弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年5月 1日

アメリカの正義の裏側

著者:スコット・タイラー、出版社:平凡社
 元カナダ軍人のジャーナリストによるコソボ紛争の実情を現地レポートした本です。
 NATOの空爆は、150億ドルものミサイルや爆弾を投下したものの、78日間で、わずか13両の戦車を破壊しただけだった。アメリカのオルブライト国務長官は、1999年にミロシェヴィッチをヒトラーになぞらえて批判した。しかし、実は、その前の1996年には「平和の人」ともてはやしていた。
 ユーゴスラビアの内戦について、私は正直言って何が正しいのか、どこが間違っているのか、よく分かりません。でも、ひとつ言えることは、ジャーナリストがけたたましく叫びたてている「事実」は決してうのみにしてはいけないということです。セルビア人とアルバニア人の双方に過激派が存在している以上、単純にどちらかを全面的に悪いと決めつけるのは間違っているように思います。過去のいきさつを捨ててでも、なんとか平和共存していかなければならないからです。そうでないと、民族が違う、宗教が異なるというだけで殺しあい、その憎悪の連鎖は止まらないでしょう。
 アメリカのコソボ介入の本当の目的は、コソボにアメリカ軍の基地を手に入れることだったのではないか。訳者は、そのように解説しています。イラク復興で有名になったアメリカの建設会社ハリバートン社が、周囲14キロ、内部には300もの建物が立ち並ぶ3つの居住地区とショッピングセンター、教会、図書館、24時間営業のスポーツ施設、ヨーロッパ最高水準の病院まである基地をつくりあげました。このボンドスティールの基地は、中東からカスピ海までをカバーする最大規模の海外基地だというのです。
 アメリカによるマスコミ操作の怖さを、ここでも感じました。

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