弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年5月11日

安曇野の白い庭

著者:丸山健二、出版社:新潮文庫
 「荒野の庭」という写真集(求龍堂)を見て、すごい庭だと感嘆しましたが、この本は、その庭がつくられる過程がリアルに再現されています。私の自慢の庭も50坪ほどの広さがありますが、安曇野の山のふもとに350坪もあるというのです。すごいものです。
 芽吹きの季節、よく晴れた日の、風のない、宵口に、自分で造った庭に佇むときの気分といったらない。これこそが至福ではないかと思えた。著者の言葉に私も共感します。
 今まさに芽吹きの季節です。五月のゴールデンウィークはどこにも出かけず、庭づくりに精を出しました。よく晴れた日の、風のない宵口にたたずんで遠くの山を眺め、夕暮れにかかっていく空を見上げます。庭にいると、鳥たちが何してるのと、すぐそばまで寄ってきます。鳩が豆鉄砲を喰らったときの目という表現がありますが、キジバトの目は、いつもそんな感じです。秋から冬にかけて毎年やってくるジョウビタキは、わずか1メートルほどの距離まで近づいて来て、尻尾をチョンチョンと上下させて挨拶してくれます。四季折々のたくさんの花、そして鳥たちと一緒にいると、まさに至福のときです。
 いろんな木を植えた話が出てきます。長野県の山のふもとですから、九州とはかなり様子が違います。私も、たくさんの木を植えては、素人の悲しさで枯らしてしまいました。ピンクのハナミズキは2年ほど見事に咲いてくれたのに、いつのまにか枯れさせてしまいました。柿やイチジク、サンショウなどは大きくなる前に姿を消してしまいました。キウイのオスは今、3代目です。人間と同じで、オスの木は弱いのです。2代続けて枯れてしまいました。メスの木はとても強くて勢いが良すぎたので、大胆にカットしてやりました。早くオスの木が大きくなって、キウイの実がなることを願っています。
 いま、花はクレマチスとナデシコが咲いています。クレマチスは、古くはテッセンとも呼ばれていたそうです。花の色もいろいろあります。赤紫色から濃い青紫色まで。純白のクレマチスの平たい花びらが雨にうたれている風情には、なにかしら源氏物語絵巻をしのばせる気品を感じます。
 あっ、そうそう。ジャーマンアイリスも咲いています。いつのまにか青紫色一色になってしまったので、少し色の種類を増やしました。チョコレート色など、色も形もいかにも華麗で派手な花です。純白のジャーマンアイリスも咲きました。見事なホワイトです。ところが、このジャーマンアイリスは人の手がかかるのを嫌うのです。放っておけばいい。いえ、それどころか、いじめにあうと、ますます美しく咲くのです。ですから、ときどき植えかえるのが美しく花を咲かせるコツなのです。それも、コチコチの地面のところを浅く掘って、そこに放置する感じで植えつけ、あとは水やりなど世話は一切しないのです。この本で庭づくりの奥の深さを改めて感じました。

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