弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

中国の社会階層と貧富の格差

著者:李強、出版社:ハーベスト社
 中国の農業就業者の率は60%、日本の8%、アメリカ3%、フランス7%に比べて格段の大きさです。
 中国には档案という、個人の一生の経歴、家庭背景、親族の所属状況などを記載したものがありましたが、今は多様なタイプの企業が出現して突破されてしまいました。
 中国人の百万長者は1988年に5000人あまりだったのが、1993年に100万人をこえ、1995年には300万人以上とされています。
 中国の1980年代はじめに「脳体倒掛」という言葉があらわれました。肉体労働者の平均収入が頭脳労働者より高いという現象を意味しています。それがなぜなのか、人々を困らせました。しかし、今から10年前の1994年には「脳体正掛」に転換しました。頭脳労働者の平均収入の方が上まわるようになったのです。1993年の1年間で、政府機関をやめて新たな実業(ビジネス)に就いた知識人が30万人います。大量の頭脳労働者の「下海」は中国の民営者一般の素質を変えてしまいました。多くの知識人は「創収」を通して、最終的には「下海」の道を選んだのです。
 中国では「階級」という言葉に嫌悪感があり、利益集団とか利益グループと言いかえます。特殊受益者集団、一般受益者集団、相対的利益損失者集団、社会的下層集団という四つの利益集団があるとされています。いま中国には、「文人下海」という知識人が実業つまりビジネスをやる、「知本家」という知識を資本とする企業家という言葉があります。
 中国の都市貧困人口は3000万人いるとみられ、犯罪集団もふえています。
 単位の終身雇用制度に変化が生じ、都市においては、単位に帰属しない集団、たとえば自由業者、個人経営者、都市に入った出稼ぎ農民などが出現しはじめています。
 中国のいまを知るうえで役に立つ本です。

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