以前は東北地方にもいたようです。北海道では、毎年200〜 300頭のヒグマが捕殺されているそうですが、その10倍はいるものと推定されています。テディベアやくまのプーさんは、ヒグマがモデルです。ツキノワグマではありません。今年は、山の木の実が豊作のため、ツキノワグマが里におりて来て殺されるのは激減したそうです。かえって、ヒグマが里まで出てきているとのことです。札幌市内にまで出ているというのですから、怖いですね。
 DNA分析をすることによって、動物の祖先がどのように分化していったかが推定できるようになっています。100万年で10.6%の違いが生じるとのことです。
 動物地理学は面白い。著者たちは声を大にして叫んでいます。
 なるほど、分子情報から分岐年代が推定できるようになってから、さらに動物たちのルーツをたどりやすくなったことでしょう。それにしても、地表にはめったに顔を出さないモグラにも2大派閥があって、互いに勢力をきそって抗争中だというのには驚きました。
 なんだかワクワクしますよね、こんな話って・・・。

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