弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年10月 1日

朝陽門外の虹

著者:山崎朋子、出版社:岩波書店
 私は、大学1年生のとき、先輩に誘われて5月病の危険もあった心の空間を埋めるべく、耳慣れないセツルメントなる学生サークルに入った。以来、大学を卒業するまで、どっぷりセツラー生活に浸った。この本は久しぶりにセツルメント・ハウス(愛隣館)が登場し、本当になつかしかった。私の活動した地域はスラム街ではなく、下町の労働者住宅地であったが、そこにもセツルメント診療所があり、学生セツラーのためのセツルメント・ハウスがあった。
 この本は、東京の桜美林大学の創始者である清水安三(敬称は略させていただきます)が、戦前の中国・北京のスラム街のまっただなかに少女たちを集めて学校をつくった経緯を紹介している。もっとも成績優秀な女の子が、実は小さな娼婦であったこと、それを知りながら日本に送って勉強させたが、帰国して教員にしたところ中国人の父兄から排斥されたことなども語られている。
 この女学校には中国人だけでなく、朝鮮人も日本人も学んでいて、戦後まで無事に生き延びて活躍した女性からの聞きとりもあり、涙なくしては読めない。中国大陸に侵略した日本人がすべて残虐行為ばかりしていたわけではないということを知って、少し救われた思いだった。

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