弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

人間

2017年12月14日

暮らしのなかのニセ科学


(霧山昴)
著者 左巻健男 、 出版  平凡社新書

 アップルの創業者・スティーヴ・ジョブズがガンのため56歳で亡くなりました。著書は、手術で早期にガンを除去しておくべきだったのに、ニセ科学、ニセ医学にだまされ、手遅れになったと厳しく批判しています。
すい臓がんで早期に発見されたので、早期に手術しておけば生存確率は上がった。しかし、手術を拒否し、絶対薬食主義やコーヒー浣腸などをして手遅れになってしまったというのです。
 なぜ騙されてしまうかという問いより、なぜ騙されない人がいるのか、と考えたほうがより適切だ。人は事実でないことでも、事実のように信じてしまう思考傾向がある。これは、もともと人間の心理システムに組み込まれているのだ・・・。
 体験談のほとんどは信頼性がない。○○○のおかげというのは、ウソか、たまたまそうなったのを信じ込んだだけのこと。
「超能力」の持ち主だと一時もてはやされたサイババも、要するにマジックで、二流のマジシャンに過ぎなかった。
 宿便なるものは存在しない。素人が浣腸すると、腸の粘膜を傷つけたり、危険性は大きい。
標準治療以外の療法は効果が乏しい。
 薬機法(薬事法の名称が変わった)によって、健康食品やサプリには、がんなどの治療効果をうたうことはできない。ところが、サプリは、こんなに効果があったという体験談があふれている。でも、それは全部でっち上げにすぎない。サプリのかたちで多量に摂取するのは、かえって危険が大きい。体験談を真に受けてはいけない。サプリはかえって健康に有害の危険がある。ウコン、グルコサミン、ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタ、コエンザイム・・・。
 日本人の平均寿命は、明治・大正時代は40代。夏目漱石がなくなったのは49歳だったでしたかね・・・。50歳をこえたのは終戦後の1947年。やはり戦争で早死にしていたのですよね。そして、1960年に男性69歳、女性70歳になりました。それが今では、男性は80歳、女性は世界首位の86,8歳まで伸びています。
 もっとも長生きするのは、太り気味の人。やせすぎは短命。太っても死亡率はあがらない。逆に成人したあと体重が5キロもやせると、死亡する危険が1.3~1.4倍も高くなる。
 下手なダイエットはしないほうがよほどいい。
 水素水、磁石を通した水、活性水素水、波動水、マイナスイオン水・・・・。みんな効果は証明されていない。
 EMは、世界救世教がすすめたもの。その有効性は何ら証明されていない。実は、私も何年も前からEMぼかしを利用しています。たしかに生ゴミの悪臭はなくなりました。それで今も利用していて、畑の中に混ぜ込んで久しいのですが、EM効果なるものを実感したことはこれまでまったくありません。まあ、私も騙されやすい人間の一人だなと思ったものでした。
 多くの人に読まれるべき本だと思いました。


(2017年6月刊。800円+税)

2017年12月 4日

漱石先生の手紙が教えてくれたこと

(霧山昴)
著者 小山 慶太 、 出版  岩波ジュニア新書

この本を読んで夏目漱石をすっかり見直してしまいました。
私は手紙をもらうのも手紙を書くのも、昔から大好きなのですが、もちろん手紙は肉筆に限ります。
漱石はおそるべき手紙魔だったのですね。なんと、22歳から亡くなる49歳までのあいだに2500通をこえる手紙を書いています。信じられません。それも、見知らぬ読者からのファンレターやら人生相談にまで、いちいち返事の手紙を書いているのです。律気というか、まめまめしいというか・・・。そして、手紙は長いものがあるうえに、内容が濃いのです。一筆啓上式の短文ではありません。
自宅に電話がやっと引かれた(1912年)ころですから、長電話はありえませんし、ラジオはともかくテレビなんかありませんので、手紙を書く時間はあったのでしょう。
漱石は、人に手紙を書くことと、人から手紙をもらうことが大好きだと書いています。私は書くことより、やはりもらうことのほうがうれしいです。
漱石全集には3巻分が書簡集にあてられていて、そこに2500通の手紙が収録されている。そして、長い手紙が多い。
漱石は木曜会というのをやっていました。自宅に木曜の午後3時からは面会日として、弟子たちが来るのを歓迎していたのです。それ以外は執筆の時間にあてていました。
漱石のかんしゃくもちは有名で、家族に対して向けられていたようです。漱石の妻がかつては悪役専門でしたが、最近は見直されていますよね・・・。
ちなみに、漱石は熊本の五高で教師をしているときに結婚しました。このとき29歳で、妻の鏡子は18歳です。
漱石は若者を惹きつける、人間味にあふれる人物だった。だから、毎週の木曜会は盛会だった。弟子たちをはじめ、若い人々の作品に対して読後すぐに批評文を送り、いいところを大いに褒めた。
漱石は博士号をもらっていません。本人が断乎として断ったのです。博士とは、きわめて偏った知識しかもたない、狭い領域にしか通じない不健全な学問の修め方をした人間がなるものであって、自分はそんな人間ではないと宣言し、実行しました。
漱石も、ずいぶん悪口やら誹謗を受けた。しかし、黙然としていた。気に入らないこと、しゃくにさわること、憤慨すべきことは山のようにたくさんある。それを清めることは、人間の力では出来ない。それと戦うよりも、それを許すことが人間として立派なものなら、できるだけ、そちらのほうの修養をお互いしたいもの・・・。
手紙魔の名に恥じず、漱石が実に心に触れる手紙をこんなにたくさん書いていることに、軽いショックすら受けてしまいました。
岩波ジュニア新書は私の愛読書の一つです。著者に対して、いい本をありがとうございますと、お礼を言おうとして奥付を見ると、著者は私と同じ団塊世代でした。引き続きの健筆を期待します。
(2017年8月刊。880円+税)

2017年12月 2日

スカートをはかなきゃダメですか?

(霧山昴)
著者 名取 寛人 、 出版  理論社

形は女性だけど、心は男性。元トロカデロのバレエ団ダンサーになった人が女性から男性に変わる人生をたどっています。
小学生のときから女の子であることを断固として拒否して大きくなってきたというのですから、すごいですね。スカートの代わりにジャージ姿で通しています。着物姿なんて、とんでもありません。でも、生理があるようになるのでした・・・。
「世界的に有名な男性だけのバレエ団で活躍した唯一の日本人。名取寛人が語る、女として生まれて、男になるまで、そして夢のかなえかた・・・」
小学生のころ。「男の子らしいね」と言われることがしたかったかというと、そういうわけではない。ぼくは、ただぼくなだけで、「女の子だから」という言葉には違和感しかなかった。
それでも、著者は恵まれていたようです。母親(父親は離婚して、いません)は、いつでも、どんなときでも著者の味方になって、著者を安心させてくれました。偉いですね、この母親は・・・。そして、友人も教師も著者も変な扱いはしなかったようです。
高校では器械体操でがんばります。見かけは女性でも心は男性ですから、当然、女性を好きになります。でも、恋の告白はうまくいきません。
そして、男装した女性が接客するバーで働くようになります。1ヶ月たつと、ナンバーワンになったのでした。そして次はショーパブの世界へ。ここでもすごい人気。プレゼントしようという人が行列をつくって、30分も並んでいたといいます。ところが、4年たって、このままでいいのかと疑問を感じて、29歳のときアメリカはニューヨークへ行くのです。その前に胸を除去する手術を受けています。
ニューヨークではダンスのレッスンを受けていたのですが、ある日、バレエのレッスンを受けるようになります。そして教師に恵まれてトロカデロのオーディションを受けて合格。
著者は高校まで器械体操をしていましたが、その経験はバレエには生かせないといいます。
器械体操はスポーツで、バレエは芸術。筋肉をつかい、力を入れて、手や脚をまっすぐに伸ばすのはバレエではない。ジャンプするとき、器械体操は筋肉で跳ぶが、バレエは身体のバネをつかって跳ぶ。器械体操とちがって、バレエは身体の力を抜くことが重要なのだ。
この違いって、門外漢の私にはまったくピンと来ませんでした。
著者は、31歳のとき、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団に入団した。日本人として初めてだった。トロカデロにとって、日本はビッグマーケットになっている。著者は8年間、トロカデロで出演し、38歳で日本に帰国した。
その前に性別適合手術を受け、その結果として戸籍を男性に変更し、パスポートの性別も男性にした。
身と心が異なる人がこんなに多いのかと改めて驚き、かつ心配になりました。現代日本人がますますアメリカのように偏狭となって寛容の精神を失っている状況では、LGBTの存在が広く認められるのは容易なことではないように思われます。その意味で、本書が「フツー」の日本人の意識を根本的に変えることにつながることを心願います。ご一読ください。
(2017年8月刊。1300円+税)

2017年11月27日

男が痴漢になる理由

(霧山昴)
著者 斉藤 章佳 、 出版  イースト・プレス

日本で初の「痴漢」について専門的に書かれた本。なるほど、初めてというか、改めて痴漢とは何者かを認識することが出来ました。
痴漢とは学習された行動。なので、その行為は、新たな学習や治療教育で止めることができる。
痴漢行為とは、手など身体の一部を用いて、対象者の衣服の上や身体に直接、かつ意図的に接触する、または密着して執拗に押し付ける行為のこと。
平成28年の1年間に、東京で、強姦は140件、強制わいせつは800件、痴漢は1800件が発生した。
世界的にみて、公共交通機関で日常的に、これだけの数の性暴力が頻発している国は珍しい。これは満員電車が多いということと、国としての対策がとられていないことによる。
日本では痴漢による被害が軽視され、痴漢が野放しになっている。
痴漢をしているのは、四大卒で会社勤めをしている、働きざかりの既婚者男性である。つまり、どこにでもいる、普通すぎるほど普通の男性が痴漢をしている。
何らかの劣等感を抱いていたり、自己肯定感が低かったり、人間関係に対して不器用な人が痴漢をしている。
性暴力の加害者には、加害したことを忘れるという特徴がある。
依存症において「治る」とは言いにくい。回復はする。しかし、完治は困難というが現実。痴漢は行為をやめるだけでなく、男尊女卑的な思考パターンを見直し、女性観や性に対するとらえ方が変わらないかぎり、真に回復したとは言えない。
痴漢は、男性優位社会の産物。常に人との関係で優位性を保てていないと不安定になるパーソナリティーの持ち主が痴漢になる。性犯罪をする人は、心のうちに歪みを隠しもっている。この歪みは、自分ではなかなか気づかないし、まして修正するのは、とても困難。
痴漢は、女性を自分と対等な存在とは見ていない。
性風俗店を利用することが痴漢行為の抑止とはならない。
痴漢行為にはスリルとリスクがともなう。捕まるかもしれないというリスクが高いほどスリルを感じ、達成したら測り知れないほどの興奮に包まれる。そして、それはさらなるリスクを背負って痴漢することへの渇望になる。
痴漢は捕まらないための努力をしている。そのために人生のすべてを捧げている。しかし、最大の努力はターゲット選びにある。派手で勝ち気そうで、頭がよくて仕事ができそうな女性は敬遠する。気が弱そう、おとなしそうという女性をターゲットとする。
痴漢同士がネットで競って自慢しあっている。
痴漢と盗撮は、再犯率がきわめて高い。
謝罪の手紙は意味がない。反省を強いて、その責任を追及すると、むしろ再犯率は上がる。痴漢にとって、反省は現実逃避でしかない。生き方を変えることしかない。グループミーティングの場で本人に気づいてもらう。
痴漢からの脱出・人間性回復の方法まで論じていて、とても勉強になりました。
(2017年8月刊。1400円+税)
天神の映画館でイギリス・ポーランド合作映画「ゴッホ最期の手紙」をみました。驚きました。ゴッホの絵が動くのです。実写アニメって、こういうのを言うのでしょうか・・・。
私はアルルの町に行ったことがあります。「星降る夜」の絵が描かれた場所に立ち、そこで泊まって飲食しました。
ともかく、ゴッホの描いた絵が動き出すありさまは圧巻です。ゴッホの絵に関心のある人には必須の映画として、強くおすすめします。私が行ったとき、満席に近い状態でした。
ゴッホの死に謎があるらしいことも分かりましたが、なんといってもゴッホの絵が動くのに圧倒されます。20人からの画家が協力したとのことで、そのなかには日本人女性画家も含まれています。いい映画は人を感動させてくれますね・・・。

2017年11月25日

アラ還とは面白きことと見つけたり

(霧山昴)
著者 武田 鉄矢 、 出版  小学館文庫

著者は私と同じ団塊世代です(私のほうが1年だけ年長)。
人は折り返さなければならない。人生に「折り返し」の赤標(ロードコーン)を立てるのは、力の限界を決めてしまうことではない。人生に込められたもうひとつの意味を感受するには、赤標を回り、来た道を帰らなければならないのだ。
著者は48歳で赤標を置いたといいます。私は、そのころ、そんなことを考えたこともありません。著者は2011年10月に入信して心臓の手術を受けています。死について学び始めたといいます。
著者が結婚したとき、妻となった女性はまだ21歳。それなのに、いつかこの人のおしめを替える日が来る。それが私の役目だと考えたといいます。信じられません。21歳で、そんな先のことを考えるなんて・・・。私は、20歳のころ60歳になった自分を想像したこともありません。
結婚とは、できそうにないことを無理に約束するところに本質がある。
ええっ、こんな本質的な定義があるって、本当でしょうか・・・。
女は終わりに向かって、男は始まりに向かって、それぞれ歩き出す儀式が結婚なのだ。もし結婚なくば、女は終わりなき少女のまま死なねばならず、男は始まりなき少年のまま死ぬことになる。その死には老いがないので、想像できないほどの苦痛を伴うだろう。
いやはや、私にとって結婚できて良かったとしか言いようがありません。生涯未婚の男女が今の日本では2割前後にまで増えているそうです。では、この人たちはどうなりますか・・・。
著者の家庭内の葛藤が生々しく描かれていて驚きました。酒乱の父と成績の良い兄との激しい対立とケンカが絶えず、仲に立っておろおろする母親・・・。大変だったようです。
著者は「母に捧げるバラード」でミリオンセラーとなって世に出ましたが、それまでは苦節が続いていたようです。映画「幸せの黄色いハンカチ」に出演して、一挙に役者としても注目されました。そして、「金八先生」です。実は、私はテレビを見ませんので、一回も見たことはありません。大学では教員養成課程にいて歌手・役者になったわけですが、教師役を長く演じて、考えるところが大きかったとのことです。
心臓手術を受けた状況が紹介されていますが、見事な文章です。情景描写が細かく、患者心理の変化も手にとるように分かります。たいしたものです。
そして、「母に捧げるバラード」を劇にしたときの台本も著者が考えたというのです。すごいですね。なにしろ、母親役を息子である著者がやるというのですから、発想が奇抜です。私は劇も見ていませんが、爆発的な人気を呼んだようですね。
大学の同窓会の話、そして一緒に勉強していた女性の話は、泣かせます。著者が少しばかりイラッとしたというのも理解できますが、本人は病気で先が長くないと知っていたのでしょうね。許せる話です。
著者の文才に改めて目を見開かされる文庫本でした。
(2017年10月刊。570円+税)

2017年11月20日

アインシュタイン


(霧山昴)
著者 新堂 進 、 出版  サイエンス・アイ新書

天才アインシュタインについて書かれた本は前にも読んだと思いますが、この本でまた新しい発見がありました。
天才でありながらアインシュタインの実像は、むしろひょうきんで、ユーモラスなオッサンだったようです。その証拠が、例の有名な舌(ベロ)を出た写真です。このとき、カメラマンから笑って下さいと言われて、ついアインシュタインは舌を出したとのこと。カメラマンが怒られるかと心配したら、本人も気に入った写真だったとのこと。
アインシュタインは日本にもやって来ています。日本人に対しては高い評価を与えていますが、果たして現代日本人についても、あてはまるでしょうか・・・。
「私が会ったなかで一番好きなのは日本人です。彼らは知的で、控え目で、思いやりにあふれています」
アインシュタインはノーベル賞をもらっていますが、ノーベル賞受賞を決める側に反ユダヤ主義者がいて難航したとのこと。アインシュタインは貧しいユダヤ人の子どもだったのでした。
アインシュタインの遺体は亡くなったその日のうちに火葬され、遺灰は近くの川に流された。ところが、解剖した医師が無断で脳を摘出していた。ホルマリン漬けにされ、今ではプリンストン大学に保存されている。
クルマのカーナビにも、アインシュタインの相対性理論の効果が盛り込まれているというのを知りました。誤差を出さないようにするために必要なのだそうです。
アインシュタインの子どもたちは、親を恨んでいたとのこと。この点は、チャップリンの子どもたちとは違うようです。アインシュタインが離婚したことから、前妻の子たちが母を捨てた父を恨んだということのようです。
それにしても、光が波であり粒子であるというのは、何回きいても、もう一つぴんときません。光には質量はない。質量ゼロだからこそ、秒速30万キロで飛べる。逆に秒速30万キロでしか飛ぶことができない。止まったり、スピードを変えたりはできないというのは質量ゼロの存在の宿命なのだ。
アインシュタインの「2%演説」というのが有名だということも初めて知りました。アインシュタインは平和主義者であり、戦争を憎んでいました
「国民の2%が戦争に反対すれば、その国は戦争を起こせない。なぜなら2%をこえると刑務所がパンクするからだ。2%は刑務所の収容人数の上限で、これをこえると収容できない。だから国は、2%の国民の意見を無視するわけにはいかない」
それにしても16歳のときのアインシュタインの疑問というのは信じられません。さすが天才です。鏡の前に立って、次のように自問自答したというのです。
「光を背にして鏡をのぞくと、そこに光が映る。では、そのまま光のスピードで走ったら、光は鏡に映るだろうか?」
光速の絶対不変の原理がモノを言う世界です。やはり天才とは恐るべき存在ですね・・・。
(2017年9月刊。1000円+税)

2017年11月18日

食でたどるニッポンの記憶

(霧山昴)
著者 小泉 武夫 、 出版  東京堂出版

故郷の懐かしい味が次々に紹介されていきます。さすがは味覚人飛行物体と称する著者ならではの本です。東京農大の醸造学科に入学し、調理法をきわめたのです。東京農大を首席で卒業し、学長賞までもらったそうですから、そのころから味覚と体力は抜群だったのですね・・・。
中学3年生のとき、山からとってきたカタツムリを山ブドウの葉で養殖し、フランス料理のエスカルゴとして食べたそうです。すごいですよね、これって。私も昔パリに初めて行ったとき、一番にシテ島の大衆向けレストランでエスカルゴ料理を食べました。美味しかったですよ・・・。
著者は中学生のとき、「歩く食糧事務所」と呼ばれていた。カバンのなかに教科書やノートは入ってなくても、マヨネーズは必ず入っていた。高校生のときには「口門(こうもん)様」と呼ばれた。あまりにもよく食べたから。そして、大学生になると、「走る酒壺(さかつぼ)」と呼ばれた。成人してからは、おなかを壊さないので「鋼(はがね)の胃袋」とか、なんでも食べるので「冒険する舌」と呼ばれた。
今、特許庁に商標登録しているのが、「味覚人飛行物体」と「発酵仮面」。
いやはや、美味しいものを少しずつ美味しくいただく、これが私の理想です。
これからも著者の食べもの巡礼に大いに期待します。
(2017年6月刊。1500円+税)

2017年11月17日

3男1女、東京理Ⅲ合格、百発百中

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  幻冬舎

著者の本を読むたびに思うことは、家庭が楽しいと子どもは伸び伸び育つこと、勉強も楽しいものにするコツがあるということです。なにより著者の自信にみちた笑顔が素敵です。こんな母親のもとで、一緒に楽しく勉強できたら、東大理Ⅲだってラクラク(!)受かるようになるのでしょうね。
著者の子育て勉強法はきわめて合理的です。子どもたちがいかにして楽しく勉強していけるか徹底して考え抜かれていますので、子どもが東大理Ⅲを目ざさなくても、大いに参考になるところがある「絶対やるべき勉強法」に満ち充ちています。
楽しく勉強するための道具と工夫として、カラー写真でランチボックスや赤ボールペン、特製ノート、プラスチックケース、カラーノートなどが紹介されています。書棚だって、色分けされていますし、教科別、ジャンル別になっていますので、すぐに欲しいものが取り出せます。
4人目の子どもさんは女の子らしく見た目にこだわるのですね。ですから、いろいろなデザインや形、色のランチボックスを買いそろえ、なんと、中学・高校を通して50個以上は買ったといいます。そして、前日の夕飯の残りものを弁当に入れることはしなかったというのです。いやはや、たいしたものです。
著者の子育ての最終目標は、子どもたちが大人になって振り返ったとき、実家での両親や兄弟たちとの生活は楽しかったなあと思ってもらえること。これは大賛成ですね。私自身が達成できたかどうか、不安がありますが、それほど大きな失敗はしていないのではないかと考えています・・。
子どもに、「さっさとやりなさい」とか「きちんとやりなさい」と言ってもダメ。これでは具体性がないから効果がない。何を、いつ、どのようにするかを明確にして、子どもがやりやすいように仕組みをつくってはじめて、言葉が効力を発揮する。
父親は家庭では、「忙しい」とか「疲れている」と言ってはいけない。
勉強は楽しく教え、楽しく習いたいもの。
受け身でなく、主体的に勉強するのが成績を上げる唯一のコツ。
私は、著者の配偶者から贈呈いただきましたが、245頁、1300円の本です。買って読んで損は「絶対に」しません。一読をおすすめします。
(2017年10月刊。1300円+税)

2017年11月15日

子ども受容のすすめ

(霧山昴)
著者 関根 正明 、 出版  学陽書房

ながく中学校の教師として生徒に接してきた体験にもとづくものだけに説得力があります。
こちらの気持ちをそのまま受け取ってくれること。それを受容という。器量の大きな人は、とにかくはじめに受容してくれる。こちらの話を最後まで聞いてくれ、その後、自分の感じたことを静かに話す。こちらが話している途中で、話の腰を折ったりせず、はじめは、ともかく受容してくれる。
上手に付きあうことの根本が、この相手を受容することにある。
人間とは不思議な存在である。自分のことでありながら、自分のことがまるで分からない。
人間の成長する過程で、よくやった、えらい、ほう、なかなかうまいね、たいしたものだ、よくやるもんだ、感心だなあ、アタマいいねえ、うまいものだ、そんな言葉を多くかけてもらえた人ほど幸福だ。反対に、なんだ、そのやり方は、何、やってるんだ、へただなあ、もう少しマトモに出来ないのか、何だ、こりゃあ、さっぱり分からんよ、なんて言葉ばかり与えられて育った人は、マイナスの自己概念、潜在意識、潜在観念を植えつけられるので、不幸だ。
受容は、人の心を安定させる。自分の心が安定しているから、相手を受容できる。許容に比べて、受容は大きい。受容が全面的なのに対して、許容は部分的。
子どもは、幼いときには、それなりに親の期待に応えようとする。自分が無理をしても親の期待にそって親を喜ばせようとする。そのとき、子どもは心理的に無理している。しかし、子ども本人は無理しているとは考えていない。
親の情緒不安、穏やかな表情は、子どもにとっての安定感となる。逆に、親の情緒不安定、険しい表情は、子どもにとって落ち着いていられないものになる。
人は、一般に、広く深く世の中のことを知り、いろいろな体験をしていくうちに角がとれ、丸みができてくる。自己受容して自分が情緒的に安定するうえでも重要なこと。そのためには、多くの分野の本を読み、音楽、美術、芸能に親しむこと、多くの人々とつきあう必要がある。
人間は、所属している集団のなかで自分を何らかの形で表現したいという欲求をもっている。これを自己表出欲求という。そして、その集団に自己の存在を認めてもらいたいという欲求をもっている。これを社会的承認欲求という。この二つの基本的欲求が充足されて人間は情緒的に安定する。
実は、この本は25年以上も前の本なのです。書棚の奥に眠っていた積ん読く本をタイトルに惹かれて読んでみたのでした。読んで良かったと思いました。
(1999年3月刊。1359円+税)

2017年11月13日

みんなが笑顔になる認知症の話

(霧山昴)
著者 竹田 伸也 、 出版  遠見書房

ガンという病気も身近な存在ですが、同じように認知症も恐ろしく身近にある病気ですよね。
現在、65歳以上の人のうち、7人に1人、500万人が認知症。これからますます増え、2025年には65歳以上の人の5人に1人が認知症になると予想されている。認知症の一番のリスクは、「年をとること」にある。認知症は、脳の老化がもとで起こる脳の病気。
大脳が壊れてうまく働かなくなり、日常生活に支障が出てしまう病気。
脳の奥深くにある大脳基底核や小脳は認知症によって障害を受けにくい場所なので、動作として覚えた記憶は残る。
認知症でもっとも多いのは、アルツハイマー型認知症。
ヒントを与えられると思い出せることは「再認」といい、これが出来ないのが病的なモノ忘れ。
認知症になると、それまで当たり前のように出来ていたことが、当たり前でなくなる。
認知症は死因となりうる病気。
認知症は、長い時間をかけて、少しずつ症状があらわれる。認知症と診断されたあとも、しばらくのあいだ一人暮らしをしている人は多い。
認知症は早目に見つけることができると、薬によって進行を遅らせることができる。
認知症の予防は、認知症になりにくい生活習慣を送ることが大切。ストレスをためるのは認知症にとって良くない。
認知症の人への対応の基本は「安心」を届けること。
相手が怒り出したら、ほとぼりが冷めるまで、しばらく相手から離れていること。まずは相手の訴えをよく聴く。そして否定も肯定もしない対応をする。相手の尊厳を支えるコミュニケーションをする。
読んでるとチョッピリ安心も出来る、認知症についての本です。
(2016年11月刊。1400円+税)

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