弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月18日

戦争民営化

著者:松本利秋、出版社:祥伝社新書
 2005年5月、1人の日本人兵士が戦死した。そのことで、にわかにクローズアップされた戦争代行業、民間軍事会社。世界に300社あり、総年商は10兆円を超す。売春とともに人類最古の職業である傭兵産業の実態に迫る。
 このようにオビに書かれています。
 戦争によって利益を得る連中が確かに存在するのです。この本は住友商事、NEC、三菱重工がイラクの戦後復興事業に参入して利益を得ようとしていることを明らかにしています。このところ、日本のマスコミの怠慢から、この種の報道がありませんでした。
 2003年11月2日、住友商事とNECはイラク国内での携帯電話事業につかう通信設備の一部を65万ドル(7,150万円)で受注した。次いで、2004年3月27日、イラク南部のバスラにあるハルサ発電所の修復プロジェクトを三菱重工が600万ドル(6億3000万円)で受注した。これには日本政府の援助金が充てられる。
 うーん、そうなんです。日本のODAのかなりの部分がこのパターンです。日本政府の援助金(もちろん私たちの支払った税金です)が、現地に進出した日本の企業に支払われ、日本国内に環流してくるのです。このとき、日本の政治家に莫大なリベートが支払われます。それは「決まったこと」なのです。知らぬが仏は、私たち日本国民だけです。
 軍事請負会社の最大手であるアメリカのMPRI社は、ペンタゴンと深く密接な関係をもち、アメリカ軍の訓練まで担当している。年間売上は1兆円にのぼる。
 イラクに駐留するアメリカ軍は13万人だが、それをサポートする民間軍事会社の社員は2万人もいる。アメリカ政府がイラク復興事業のために用意していた180億ドル(2兆1600億円)の25%、5400億円が開戦以来、今日までに民間軍事会社に支払われた。
 アメリカ軍の兵士がもらうのは年平均で4万〜5万ドル(450万〜560万円)。ところが、民間の傭兵になると、年収は1800万円から5600万円にもなる。そのほとんどが30代後半から40歳代の男盛りのベテラン戦闘員。
 すでにイラクでは何万人もの市民がアメリカ軍に殺されたと報道されています。その裏に、こうやって戦争を金もうけのタネにしている元将兵たちがいるのです。もちろん、彼らの上にはさらに自らは手を汚さず、ぬれ手にアワで金もうけしているチェイニーなどのアメリカ政府トップたちがぬくぬくとしています。本当に許せないことです。
 現在のイラクでは、バグダットの中心街から空港までの往復1時間ほどの警護を頼んだら、それだけで2000〜3000ドルを警備会社に支払わなくてはなりません。まさにイラクはどこでも戦場なのです。
 この本は、傭兵の歴史が古いこと、史上有名な撤退戦のなかでも、古代ギリシアのペルシアからの大撤退(紀元前401年)ほど困難なものはなかったとしています。へーん、そんな大撤退があったのか、ちっとも知りませんでした。
 ギリシアの傭兵軍がペルシアと戦いを優勢にすすめていたところ、総大将のキュロスが戦死してしまったので、大逆転して、それから6000キロもの大逃走をしたというのです。もっと詳しく知りたいものだと思いました。

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