弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

てっぺん野郎

著者:佐野眞一、出版社:講談社
 石原慎太郎・東京都知事の半生を克明にたどり、慎太郎の本質を見事に解明した本です。
 慎太郎の父親は愛媛県に生まれ、宇和島中学を1年で中退し、山下汽船に店童(小僧)として採用され、叩き上げていった人物です。51歳で若死にしていますが、お酒の飲みすぎだったようです。慎太郎は、弟・裕次郎には絶対かなわないという根深いコンプレックスをずっと抱いてきました。裕次郎は慶応高校に失敗し、慶応農業高校に通いましたが、札つきの不良少年でした。その不良仲間の遊びを小説化したのが慎太郎の『太陽の季節』です。私は読んだことがありませんし、読む気もしません。芥川賞受賞に反対した佐藤春夫は、『太陽の季節』について、風俗小説としてもっとも低級であり、作者の美的節度の欠如しか感じられず、嫌悪を禁じえない、と言っています。これでは読む気がなくなります。保守反動派を自認する慎太郎も、名門の湘南高校時代には左翼的学生でした。一橋大学に入ってからも、破防法反対のデモに加わったことがあります。今の慎太郎からは、とても想像もできませんが・・・。慎太郎は選挙のとき霊友会の力を借りていますが、若いころには母親とともに世界救世教を信心していました。今、週に2日しか都庁に出勤しない慎太郎の代わりに都政を牛耳っている濱渦副知事は国際勝共連合と深い関わりをもっています。慎太郎には銀座の高級クラブでホステスをしていた女性に生ませた息子がいます。この子の認知のときには、妻と息子4人の全員が参加する家族会議で、今後は絶対に浮気はしないと約束させられたのだそうです。慎太郎の政治家としての信条を述べた言葉があります。「公約なんて、実現不可能なことは言わないものです。実現できなかったときに支持率が落ちるだけですからね。公約は、オッと思わせることが大事なんです」(週刊現代、2003年4月26日号)
 慎太郎は、とにかく飽きっぽい、ものは早見えするけれど、すぐに行き詰まる。そして行き詰まると、たちまち投げ出す。人々の耳目を集めることにプライオリティーの重きを置いた独特のポピュリズム的手法を得意をする。とかく問題になる乱暴な言葉づかいにしても不用意な発言ではなく、こういったらマスコミが取りあげてくれるな、という計算の上での発言だ。慎太郎は、「毒舌」「暴言」という形で、日本人の隠されたホンネを先取りしてあぶり出してきた。慎太郎は2度にわたって300万票という大量得票を実現しました。しかし、私にとっては、慎太郎は虫酸の走る男でしかありません。そんな唾棄すべき男に、なぜこんなにも多くの日本人が間違って魅かれてしまうのか。この本は、その理由を考えるうえで大いに役に立ちます。

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