弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月 7日

『噂の真相』25年戦記

著者:岡留安則、出版社:集英社新書
 「噂の真相」が総合月刊誌で「文芸春秋」に次ぐ発行部数だというのは知りませんでした。マイナーなブラック・ジャーナリズムとばかり思っていました。私の友人(東京の弁護士)が、「オレも例の一行情報にのっちゃったよ・・・」とこぼすのを聞いたことがあります。そのとき、彼も、そんなに有名人になったのか・・・、と正直なところ、ちょっぴりジェラシーも感じてしまいました。
 「噂の真相」は何度も世間を動かしたことで有名です。法曹界でいうと、検事総長コースに乗っていた則定衛・東京高検検事長は、その椅子からこけてしまいました。銀座のクラブで働いていたA子さんから告発され、「噂の真相」の記事になるという予告記事が朝日新聞の一面トップを飾って大騒動になりました。やはり中味がひどいのです。パチンコ業界の接待で銀座の高級クラブを飲み歩くだけでなく、A子さんの中絶費用までパチンコ業者に払わせた。公務で関西出張していたときもA子さんを同伴し、その旅費まで公費で負担させていたというのです。呆れてモノが言えません。
 東京地検の特捜部長だった宗像紀夫教授(最後は名古屋高検検事長)との角逐もありました。気に入った女性記者に情報をリークしていた、というのです。女性記者と宗像とのツーショット写真がとられました。
 国松孝次・元警視庁長官が狙撃された事件の犯人は依然として検挙されていませんが、国松長官が、あの高級マンションを抵抗権もつけずに現金で買った事実も追及しています。これは、例の警察裏金事件に関連するものなんでしょう。しかし、さすがはキャリア警察官の総元締めにのぼりつめた人物だけあって、シッポをつかませず、逃げ切りました。残念です。森喜朗総理大臣(当時)が、早稲田大学の学生時代に売春等取締条例違反で検挙されたことを記事にしたとき、裁判所が助け舟を出して和解で終わらせてしまいました。これも、前歴カードまで入手していたというから、たいしたものです。
 田原総一郎は小泉の個人的な相談役も買って出ている。今の田原は小泉政権の露払い役にしか見えない。リーダーとしての資質を欠く倫理なき政治家たちの人間性を正面切って批判しない田原総一郎は、もはやジャーナリストとは言えない。このように厳しく批判しています。まったく同感です。
 著者は私の1歳年長ですが、法政大学で新左翼の活動家でした。運動に挫折してマスコミ界に入ったわけですが、日本の深くて黒い闇の世界を暴くうえで、それなりに大きな役割を果たしてきたんだ、そう思いました。「噂の真相」が休刊となって、今の組織ジャーナリズムの不甲斐なさに歯がみしている私はそう思いました。

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