弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年12月10日

アメリカ人のみた日本の検察制度

著者:デイビッド・T・ジョンソン、出版社:シュプリンガーフェアラーク東京
 どうせアメリカ人が日本の検察制度をまた賞賛している本だろう・・・、なんて、ちっとも期待せずに読みはじめたのですが、意外に面白くて、あちこちに赤エンピツでアンダーラインを引きまくってしまいました。日本で検察「修習」もしたうえで、アメリカの検察庁に出かけて日米を比較していますので、なかなか興味深いものがあります。
 取調べ過程をビデオテープに全部収録すべきだと提案しています。それは全員にとってプラスになり、時間とお金が節約できるというのです。まったく同感です。アメリカでもビデオ録画をはじめていて、後悔している警察はただの1ヶ所もないとのことです。
 日本の若手検察官が被疑者に取調べのときひどい暴行を加えたことも紹介されています。自白を引き出して自分の手柄にしてエリートコースに乗ろうとしての暴行のようです。マスコミでは実名報道されましたが、この本では仮名になっています。やはり将来ある身だから、単行本にするときには仮名にしてほしいという「圧力」がかかったそうです。それにしても、この事件を報道したマスコミの臆病ぶりが痛烈に批判されています。
 日本の中心的マスコミは番犬だというよりは、いいなりの子犬のような行動をした。日本では批判的な調査記事を書くことは報道関係者の習慣にはない。もし、そこにふみこんだら、情報をもらえなくなり、飯が食えなくるなから、思い切った批判などはしない。我々はお互いにある種の取引をしている。皆この取引を了解している。検察官は立場が上で、我々は彼らにいろいろお願いする立場だ。我々は低姿勢でもって、彼らのルールに従って動かなければならない。
 この点は、検察官がパソコンで作成されている調書を部分的に差し換えることが現になされていることについても同じで、マスコミではほとんど問題にならないのです。
 この本には、刑事法廷において、アメリカでは直ちに「弁護人の支援無効」として「審理無効」となるような、みっともない国選弁護人の行状がいくつも紹介されています。読んでいる方が顔から火が吹き出すような恥ずかしさを感じます。恐らく真実の姿だと思います。日本では、国選弁護人は多くの弁護活動をするものの、その大半は刑事弁護とはいえない。ここまで言われています。元検事の70歳以上の弁護士に多いように書かれていますが、実際には、生粋の弁護士の若手にもありうるのではないでしょうか・・・(私にとっても、決して他人事ではありません)。
 検察には「敵」のリストがあって、1番に弁護士会、2番に社会主義者と共産主義者、3番と4番がなくて、5番が新聞だ。弁護士会の主要委員会は「左派リベラル」に偏っていて、弁護士会全体としての決定は、「平均的な」弁護士の感覚より革新的になっている。
 これもそう言われるとそうかもしれないと思います。
 日本の検察官は、一般に言われるほど多忙ではない。詳細な調書をつくりあげられるのは、制度的に能力の余裕があるからだ。
 原稿は英語ですから横書き本となっていて、400頁もありますが、私はいつものように2時間もかけず、ざあっと読みとばしました。今後の刑事司法のあり方を考えている人には、一読をおすすめします。

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