弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

物理学者たちの20世紀

著者:アブラハム・パイス、出版社:朝日新聞社
 私は40歳になってから、年に2回、一泊ドッグに入ることにしています。もちろん、健康状態のチェックが主目的なのですが、気持ちのうえでは同じ比重を占めるものとして、日頃なかなか読めない大部の本を読破する機会を確保することも狙いのひとつです。730頁もあるこの本も病室にもちこんで一心不乱に読みふけりました。1泊2日で、日頃よめなかった大作5冊を読了しました。おかげで、心身をスッキリさせて帰宅できました。
 著者はオランダ生まれのユダヤ人です。非ユダヤ人の恋人のおかげで隠れ家でずっと生活し、その間も物理学を勉強していました。アンネ・フランクの隠れ家とも近かったようです。しかし、ある日、ゲシュタポに踏みこまれ逮捕されてしまいます。ところが、恋人の大活躍おかげで、なんと解放されるのです。信じられないことですが、有能な物理学者だということで、ナチスのお目こぼしがあったのでしょう。
 戦後、物理学の道に復帰し、オッペンハイマーやアインシュタインなど、ノーベル賞クラスの世界の物理学者との交友を深めます。日本の湯川秀樹や朝永振一郎も出てきます。湯川は内気な学者で、黒板の方を向いて話をするので困った。朝永は、日本人物理学者のなかで一番学殖の深い人だった、と述べられています。天才にも様々なタイプの人がいるようです。

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