弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年1月18日

脳の中身が見えてきた

著者:甘利俊一、出版社:岩波ライブラリー

 統合失調症は実は非常に頻度が高い。世界的には100人に1人が統合失調症の病的症状をしている。
 最近どうも物忘れがひどい。同じ年頃の人間が寄り集まると、誰となくそう言い出します。もちろん、私もそのひとりです。ところが、この本では次のように言われています。
 実は、新しいことを記憶する能力が落ちてくるのではなく、既にもっている記憶を思い出す能力がだんだん落ちてくるのだ。それは、ヒントがたくさんあれば思い出すことができるのだが、ヒントが限られている状態では、なかなか思い出せないのだ。
 記憶を思い出すときには、実際に起こった経験や現象に関係した、非常に限られた情報を提供することによって、記憶の全体像を思い出すことができる。これを記憶のパターン補完という。記憶のパターンを脳の中に貯えているが、そのうちの本の一部を外から刺激してやると記憶全体が想起されてくるのだ。
 人間は、情報を非常にたくさんの神経細胞の興奮のパターンとして表現する。これは、意識しない領分で起こり、相互作用して、その結果、考えや思考をどんどん発展させていく。これはプログラムのようなものとは違う。この過程は意識にのぼらない。最後の計算結果が意識にのぼって、我々はそれを論理で操作できる。人間の思考は、並列のダイナミックな相互作用でパターン化して考え、それが直感的な思考を生む。しかも、プログラムとして固定するのではなく、学習によって自己の能力を高めていく。
 脳の中身が次第に解き明かされていっています。私は、若いころから人の名前を覚えるのが苦手でした。もちろん、今もそうです。それで、人の名前を忘れていることを気づかれないように会話をすすめるのに長けてしまいました。要するに関連づけすればいいのですよね。記憶術も、要は、何か具体的な身近なものと関連づけておけばいいのです。といっても、それも簡単なことではありません・・・。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー