弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年11月 1日

親指はなぜ太いのか

著者:島泰三、出版社:中公新書
 「直立二足歩行の起源に迫る」というサブタイトルがついています。「スリリングな知の冒険が始まる」とあるとおり、私は「へー、そうなんだ」と何度も知的刺激を受けてしまいました。
 手のひらを見つめてみましょう。親指だけ少し離れて、向きが違います。短くて太い点はニホンザルやチンパンジー、ゴリラと同じです。なぜヒトの親指はこうなっているのか。著者はアフリカのジャングルそしてマダガスカルへ出かけ、その謎を実地に探ります。結論は?
 ヒトは、サバンナに無数にある骨を食べることで生きのびた。骨髄は脂肪の塊である。しかし、これを食べるためには叩き割る必要がある。そのために石を握って骨を砕く。太い親指は、石を握るためのものだった。
 マダガスカルにしかいないアイアイは、手の中指が異常に細くなっています。なぜか?それは、堅い種子の中味をかき出すためのものなのです。アンワンティボやポットーというアフリカの熱帯雨林に住むサルの手は、人差し指も中指も非常に短く、単なる突起でしかありません。これはケムシを常食とするため、ケムシの毛をこそぎとるのに適したように指が変化したのです。
 すべて生き物は主食を食べるのにあわせて手と指が変化しているということを明らかにしたこの本は、これまでと違った角度から、サルとヒトとの共通性をも明らかにしています。

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