弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年4月 1日

韓国現代史

著者:韓洪九、出版社:平凡社
 この本を読むと、韓国がこの50年ほどのあいだ、日本人には想像できないような苛烈な生き方を強いられたことがよく分かります。著者は次のように語っています。
 韓国で「主流」を自任する人々は、ともに生きる社会を創る知恵と寛容の代わりに、気に入らないものは撲滅し片づけてしまった記憶をもっている。だから、気に入らない人々を見ると、またきれいさっぱり片づけようとする。撲滅の記憶を自らの手でぬぐい去ることは、韓国民がともに生きる社会に向かうためには必ず通らなければならない関門だ。
 日本の自衛隊は、日本に駐留するアメリカ軍の指揮を受けることになっています。もちろん、これは韓国でも基本的には同じです。ところが、韓国では、女子高校生乱暴事件など相次ぐ不祥事によって反米感情が高まり、アメリカはやむをえず、韓国軍に対する平時の作戦指揮権を韓国政府に返還してしまいました(2004年4月から)。しかし、実際に軍隊の作戦を行う戦時作戦指揮権は依然として「客軍」であるアメリカ軍が握っています。
 ところで、韓国では、住民登録に10本の手の指を登録することになっています。日本で在日韓国人に指紋押捺に反対してきたのに、何も考えずに指紋を押す人があまりに多いと著者は嘆きます。
 韓国の学生運動は日本と違って今も先鋭的ですが、そのなかには高校生もふくまれてきました。ところが、最近、高校標準化が断行され、これまで政治問題や社会問題にいち早く目覚めた生徒が集まっていた名門高校がなくなり、中高入試に分断されていた入試の圧力が大学入試に集中するようになったこと、学徒護国団が置かれるようになり、軍事教練も強化されるというように軍事政権の学校統制が強まったため、高校生が社会問題や政治問題に参加することはきわめて難しくなったということです。残念なことに、そのような措置はとられていないのに、日本は韓国の先を行っていま
す。
 韓国は徴兵制の国です。1980年から1995年までの15年間に、軍人の自殺者が3263人、暴行致死387人など、軍人の死亡者が8951人に達しているそうです。1年で平均577人が死んでいるのですから、すさまじいものです。
 しかも、給与は月2000円ほどしかなく、台湾の兵士が1ヶ月にもらう給与は韓国の兵士が26ヶ月勤務しているあいだにもらう給与とほぼ同じなのです。さらに、韓国の高位公職者の息子は兵隊にとられない、とられても戦場に出向かない仕組みに
なっています。これは、アメリカでも同じようなものです。
 韓国現代史を読むたびに、戦前の日本による専制支配が、いかに今日まで韓国の重たい負の遺産となっているか思い知らされ、今さらながら気が重くなってしまいます。でも、それから目を逸らしてはいけないのです。

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