弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月29日

古代オリエント史と私

著者:三笠宮崇仁、出版社:学生社
 著者は昭和天皇の弟です。第二次大戦後は大学に入り、古代オリエント史を研究する学者になり、NHKに出演して連続番組でオリエント史を解説したこともあります。
 戦中(1943年)に、中国・南京の総司令部に行き、そこで日本軍の残虐行為を知らされました。陸士時代の同期生の青年将校が、兵隊の胆力を養成するには生きた捕虜を銃剣で突きさせるに限る、そう語ったそうです。また、例の七三一部隊に所属していた高級軍医は、国際連盟から派遣されたリットン卿の一行にコレラ菌を付けた果物を出したが成功しなかったとも語ったというのです。これらの言葉は、まさに氷山の一角に過ぎないというコメントがついて紹介されています。皇族の高級参謀にも隠せないほど、日本軍の残虐行為はひどい、目に余るものがあった、ということです。暴虐の日本軍と化した事実を著者は率直に認めています。
 皇族をかつぐのは絶対にやめてほしいと著者は訴えています。皇族の肩書を利用したり、儀礼的なロボットにしてしまったから、第二次大戦が起きた。このような自分の考えを述べています。
 日本国憲法の制定直後(1949年)、平和主義について、将来、国際関係の仲間入りをするためには、日本は真に平和を愛し、絶対に侵略しないという表裏一致した誠心のこもった言動をして、もっと世界の信頼を回復しなければならない。そう強調しています。この点は、今の本当にあてはまると、まさにそうだなあと、つくづく共感します。
 イラクへの自衛隊派兵はアメリカの侵略にあとから手を貸すのとまったく同じです。
 ところで、この本を読んで、いい言葉に出会いました。
 「暇があったら勉強しよう」と言うな、たぶん、あなたがたには暇は決してこないだろうから。これはユダヤのヒッレルという律法学者の言葉です。そうなんです。時間はつくり出すものなんです。まったく同感です。

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