弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

伊勢詣と江戸の旅

著者:金森敦子、出版社:文春新書
 江戸時代というと、今でも閉ざされた村のなかで自由に往来もできなかった社会だというイメージが強く残っています。でも、とんでもありません。江戸の人々は、町民も百姓(農民とは限りません)も、かなり自由に旅行を楽しんでいたのです。お伊勢参りは、1日だけで23万人の人が押しかけたというのです(1705年)。4ヶ月間で207万人が伊勢まいりをしました。当時の日本全国の人口は2952万人(江戸時代を通じて3000万人と、人口は変わりません)ですから、6人に1人の割合で伊勢まいりをやって来たということになります。
 当時の日本の街道は世界で一番安全だったと言われています。元禄4年(1691年)に長崎から江戸まで旅行した東インド会社のケンペルは街道が旅人であふれていて、子どもたちだけの旅行者までいることに驚いています。
 お金のある人は庶民を含めて旅行で大散財をし、なければないで旅行ができた。そんな世の中でした。江戸時代を暗黒の時代と思うのは間違いなのです。

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