弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月14日

アリラン坂のシネマ通り

著者:川村 湊、出版社:集英社
 私は「冬のソナタ」も「四月の雪」もみていませんが、韓国映画には心魅かれるものが多く、かなりみています。カルチャーショックと言っていいほどの衝撃を受けたのは「風の丘を越えて──西便制」でした。パンソリのすごさにはただただ圧倒され、声も出ませんでした。日本の歌謡曲の源流はパンソリにあるとも言われていますが、この映画に登場するパンソリの迫力にはとてもかなわないのではないでしょうか。
 1970年代の韓国の民主化運動のなかで韓国の伝統的な民衆文化が見直され、大学に民俗芸能研究のサークルができ、学生デモの戦闘に農楽隊が立ったそうです。この映画をまだ見ていない人は、ぜひDVDで見てください。強くおすすめします。
 ただし、パンソリをうたう芸人は、韓国では社会の最下層に位置する、いわば被差別民だということです。いまでもそうなのでしょうか・・・。どなたか教えてください。
 「シュリ」「JSA」「シルミド」「ブラザーフッド」。いずれもすごい映画でした。
 著者は、現在の韓国映画の隆盛には、明らかに、その背後に1人の多大な貢献(後見)をなしえている人物がいると強調しています。それは、ご存知の金正日氏です。
 「シュリ」は245万人、「JSA」は250万人、「友へ、チング」268万人、「シルミド」と「ブラザーフッド」は1000万人。すごい観客動員数です。
 それまで、北朝鮮の人間はカッコよく描いてはいけないという暗黙の禁忌があった。ところが、「シュリ」は、北朝鮮の人間をカッコよく描き、「JSA」は人間的に描いた。
 「ブラザーフッド」には、アメリカ軍はほとんど登場してこない。いわば、朝鮮戦争を主体思想によって描いた映画だ。このように、38度線があるからこそ、韓国映画の世界は、ヒューマニズムにあふれる優れた作品、感動的な力作や大作をつくることが可能となった・・・。
 うーん、なるほど、そういう見方もできるのかー・・。たしかに、社会の緊張感が日本とはまるで違うということを実感させられる映画ですよね。
 この本には登場していませんが、最近の映画で、「おばあちゃんの家」もいい映画でしたね。「春香伝」もよかったですよ。少し前の「南部軍」という映画を見たいのですが、DVDになっているのでしょうか。どなたか教えてください。
 ソウルにアリラン坂のシネマ通りというのがあるそうです。一度はソウルに行ってみたいと思っています。

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