弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年8月 1日

東大講義録

著者:堺屋太一、出版社:講談社
 なるほど勉強になったところもありました。しかし、全般的に堺屋太一の自慢話と独自の歴史観が強すぎて、客観性に乏しい気がしました。
 長篠の戦いで、織田信長の軍隊が3000丁の鉄砲を横一列に並べて発射したため、武田軍が崩壊したという話は初耳です。通説は3000丁を1000丁ずつ3段に構えて武田の騎馬隊を打ち破ったことになっています。
 ところが、この通説は間違っていると解説した本が最近出ています。『鉄砲隊と騎馬軍団』(洋泉社新書)です。この本を読むと、横一列はおろか3段構えも事実に反するということが論証されています。何事によらず通説(常識)は疑ってかかった方がいいということです。その意味で堺屋太一は、もっと学生に対して、何事も既成の概念は疑ってかかれとていう点をもっと強調すべきだったように思います。

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