弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月25日

時代劇のウソ・ホント

著者:笹間良彦、出版社:遊子館
 山田洋次監督の最新時代劇映画「隠し剣、鬼の爪」に東北の海坂藩が、幕末期のことですが、洋式訓練をするとき、武士に左右の手を大きく振って歩調をそろえて歩かせるのに苦労しているシーンが出てきて、笑ってしまいました。
 この本には、江戸時代の武士や庶民は決して今のように左右の手を大きく振っては歩かなかったことが明らかにされています。左右の手を交互に大きく振って歩くようになったのは、明治以降の洋式軍隊や文明開化で普及した西洋風の歩き方、それに小学校の体育教育の歩き方が一般に普及してからのことなのです。それまでは、武士はいざというとき、すぐに刀を抜けるよう手はあまり動かさず、また歩き方も静かに交互に移す感じでした。映画では、武士はすり足で歩いていました。なるほど、ですね。
 この本には、意外な常識のまちがいがいくつも絵入りで指摘されていて、そうだったのかと思うところがたくさんあります。三つ指をついて挨拶するのも、武士の護身の心得だったとか、「えい、えい、おう」のかけ声も、「えい、えい」と呼びかけて「おう」とこたえるのが正しいやり方だとか、浪人と浪士は違うもの、いえぬし(家主)とやぬし(家主)は、同じ漢字を書いても違うとか、札付き(ふだつき)は勘当の予備軍だったとか、おおいに勉強になりました。

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