弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

われらの悲しみを平和への一歩に

著者:ピースフル・トゥモロウズ、出版社:岩波書店
 9.11犠牲者の家族(遺族)の手記を集めた本です。あの、いかにも「好戦的」なアメリカに、こんなに理性的なアメリカ人がいたのかということを知って、私は正直いって驚きましたし、自然に頭が下がりました。身内がテロリストに殺されたのに、テロリストへの報復攻撃はまずいと声を出して訴えた、というのです。すごい勇気だと思います。
 日本人「人質」問題のときの「自己責任論」の無責任な横行からは考えられないような事態です。テロリストによる攻撃への軍事的報復は、より多くのアメリカ市民の命を危険にさらすことにならないか。テロリズムは社会的・経済的状況から生まれる。アメリカは、9.11に経験した暴力的行為に必要な憎しみと過激主義を育てる状況をこそ防止すべき。
 テロリズムの根本原因を問題にしないで、テロリストだけを問題としている。暴力的犯罪に対する暴力的報復は、結局、暴力の悪循環を強めるのだ。暴力的行為は、唯一の選択肢でないばかりでなく、さまざまな落とし穴と偽善にみちた選択肢だ。
 日本の自衛隊が多国籍軍の一員として、海外で、ついに本格的な武力行使をしようという事態を迎えています。とんでもないことです。小泉首相の暴走を許してはいけません。平和こそ私たちの毎日の不可欠の前提なのですから・・・。

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