弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年6月28日

持続可能な都市

著者:福川裕一、出版社:岩波書店
 東京に行くたびに超高層ビルが増えているなと思います。芝あたり、新橋あたり、続々と建ち並んでいます。モノレールの沿線もすごいものです。いえ、国会議事堂のすぐ近くにもすごいビルが建っていて驚きました。国政の中心たる国会議事堂を毎日、足元に見おろしながら仕事をしている人たちがいるのです。どんな気持ちなんでしょうか・・・。ただし、さすがに皇居を見おろす超高層ビルは少ないようです。
 この本では和歌山城の天守閣(67メートル)を見おろす20階建ビル(80メートル)がまず槍玉にあがっていますが、古都京都の駅ビルとタワーも問題だと私は思います。景観との調和が考えられたものとは、とても思えません。駅ビルのホテルに泊まりましたが、細長くて迷路のような通路でした。いかにもゴチャゴチャした超近代的ビルです。古都らしさを残すという発想がまったくないのに改めて呆れてしまいました。
 和歌山では、デベロッパーが中高層ビルでは経済的な採算がとれないと主張し、自治体が同調したということです。そんな超高層ビルに入りたがるのは、いったい誰なのか。
 仕上がりのよい超高層タワービルに入居したがっているのは、ひとフロアーだけ借りられたらよい小企業や3〜4フロアーを借りたい法律事務所である。彼らは大きなフロアーを要求しているのではなく、超高層ビルの提供する建物のイメージによって自社のイメージアップを狙っている。
 うーん、なるほど、もうかっている法律事務所は超高層ビルに入居したがるのですね。9.11で狙われたWTCにも法律事務所がたくさん入っていました。そうなんです。超高層ビルは、偉ぶったり、優位性の誇示だったり、単なる虚栄心をみたす存在なのです。
 東京の都区部だけで、20階以上の超高層のマンションやビルが5年間で200棟ほど建つといいます。大変なラッシュです。私はこの本を読んで驚きました。規制緩和のかけ声のなかで、超高層ビルを建てるについて環境影響評価(アセスメント)手続が必要ないとされたというのです。
 イギリスでは、反対に、公共住宅について超高層ビルを建てるのをやめてしまったそうです。子どもの健全な心身の成長に悪い影響があるからです。そのことは既に実証ずみのところなのです。同じ面積の土地に75戸を建てるより、低層型かそれとも中層型とオフィス・商店を混在させた町づくりの方がよほど住みやすいものになるという研究成果があります。私もそうだろうと思います。人が居住するには、せいぜい5階建てくらいがいいということです。車が入ってこれない、歩いて動きまわれるのが真のコミュニティです。その意味では、ショッピングセンターは、コミュニティではありません。営利目的の企業が人々の購買意欲をかきたてる。人工的に人々を自然のサイクルから引き離し、時間を忘れさせ、天候の変化にも気づかせない。人並みにお金を使うことのできない人は排除される。ショッピングモールが与えるのは自分の住む土地そして隣人への愛着ではなく、煩わしさのない匿名性でしかない。
 なるほど、と思いました。わが町にもデパートがなくなり、銀座通り商店街はシャッター通りとなって閑古鳥が鳴いています。ただひとつのショッピングモールのみ人が集まっていますが、町全体はさびれていく一方です。

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