弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

アメリカ

2014年1月30日

第二次世界大戦・影の主役


著者  ポール・ケネディ 、 出版  日本経済新聞出版社

 1943年秋、ドイツ空軍は押し寄せる米軍機の大編隊を相手に、明白な勝利を収めていた。
 ノルマンディー上陸作戦の開始当時、フランス鉄道網は年初と比べて30%にまで減少していた。7月当初には、わずか10%に減っていた。だから、ドイツ軍は、フランス西部に応援部隊を送るどころか、前方部隊を引き揚げることもできなかった。
 1946年6月から10月までのあいだに、ドイツのパイロットと搭乗員1万3000人が戦死した。ドイツ空軍の編隊長クラスは、おもにマスタングに撃墜されていた。その痛手からドイツ空軍は立ち直れなかった。このようにして連合軍がヨーロッパ西部の制空権を握ったのは、Dデーのわずか3ヵ月ほど前だった。
 1944年2月から5月にかけてのドイツ空軍打倒は、接戦だったかもしれないが、史上最大の勝敗を決する軍事行動でもあった。
 戦略航空攻勢は、ドイツ国民の士気を打ち砕くことはできなかった。いくら打ちのめされても、ドイツ人は戦いをやめようとはしなかったし、ナチス政権打倒に立ち上がろうともしなかった。英米空軍の無差別爆撃は、かえってドイツ国民の戦意を高揚させてしまった。
 1943年2月、アフリカ大陸はチュニジア中部の岩山の戦略的要路カセリーヌ峠をめぐって、アメリカ軍部隊が初めてドイツ軍と本格的に交戦した。カセリーヌ峠の戦いは、1942年始めにフィリピンでマッカーサーのアメリカ軍が日本軍に敗北して以来、アメリカ軍が第二次世界大戦で味わった最大の屈辱だった。カセリーヌ峠の戦いにはアメリカ兵3万人が投入され、そのうち6000人を失った、戦車183両、半装軌車104両、砲20門以上、ジープとトラック500台以上を失った。これに対してドイツ軍の死者はわずか201人だった。
 ところがドイツ軍の電撃戦も、その後は停止させられた。それはイギリス軍のシャーマン戦車ばかりではなく、広大な地雷原と、大量の砲とバズーカ砲を使用する特殊な対戦車大隊が功を奏した。
 イギリス軍のモントゴメリー将軍は全面的な攻勢をかけ、ドイツのロンメルは苦戦した。壮絶な戦いが終わったとき、イギリス軍の戦車は200両が大破し、走行不能に陥っていたが、それでも600両が残っていた。これに対して、ロンメルには30両しか残っていなかった。
 ドイツは3つの戦線で戦い、いっぽうソ連はドイツとだけ戦っていた。連合軍が北アフリカと地中海に進出したことにより、ドイツ国防軍最高司令部は、もっとも精強な師団をスターリングラードの戦いから引き抜かざるをえなかった。そもそもドイツが全方面で強力な軍事力を発揮するのは無理だったのだ。北アフリカに上陸した英米連合軍は、スターリングラードの戦いにも影響を及ぼした。また、シチリア上陸も、クルスクの戦い(戦車戦)に影響を与えた。
 ソ連のつくった初期のT-34戦車は、欠陥の塊で、戦場では全く信頼できなかった。T-34戦車が真価を発揮したといえるのは、1944年初めから半ばにかけてのこと。
 T-34戦車は、ドイツ軍とのクルクス戦車戦で敗退したあと、望まれていた改良が修理・製造工場で進められた。
 ジューコフは、大規模な地雷原の敷設に専念した。これは、ロンメルやモントゴメリーが地雷を重用したのと同じだ。アメリカ軍は地雷戦をあまり利用していない。エルアラメインの戦いで示されたように、地雷原は攻撃側がそれを突破するのに苦労するため、防御側に行動する貴重な時間をもたらす。
 クルスクの戦いでは、これがさらに大規模に実証され、世界最大の地雷原戦とまで呼ばれている。ドイツ軍の高速の装甲攻撃を擾乱するのに、縦深地雷原にしくものはない。
 赤軍の防御地雷原は、優秀な土木工兵部隊が敷設し、奥行が25~40キロあった。
 1943年半ば以降、アメリカからソ連に対して、スチュードベイカーのトラックが陸続と送られ、ジープも至るところにあった。赤軍の車両の半数以上(66万5000台のうち58%)は国産だったが、アメリカ製のトラックとジープのほうが、はるかに頑丈で信頼できた。アメリカ製の車両はもっぱら戦闘部隊の武器弾薬の輸送に使われ、ソ連製のトラックは予備の補給品の輸送や傷病者の後送に使われた。
 アメリカ製トラックをイギリスの輸送船国が運び、ジューコフの前線部隊の機動性が向上したというのは不思議な共存関係だ。
 赤軍のクルスク防御の成功と翌年の着実な西進には、赤軍がドイツ軍よりも優れていた三つの事柄が役立った。架橋能力、欺瞞の技術、そして膨大なパルチザン網だ。
 第二次世界大戦の戦史を読むときには欠かせない視点が満載の大変な力作でした。知らなかったことが多く、最後まで興味深く読みとおしました。
(2013年8月刊。3500円+税)

2014年1月29日

見た、聞いた、キューバ改革最前線

著者  千葉県AALA連帯委員会 、 出版  AALA連帯委員会

 昨年2月の10日間のキューバ訪問の旅が160頁ほどの小冊子になっています。キューバの現状とかかえている問題点がよく分かりました。
 私も、一度はキューバに行ってみたいと思うのですが、世の中、思うようにはいきません。そこで、旅行体験記を読んで、行ったつもりになるのです。
 それにしても、この冊子はよくまとまっています。半年近くの研究・編集作業が結実したもののようです。
 カリブ海にあるキューバは、アメリカから150キロメートルしか離れていないのに、アメリカによる経済封鎖が続いています。残念なことに、わが日本もアメリカに命じられ、いつものようにアメリカに逆らうことなく、キューバへの経済封鎖に加担しています。
 キューバの人口は1125万人。白人65%、黒人10%、混血25%。カトリック人口が85%。
 キューバ人の平均寿命は79.3歳と高い。60歳以上の人口は18.3%。
キューバでは、選挙権は16歳以上。国会議員の被選挙権は18歳以上だが、県会議員のほうは16歳以上。日本でも18歳以上に早くすべきだと思います。自民党が抵抗しているのです。
 キューバは共産党の一党独裁ということになっているが、国会にも20%の非党員の議員がいる。
キューバは物不足。スーパーの品ぞろえも少ない。そのため、買い物を楽しめるほどの選択の幅はない。欲望をあおり立てない社会なので、落ち着いている。しかし、物不足だから、欲望をあおり立てたら国民の不満が噴出することは十分に考えられる。
1990年からソ連経済が悪化し、キューバは非常時体制に入った。それまでソ連圏から輸入していた燃料や農業機械の補修部品が入手困難になり、機械化農業ができなくなった。そこで、都市農業運動が本格化した。
アメリカによるキューバ経済封鎖によって、キューバ経済は、いかなる緊急事態にも対処するため、「戦時経済」という性格を与えられ、過剰な在庫の保持など、経済構造が歪んでしまった。
 キューバの医師養成は目を見張るものがあります。累計では世界128ヶ国から、のべ5万人の学生が学んだ。アフリカからも、35ヶ国から学生がキューバに来ている。
 医学校では、入学金、授業料、宿泊料、食費、インターネットの使用が、すべて無料。ただし、キューバまでの往復の旅費は自己負担。
 修了するのに8年かかり、卒業後にキューバで医療活動をする義務はない。
 キューバの医療は、基本的に無料。アメリカのマイケル・ムーア監督の映画「シッコ」に、アメリカ人が病気を治すためにキューバへ行ったときの情景が出ていました。
ただ、キューバの医師の賃金はタクシー運転手のそれより低い。そのため、キューバの誇るファミリー・ドクター(家庭医)が激減している。
キューバの教育も素晴らしいものがあります。ユネスコは、フィンランドとともにキューバを教育のモデル国として推薦している。
 キューバでは、保育園から大学まで学費がすべて無料で、高校も基本的に全入。一学級の定員は15~20人。うらやましいですよね、これって・・・。
アメリカのキューバ制裁が解除されないのは、国会で3分の2以上の賛成を要するところ、オバマ政権は他の重要案件を先行させ、キューバ問題の比重を軽くみて、後まわしにしているから。
 なーるほどと思いました。大変勉強になりました。ありがとうございます。
(2013年9月刊。1000円+税)

2014年1月20日

ザ・ファイト

著者  ノーマン・メイラー 、 出版  集英社

 カシアス・クレイ改めモハメッド・アリが、1974年、アフリカはザイールで行われたジョージ・フォアマンとのタイトル・マッチを描いた本です。
 私の父はプロレスの熱心なファンでした。テレビにかじりついて、身体をよじって応援していました。同じようにキックボクシングについても、プロレスほどではありませんが見ていました。
 1974年というと私が弁護士になった年です。モハメッド・アリがフォアマンにKO勝ちしたのは記憶に残っていますが、アフリカでの試合とは知りませんでした。そのボクシング試合の観戦記なのですが、さすがはノーマン・メイラーです。心理描写がすぐれていて、格好の読み物になっています。
 リングでのモハメッド・アリの強みは、自分の心理状態に忠実であること。マスコミに向かってしゃべるときには、甲高くもヒステリカルな調子でまくし立てるが、リングに上がったときには、決して半狂乱になったりはしない。
 アリはリングの上で、蝶のように舞い、蜂のように刺す。
 これは、すごいフレーズですよね。
ベストコンディションとは、どういう状態なのか。ボクシングでは他人にはうかがいしれないものがある。ヘヴィ級において、15ラウンドを最良のスピードでこなしうる心身を維持するのは、至難の技である。
 モハメッド・アリは、徴兵を公衆の面前で拒否した。そのときのアリの言葉は、
「ベトコンは、おれを黒人坊と呼んだことなどない」 というもの。
 荒々しい力を養うにはどういうわけか、肉を食べる必要があるようだ。
 重いサンド・バックを長時間たたき続けるほど、ボクサーにとって辛いことはない。それは腕を痛め、頭を痛め、両手によくバンデージを巻いておかないと、拳の骨を折りかねない。
80ポンド以上はある重い物で、タックル用の人形みたいに巨大である。したがって、パンチが正確にあたらないと、身体がショックでしびれてしまう。パンチのひとつひとつに十分にウエイトをかけるため、1分間に40発から50発の間隔に調整しつつ、連打しつづける。
ブロウを1発でもくらったら、ふつうのボクサーなら簡単に肋骨を砕かれてしまうだろう。腹筋を鍛えていない者であれば、背骨まで折られてしまうにちがいない。
 リング上。二人は円を描き、フェイントをかけあい、一進一退をくりかえしてみせた。まるで、おたがいに銃口を向けあっているみたいだった。一方が発砲し、命中させそこなったら、相手に確実に仕留められるといわんばかりの様相である。パンチを放った場合、相手にそれを読みとられてしまえば、逆にしたたかパンチをくらうことになる。これほどショックなことはない。
 高圧線を素手でつかむようなものだ。いきなり、ぶっ倒れてしまうだろう。
アリは防戦一方の形をとって、自分のペースに相手のフォアマンをまきこんでいった。
 アリは、フォアマンに左のパンチを浴びせ、つづいて右を放った。チャンピオン同士が対戦する場合、右のリードパンチなど出さないものだ。第一ラウンドではなおさらである。
 それは非常にむずかしく、かつまた、危険をともなうパンチだから。命中率が悪く、しかも、自分にとってはガードが甘くなる危険性がある。ボクサーにとっては、1インチや半インチのリーチの差が勝敗の分かれ目となる。
 それだけのハンディを負いながら、右をくり出そうものなら、たちまち相手にそのすきを見破られ、絶好の反撃のチャンスを与えてしまう。
連打の雨をくぐり抜けおおせたアリは、何度もフォアマンの首をつついている。それは、家庭の主婦のケーキの出来ぐあいを爪楊枝でつついて試してみるような感じを与えた。フォアマンのパンチの威力は、ますます弱まるばかりである。アリは、ついにロープから放れ、ラウンドの終盤30秒のうちに、めまぐるしいパンチをくり出した。少なくとも20発は放っただろう。そのほとんどが命中した。
 何発かは、この夜の試合でも、もっとも効果的なパンチであった。
アリが狙いすましてパンチをくり出した。パラシュートを背負って、飛行機から飛び出す男みたいに、フォアマンの両腕が横に開き、このバランスを失った姿勢のまま、フォアマンはリングの中央によろめき出た。バランスを崩し、ふらつきつつ、ずっとモハメッド・アリを見つめつづけ、どうすることもできず、つまずき、よろけ、身を沈めた。その心は、チャンピオン・シップの誇りとともに高きにありながら、その身体は大地を求めていたのだった。
 フォアマンは、悲報を受けとった直後の、6フィートも背があり、60歳にもなる老執事みたいに、その場に倒れ伏した。そう、2秒間は、うちひしがれて身動きひとつしなかった。あらゆる階級のなかで最強のチャンピオンがダウンしたのである。
 なんともはや、目の前で実況中継されている気分になる描写の続く本でした。
(1997年10月刊。古本)

2014年1月15日

オバマの医療改革


著者  天野 拓 、 出版 勁草書房 

 アメリカという国は本当に遅れた、野蛮な国だとつくづく思いました。だって、国民皆保険なんて、あたりまえのことでしょ。日本もヨーロッパも,
みんな当然のように古くから実施しているじゃないですか。政府が国民皆保険にしようというと、そんなのは社会主義だ、アカだなんて共和党の議員が絶叫して反対するだなんて、本気ですかと言いたくなります。信じられません。
 クリントン政府が失敗し、今度、オバマ政権がようやく実現したアメリカの国民皆保険制度は、なんと民間保険会社への加入を義務づけるものだなんだそうです。またまた民間の保険会社の金もうけ話になってしまうのです。それでも反対する人が多いなんて・・・。
 アメリカの制度は、日本や多くのヨーロッパ諸国の制度とはきわめて性格が異なる。アメリカのものは民間保険をベースにしている。日本などの国民皆保険制度は、基本的に公的な医療保障制度を中核としている。アメリカの制度は、民間の医療保険を中心とする。既存の医療制度をベースに国民皆保険制度の実現を目ざすものである。
 2010年3月、オバマ大統領が署名して医療改革法が成立した。それまでアメリカでは、1910年代に皆保険を導入しようとして、いずれも失敗に終わっている。医師会は国民皆保険制度は「社会主義化された医療」につながるという反対キャンペーンを張った。
 私などは、社会主義化されても大いに結構だと思うのですが、アメリカでは、とんでもないことの代名詞になっているようです。
 メディケアは、65歳以上や一定の病気をもつ人、障害者などを対象とするもので4700万人15%が加入している。受給者の3分の2が女性であり、6割がメディケアとメディケイドを重複して受給している。
メディケイドは、低所得者を対象とする医療扶助制度。2010年に5084万人(16.5%)の加入者がいる。2001年には3017万人だったから、10年間で2000万人の増加である。メディケイドは、アメリカの医療制度における「セーフティネット」であり、3100万人の児童をカバーしていて、アメリカの出産の4割を財政的に支援している。2011年度のアメリカ人口3億人あまりのうち、民間医療保険の加入者は2億人近い(64%)。
 しかし、戦前の1940年には、総人口1億3200万人のうち、医療保険に加入していたのは1200万人、10%にすぎなかった。戦後になって、民間保険の加入者は急増している。アメリカの医療制度のもっとも大きな特徴は、4861万人(16%)もの無保険者が存在すること。無保険加入者の多くは、19歳から64歳までの成人。無保険者はマイノリティに多い。ヒスパニックの30%(1578万人)、アフリカ系20%(772万人)、アジア系17%(270万人)。
ヒスパニック系の無保険者は1990年に700万人だったのが、2000年には1120万人へ急増している。
無保険者のうち就労者が2800万人で、年に1週間も働いていない人が1310万人もいる。無保険者は家計所得が中程度のミドルクラスのあいだで着実に増加している。
 無保険者問題が深刻なのは、それが個人、家族、コミュニティ、経済などに広範な影響を及ぼすからである。
 アメリカへの不法移民は850万人から1180万人まで増加し、それが180万人もの無保険者の増加につながった。アメリカぜんたいの無保険者の690万人の増加の27%になる。
アメリカは国民皆保険をうたいながらも、2019年時点で2200万人が無保険者のまま取り残される。アメリカは先進民主主義国のなかで、唯一、今後とも多くの無保険者がかかえ続けていくことになる。
民間保険会社は、健康状況の悪い人間の保険加入を拒絶しようとする傾向にある。
 マイケル・ムーア監督の映画『シッコ』をみて、私はアメリカではうかうか病気になれないなと思いました。民間保険会社の査定・選別は営利主義一本槍でありまるで人道に反しています。
 アメリカ人の多くが医療改革を望んでいながら、現状維持を志向し、改革によって負担をこうむるのを嫌悪する傾向にある。
アメリカ先進国のなかで、もっとも医療費が高い国である。国民医療費は2兆7000億ドル(2011年)、1人あたり医療費は8680ドル。前年度より3.9%伸びている。国民医療費がGDPに占める割合は18%である。
 アメリカにおける医療費が高いのは、システムの大半が投資家によって所有されていることにある。医療ビジネスは、投資家を満足させるだけの利益を必要としている。
 病院は、効率的であるよりもむしろ利益の上がるサービスの提供に集中する傾向にある。それがコストの高騰につながっている。
 今日の民間保険の大半は投資家によって所有されたビジネスである。アメリカの民間保険産業は、その保険料から少なくとも5000億ドルの収入を得ている。その管理運営コストと利益が、医療費を何十億ドルも押し上げている。
 こんなアメリカのようにしようというのが安倍政権の考え方です。やめてほしいです。大金持ち中心の国にするなんて、とんでもありません。
 340頁もある。大変貴重な労作です。
(2013年10月刊。3800円+税)

2014年1月 3日

アメリカ連邦最高裁の素顔


著者  ジェフリー・トゥービン 、 出版  河出書房新社

アメリカという国は、実に遅れた国だと思います。
 妊娠した女性に中絶する権利を認めるかどうかがアメリカという国では今なお重大な政治的争点だというのです。信じられません。宗教的観点があまりにも強すぎます。
妊娠中絶を支持するかしないかという問題は、民主党と共和党の分水嶺となってきた。
 祈禱と聖書朗読は、アメリカの公教育における柱として代々行われてきた。ところが、アメリカ連邦最高裁は公立学校での聖書朗読を義務づけることを禁止した。
 当然のことですよね。キリスト教を公立学校で教えるなんて、とんでもありません。
 スーター判事という変わった判事がいます。昼食は毎日おなじ、りんご丸ごと1個(芯と種まで)にヨーグルト1カップ。ものを書くときは万年筆をつかう。自宅にテレビはない。
 最高裁のロークラークは、ほとんど20代後半で、著名なロースクールを主席で卒業したあと、下位裁判所の判事の下で1年クラークとして働いていた。クラークを定期的に最高裁に送り込む判事をクラーク供給係と呼ぶ。クラークは、裁量上訴の申立を精密に調べ、8000件ほどの事件を選りすぐって審理の価値のある80件前後にしぼる手伝いをする。判事と事件を議論し、口頭弁論の準備をする。そして、判決理由となる意見書の最初の草案を書く。
 アファーマティブ・アクションの恩恵者としてアメリカで一番有名なトーマス(黒人判事)は、その措置を公然と批判する激しい意見を書いた。
 このように世の中は矛盾に満ちています。アメリカの連邦最高裁の矛盾した激しい対立が描かれています。同じように日本の最高裁の内情も誰か紹介してほしいものです。
(2013年6月刊。3200円+税)

2013年12月25日

マッキンゼー

著者  ダフ・マクドナルド 、 出版  ダイヤモンド社

マッキンゼーとか大前研一と聞くと、私には「金の亡者」というマイナス・イメージしかありません。世の中、すべて、お金。カネ、かね、金。お金がすべてを決める。いやですね、そんな世の中って・・・。
マッキンゼーには、オフィスや役員室を占領している、成功を収めた同窓生(アラムナイ)立ちのネットワークが世界中の隅々まである。
 マッキンゼーで年配のコンサルタントは、めったに見かけない。この組織は経験より若さを好む。
マッキンゼーは、価値があるのか疑わしい仕事に対して莫大な手数料をとっている。現実には、単に重役の仕事をしているだけ。
過酷なコストカットのために正当な言い訳を求めている経営者たちにとって、マッキンゼーは頼りになるコンサルタントであるばかりでなく、責任を負わせられる都合のいいスケープゴートである。
 問題は、マッキンゼーの高価な費用は、果たして、本当に見合っているのか。それは難問だ。
コンサルタントは見かけがあってこそ成り立つもの。コンサルティングとは、学位の証書からは分からない能力を、服装やマナー、言葉づかいという外見によって伝えるもの。
 マッキンゼーは、自分たちは企業の最高責任者のためだけに働くのであって、下役たちには用がない。要するに、マッキンゼーは、あくまでも経営者のために働くもので、労働者のためにはならないのですね。この本を読んで私が理解したことは、これでした。よく分かりました。だから、費用も超高額なのですね。
 マッキンゼーは、人材開発をうまくやっている。わずかな金額で若くて未経験な人材を雇いそれからクライアントの費用で教育させる。
ハーバード大学の卒業生にとっても、マッキンゼーへの就職が一生の仕事になることはめったにない。
 多くのコンサルタントは、1年に最大で2000時間分の報酬請求ができる。
 マッキンゼーを雇ったクライアントが、彼らにはその価値がなかったと明言することは、ほぼない。
 これという「商品」のないマッキンゼーにとっては、関係がすべてだ。
 賢明なクライアントは、マッキンゼーを使う最善の方法は入り込ませないことだ。
 マッキンゼーは、自信がすべてだ。成功の秘訣は、成功しているようにふるまうこと。
 マッキンゼーが成功したもう一つの理由は、世界中の経済界に同窓生と友人を送り込んだことにある。
 マッキンゼーは、あの最悪の悪徳企業エンロンからなんと年間100万ドルももらっていたのに、無傷で生きのびたのでした。マッキンゼーは、エンロンで稼いだだけでなく、エンロンを崇拝の対象に押しあげて、その福音を伝えて、「石油企業家」を称賛した。マッキンゼーは、不正な手段で成長していたエンロンを事実上誇大宣伝した。
 ところが、マッキンゼーは、刑事でも、民事でも、被告人になることはなく、議会公聴会に社員が証言を求められることもなかった。これには、業界関係者の多くが憤慨した。
マッキンゼーって、大企業と経営者のためのコンサルタント会社と経営者のためのコンサルタント会社だということがよく分かる本でした。
 コストカットって、要するに、冷酷な人減らしですよね。でも、それだけで企業が発展するとは、とても思えません。
(2013年11月刊。2400円+税)

2013年12月19日

ライス回顧録


著者  コンドリーザ・ライス 、 出版  集英社

ブッシュ大統領の下で国務長官をつとめた著者が、その激動の日々を振り返っています。上下2段組で670頁もある大作です。世界のあらゆる動きを視野に入れた政策決定と行動ですから、それを追うだけでも目がまわってしまいます。まさしく超人的な仕事ぶりです。
 51歳にして黒人女性初の国務長官に就任したというのですから、よほど頭が切れる女性なのでしょう。顔写真をみると、怜悧そのものです。ちょっと怖い印象です。
 少しの間でも寝て、体を動かすエクササイズを欠かさないなど、体調管理も十分に気をつけていたことが分かります。
 それにしても、アメリカのホワイトハウスから見た日本の存在感のなさはどうでしょうか。驚くべきものがあります。国務長官として日本を注視していたなんて、とても感じられません。
 日本を見るときには、日中、日韓などで、あまり問題をおこしてくれるなという程度なのです。670頁もあるこの本のなかに、日本についての記述はほとんどありません。わずかに出てくるところを紹介します。
 アジアには多国間の外交組織はない。二国間の関係があっても、大半はこじれている。日本と韓国、韓国と中国、日本とロシア、日本と中国、どの関係も第二次世界大戦のまだ癒えない傷を負っている。
アメリカは、韓国そして日本との安全保障上の同盟関係を大幅に刷新した。
 日本人は控え目だ。感情を見せずに、形式のなかに本音を隠して、なかなか奥が見透かせない。日本は近隣地域において、中国からだけでなく、アメリカの同盟国である韓国からも信頼されていない。日本のポーズは多少は役に立つだろうが、大きな効果は期待できない。
アメリカは、軍事的にも経済的にも太平洋の一大パワーとなった。
 韓国、日本、オーストラリアといった友好的な民主国があり、この変貌いちじるしい地域において、アメリカは足場を維持するだけの十分な力をもっている。そのなかで弱点になってきたのが日本だった。大幅に遅れ、強く求められていた省庁と経済の改革に着手することを小泉首相は決断した。しかし、小泉の退任後、日本は再び合意政治に逆戻りした。とても国を前進させることができるとは思えないような、誰とでも取り替え可能な首相が何人も続いた。日本を訪問するのがどんどんユーウツになってきた。
 日本は、停滞し老化しているだけでなく、周辺諸国からの増悪で呪縛されているように思えた。個人的にも、日本人との相性は良いとは言えなかった。
 日本は、拉致問題についてのアメリカの援助が得られなくなると困るというだけの理由で、北朝鮮についての六カ国協議の失敗を望んでいるのではないかと感じることが多かった。
 変動するアジアにおけるパートナーとして、アメリカは自身ある日本を必要としていた。だが、2006年の小泉純一郎の首相退任とともに、そうした日々は消え去ってしまったようだ。
 アメリカの同盟国で成熟した民主主義国家である韓国がアメリカの長年の友人である日本に深い疑念を抱き続けていることには、どう対処すればよいのだろう?
 日本にも詳しい国務省のメンバーは、「菊紋の工作員」という蔑称で呼ばれることが多かった。
ここにはジャパン・ロビーとも呼ばれるアーミテージやナイという人々はまったく登場してきませんが彼らがホワイトハウスに全然影響力を持っていないことが、ここにも反映されていると受けとりました。
 著者が、チェイニー副大統領と、それに連なる「ネオコン」一派と厳しく争っていたと解説のなかで指摘されています。
チェイニー副大統領の率いる「ネオコン」一派と、パウエル・ライスの「隠健」派と、パウエル・ライスの「隠健」派とが抜きがたく内部で対立していた。
 そして、ライス国務長官は、日本の保守政権をこき下ろした。太平洋を挟んで、日本とアメリカの相互不信は増殖していった。
いまの安倍政権のやっていることは、大局的に見ると、アメリカの手のうちではあるけれど、実はアメリカ一辺倒でも必ずしもなく、アメリカからすると容認できない部分も多々ふくまれているように思われます。安倍政権の特異性という危険性は、そこにもある気がします。
よみ通すのに骨の折れる本ですが、読みはじめると、なかなか面白いことが書かれています。アメリカの視点からみた国際政治がよく分かります。ただし、キューバ制裁をいまだに合理化・正当化しているところなんて、いかにも時代錯誤としか思えませんでしたが・・・。
(2013年7月刊。4000円+税)

2013年12月17日

トップシークレット・アメリカ

著者  ディナ・プリースト、ウィリアム・アーギン 、 出版  草思社

 自公政権の強行採決によって特定秘密保護法が成立してしまいましたが、国による秘密指定が恣意的に運用されているのはアメリカでも同じことです。この本は、その点を明らかにしています。
オバマ政権は内部告発者やジャーナリストによる情報リークに対する調査をブッシュ政権より強化した。「トップシークレット・アメリカ」の膨張は、オバマ政権になっても続いた。インテリジェンス関係と特高作戦関係の四つの組織が正式に発足し、さらに39の新しい、または衣替えした対テロ組織が発足した。2010年になって、オバマ政権は24の新しい組織と、12の新しいタスクフォースと軍部隊を設立した。
 CIAは、アメリカ政府のほかの機関(軍もふくむ)が行うことが許されないことを海外で行うことを目的として、アメリカ議会が立法によって設立した機関である。
 CIAの極秘プログラム「グレイストーン」は、テロ容疑者の拘束・尋問・返送などのプログラムや、容疑者を外国に運ぶ輸送機の用意から、それらの国の秘密収容所の運営に至る兵站プログラムもその一部とする。
 FBIの対テロ部門は、9.11のあと前の3倍に膨れあがり、捜査官はテロリストやスパイの捜査に駆り出され、以前よりはるかにたくさんの人々を監視しなければならなくなった。FBIは国内の対テロ防諜機関としての任務を受けもつようになっていた。
 全米の対テロ機関は、オバマが大統領になる何年も前に既に巨大になり、その一方で、他の教育、低所得者層のための医療、市町村村のいたんだインフラの修理などに必要な予算は大幅に削られた。だが、アメリカ国民は相変わらず、「テロを防止するためなら、いくらでもカネを使う」と高言する政治家を繰り返し選挙で選び、巨大な対テロ機構は膨脹し続けた。政府を公表するインテリジェンス関係の予算は年間810億ドルという巨大なものになっている。
2011年に制定された「愛国法」は犯罪捜査と防諜捜査のあいだにあった垣根をとり払ってしまった。愛国法は、FBIが多くの情報提供者を使い、市民会話を盗聴し、多くのグループ内に内通者を浸透させ、市民のEメールや携帯メールを読み、アメリカ市民をスパイして個人情報を集めることを再び可能にした。
 何かの容疑をかけられているかいないかに関わらず、本人の知らないうちに個人情報を集めることが可能になっている。
現在、アメリカでトップシークレットを扱う資格を持つ人は85万4000人もいる。そのうち26万5000人は民間企業の社員である。
 対テロビジネスが繁栄している。その一つ、ジェネラル・ダイナミック社は、2000年に104億人だった売上高が2009年には319億ドルになった。従業員も4万3千人から9万2千人へ倍増した。民間企業に請け負わせたほうが効率も良く安上がりに成るだろうという見込みは、大きな間違いだったことが判明した。
国防総省は、もはや戦争のための組織ではない。ビジネス企業だ。アフガニスタンはそのいい例だ。これまでに、ここでどれほどの金儲けが行われたことか。対テロビジネスは、ずば抜けて安定した利潤の高い環境なので、ひとたび中に入った者はまず、そこから出ようとしない。
 対テロ産業はガンの治療に似ている。ガンの治療は、ガンで死ぬ人より多くの人たちの生活を支えている産業なのだ。
CIAの無人機の操縦者はアメリカ本土のネバダ州などにいる。
9.11テロのあとの10年間に、アメリカの所有する無人機は60機から6000機に増えた。無人機の予算は、2001年には3億5000万ドルだったが、10年後の2011年には41億ドルで、20種類以上のタイプのものがある。
 CIAは、2008年から2011年までの3年間に、パキスタン国内で220回の無人攻撃を行い、1400人を殺害した。無人機攻撃が増えている理由の一つが、生きたまま拘束しても収容する場所がないことにある。CIAは秘密収容所を閉鎖してしまった。
無人機による殺害は、パキスタン政府の了解をとりつけているものの、パキスタンの人々を怒らせ、アメリカへの支持を減らしている。
統合特殊作戦軍は、陸海空軍のさまざまな部隊によって構成されている。その中核は、陸軍のデルタフォース、海軍シールズのチーム6、など。彼らは、殺害リストに入れる対象を自分たちで選び、殺害を実行する権限を与えられている。9.11までは実際に出動する機会はほとんどなかった。オバマは大統領に就任すると、すぐに統合特殊作戦軍に接近した。
 この本を読むと、秘密をいくら増やしても世界の変化には追いつかないし、その秘密はいずれ漏れてしまうことがよく分かります。日本の特定秘密保護法は天下の悪法ですが、結局のところ、安倍政権の恥部を隠すためのものでしかないでしょう・・・。法が施行される前に撤廃(廃止)させたいものです。
(2013年10月刊。2600円+税)

2013年12月 4日

繁栄からこぼれ落ちたもうひとつのアメリカ

著者  デール・マハリッジ 、 出版  ダイヤモンド社

アメリカ労働省によると、最近、創出された仕事の8割が低報酬の仕事だ。5割は年収2万2000ドル以下(220万円以下)、3割は2万2000ドルから3万1000ドルだ。
 ウォール街の大手投資銀行のトレーダーのボーナス平均額は34万ドル。シニア・トレーダーの平均年酬額は93万ドル。ヘッジファンド社の社長は40億ドルの報酬をもらった。支払った連邦税は15%。これは中間所得層の税率の半分でしかない。 富める者は税は低く、貧しい者は税は高い。
 レバレッジド・バイアウトで会社が買収され、金融機関は大もうけする。会社は負債を抱え、競争に耐えきれなくなる。金融機関の社員は高級別荘地ハンプトンズで贅を尽くし、カリブ海で豪華なヨット遊びに興じる。何千人もの労働者の人生を台無しにして手に入れたカネを使って・・・。
 ゴールドマン・サックスは社員から武器携帯許可の申し込みが増えている。人々の怒りを恐れているのだ。
 アメリカ人、9160万人は国の定める貧困レベル(4人家族で年収2万1834ドル)を200%も下回っている。
 貧困がもっとも速いスピードで増え続けているのは、郊外だ。2000年から2008年のあいだ、貧困層に落ちた人は250万人いる。2010年の納税申告日、アメリカ人の47%は課税対象にすらなっていなかった。
 ティーパーティーと極右派が反対したのは、国民健康保険や産業規制など、リチャード・ニクソンでさえ強く支持したような、労働者や国民を守る中庸的な政策だ。
 USスチールの製鉄所が閉鎖されると、その町は、あまりにも失業率が高いせいで、町は暴力にむしばまれ、緊張感に包まれた。殺人と放火の件数は最高記録を更新した。地元の景気が悪化するなかで、放火事件が相次いだ。火事は夜に起きる。子どもたちは火事を怖がり、親の寝室の床に寝る。
強者に甘く、弱者に冷たい、これが格差社会アメリカの現実。
 著者は、なんと1980年から30年にわたってアメリカ各地を体当たり取材して、この本を作ったのです。紹介されているアメリカの寒々とした光景は背筋を凍らせます。そして、この著者は、先に紹介しました『日本兵を殺した父』(原書房)の著者でもあります。
 今なおアメリカを無条件に賛美する日本人が少なくないなかで、日本がこんなアメリカのようになってはいけないと実感させてくれる本です。
(2013年9月刊。 2400円+税)

2013年10月31日

殺す理由

著者  リチャード・E・ルーベンスタイン 、 出版  紀伊國屋書店

なぜ、アメリカ人は戦争を選ぶのか。このようなサブタイトルのついた本です。
一見すると、人の良さそうなアメリカ人ですが、昔も今も、戦争が大好きな国です。ということは、大人の男は人を殺したことがある人が少なくないということも意味します。そこが、日本人とは決定的に異なります。世界の憲兵をきどって、自国の利益のためには侵略戦争だって平気です。ところが、自国の利益にならないと思えば、「ルワンダの悲劇」のような事態のときには、見て見ぬふりをして動きません。まことに身勝手な国です。そして、日本は戦後ずっと、そんなアメリカの言いなりに動いてきました。本当に情けない話です。
訳者は、あとがきで次のように指摘していますが、まったく同感です。
 近年のアメリカは、経済を浮揚させておくために軍産複合体を維持・拡大し、圧倒的な軍事力を容赦なく使い、「テロに対する戦争」という言葉によって、あらゆる異論や反論を封じこめようとしている。
 そして、この本の著者の結論を、訳者は次のように総括しています。
 本来なら実利にさといはずのアメリカ人が戦争を容認してきたのは、戦争が道徳的に正当化されると納得したときに戦争を選んでいる。そして、道徳的に正しいか否かの判断に、アメリカの市民宗教が大きな影響を及ぼしている。
 では、本文を紹介してみます。
アメリカは、大きな戦争を10回遂行したが、これにはアメリカの市民宗教が大きな影響を及ぼしている。アメリカは先住民諸部族に18回もの大規模な軍事攻撃をしかけ、25回以上も諸外国に軍事介入した。第二次世界大戦以降だけでも、アメリカが本格的に武力を行使したのは150回をこえる。 これほど好戦的な記録をもった近代国家は他に例をみない。
しかも、アメリカのペースは加速している。1950年代以降、アメリカは20年以上もの歳月を戦争に費やしてきた。朝鮮、インドシナ、イラク、アフガニスタンでの軍事戦争によって、10万人以上のアメリカ国民が戦死しその5倍以上が負傷した。そして、数百万人もの外国人が生命を奪われた。
 アメリカ史を特徴づけるものでありながら見落とされやすいのは、戦争が提唱されるたびに非常に強硬な反戦論が生じること、そして、戦争が始まると、この反戦論は弱まり、消えてしまうこと。
 うへーん、そうなんですか・・・。それは驚きですね、たしかに。
 アメリカ人が生まれつき攻撃的だという議論は、戦争が提唱されるたびに、多くの国民が異を唱え、反戦運動が広まっている事実に矛盾する。そして、戦争がはじまると反戦論は弱まり、戦争がうまく行かないと反戦論の勢いは盛り返す。
 9.11の前、アメリカ政府代表はタリバン指導部とビン・ラディンについて何度も協議していた。しかし、このことはアメリカ国民に知らされることはなかった。
 イラクのサダムがイラクで絶対的な権力を握って行使するのをアメリカ政府は支援していた。イランに侵攻し、クルド人などに化学兵器を使ったとき、サダムは、アメリカの信頼できる同盟者だった。サダムは強硬な反共主義者だったので、CIAは資金その他の援助をふんだんにサダムに与えた。
 サダムが数千人ものイラクの共産主義者を処刑したことは、アメリカのスポンサーたちを喜ばせた。そして、1980年にサダムがイラン・イラク戦争を始めたことこそ、アメリカの大義にもっとも貴重な貢献をした。
 今日、アメリカで徴兵制の復活を提案しているのは、議会内の反戦派メンバーである。徴兵制が復活すれば、イラクやアフガニスタンのような国々でのアメリカの軍事行動は再考を余儀なくされるからという考えによる。
 戦争が大好きなアメリカについて、深く分析した面白い本です。
(2013年4月刊。2500円+税)

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