弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年7月 1日

日本の刑務所

出版社:岩波書店
 日本の刑務所は、そこに入ると同時に、いかにその者の社会復帰を妨げるかに、すべての施策が向けられているとでも言いたくなるような現状です。
 私も、福岡県弁護士会の会長として昨年3月、福岡刑務所を見学しました。刑務所で働く職員の苦労は本当に大変なことだと察します。しかし、あまりにも閉鎖した社会であってよいのか、疑問に思います。
 現在の受刑者(4万7千人強。ちなみに未決は1万人)の特色は、頻回受刑者(全体の52.5%。5度以上が3割以上)、高齢者(60歳以上が9.3%)、薬物犯罪者(4人に1人)、そして暴力団関係者(4人に1人)が多いということです。
 この本を読んで、いくつか認識しました。
 その1は、欧米では、受刑者にも選挙権があり、刑務所内で不在者投票している。
 その2は、刑務作業について、欧米では一般社会の労働者と同等かそれに近い雇用条件となっている。
 その3は、欧米では第三者機関による監視が一般化しつつある。
 日本の刑務所では、個人的な生活領域がなく、他律的で受動的な生活をするため、主体性が失われ無気力になりがちで、外部から隔絶した特殊な刑務所社会に順応していくことが社会復帰の妨げとなっています。

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