弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

蝶と鉄骨と

著者:五十嵐遇、出版社:東海大学出版局
 テングアゲハの写真が口絵に紹介されている。オスよりメスが断然大きく、たくましい。胴が太々としていて、まるで蛾だ。濃緑の胴と羽の中心部に黄色いふちどりが珍しい蝶であることを一見して分からせる。北インドの高地、タイガーヒルに棲む蝶だ。この蝶を大成建設の現場所長をつとめる中年の男がネットをふるって追う。
 男は少年のころから昆虫少年だった。勉強より、三度の飯より、昆虫図鑑が何より好き。じっと昆虫を観察し、写生する。それでも、食べるために大手の建築会社(ゼネコン)に入社する。そしてイラクに企業戦士として派遣され、見事に大失敗必至の事業を建て直し、大赤字ではあってもやりとげた。その自分へのごほうびに北インドへ飛び、珍蝶テングアゲハの生育歴について調べあげた。
 子どものころの夢を追い続けることの大切さをしみじみ味わうことができるいい本だ。著者は55歳で大成建設の取締役までのぼりつめ、定年で退社する。それでも日本蝶類学会の会長をつとめているのだから偉い。
 わが庭にもアゲハチョウが飛んでくる。地上をはう気味悪い芋虫が変態して優雅に空を飛ぶ蝶になるなんて、誰がどうやって仕組んだのだろうか。これも生物進化の大きな謎のひとつだ。それにしても蝶は人間(ヒト)をとりこにする魅力をもっている。

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