弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月 7日

ローマのガリレオ

著者:W・シーア、出版社:大月書店
 ガリレオは、立ち上がるとき、それでも地球は動いている(エプール・シ・ムオーヴェ)と小声でつぶやいたと一般に言われている。心の中ではそう確信していたかもしれないが、判事たちの前ではそれを出さないだけの思慮深さはもっていた。
 ガリレオを呼び出して裁いた検邪聖省の法廷は、ガリレオに対して七つの贖罪の詩篇を向こう3年間、週1回20分間唱えるという判決を下した。判決文が読みあげられたあと、ガリレオは膝まずいたまま暗唱し、正式な異端教棄の宣誓書に署名した。宣誓書は次のようなもの。
 私は異端の疑いが濃いという判決を受けました。それは、私が太陽は世界の中心にあって不動のものであり、地球は世界の中心にはなく動いているという説を信奉していたことによるものです。私は異端を放棄します。これから先、二度と口頭でも著述の形でも、ふたたび私に疑いがかけられるようなことを口にしたり断言したりいたしません。
 ガリレオは1632年に監獄に収監するという判決をうけたものの、実際には、トスカーナ大公のメディチ荘に移され、その後はシエーナ大司教の招待を受けて2、3ヶ月を過ごした。大司教はガリレオを善良なカトリック信者の賓客として扱い、夕食に招いた。それから、フィレンツェに戻った。フィレンツェではガリレオの著書である「対話」の値段が急騰した。もともと半スクードだったのが、6スクードにまではね上がった。
 ガリレオは、聖書が誤るはずはないが、その解釈には誤りが生じうるという立場だった。
 異端審問所の法廷では、被告は召喚されたら、自分の弁護はできず、ただ誤りを認めて撤回するしかなかった。自らの罪を認めて告白する方が賢いというよりは、無理やりそうするようにし向けられた。ただ、有罪が確定していたとしても、その量刑は尋問のあと初めて決定される。ガリレオの人間像に迫った本です。

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