弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2017年1月30日

熊に出会った、襲われた

(霧山昴)
著者 つり人社書籍編集部  、 出版  つり人社

山でツキノワグマに出会った人たちの体験談と、その対策が刻明に語られていて、勉強になります。
山でクマに会ったら、うしろ姿を見せて逃げ出してはいけないのですね。頭では理解できますが、果たして、現場で実行できるでしょうか・・・。じっと、熊と、逃げずにその場でにらめっこするなんて、とても勇気がいりますよね。
クマは2年に1回、2頭ずつ子どもを産む。1月20日から2月10日までに一斉に生まれる。
クマが人里にあらわれるようになったのは、過疎化や農業の衰えとともに人の営みが減っていったため、以前はクマにとって居心地の悪かったところが、居心地のいい場所になったことによる。放置された畑があり、栗や柿の木など、実がそのまま残されているので、クマがやって来る。
渓流釣りは、クマと出会いやすい環境にある。山菜とりや竹の子とりもクマの食べ物をとりに行っているから出会う確率は高いし、視界も悪いので不意打ちになりやすい。
鈴をつけるとか、人工的な音をたてて、人が来ていることをクマに知らせる必要がある。
日本でクマと出会って死亡する人は、毎年0人から数人。ハチに刺されて死ぬ人は20人ほど。人間に殺される人は数百人。人に殺されるツキノワグマは1000頭から3000頭。
真新しい足跡や糞があったら、クマが近くに潜んでいる可能性がある。すぐにその場を立ち去るべし。
クマと出会ったら、背を向けて逃げてはならない。背を向けずに後ずさりして、クマとの距離をあけていく。
クマ撃退スプレーは1万5千円もするけれど有効。クマ鈴、山刀、爆竹も必携。クマ鈴は、川の近くでは水音にかき消されてしまう。そこでホイッスルも必要。
クマと人間の共存は大切なことだと思いますが、なかなか勇気もいるのですね・・・。
(2016年12月刊。1111円+税)

2017年1月23日

野生動物カメラマン

(霧山昴)
著者 岩合 光昭、 出版  集英社新書ヴィジュアル版

ライオンとハイエナ。どちらが強いか・・・。2頭のハイエナを12頭のライオンが襲いかかったとき、ハイエナはライオンに殺されてしまった。
5頭のハイエナがエサを食べているところに1頭のライオンがやってきたら、ハイエナに追い払われてしまった。
獲物の横取りが得意なのは、ハイエナよりも、むしろライオンのほう。ライオンの狩りが成功するのは10回に1回ほど。決して狩り名人とは言えない。
ハイエナは獲物の肉や内臓だけでなく、骨もかみ砕いて食べる。胃腸は大丈夫なので消化ができ、カルシウムだけが残るので、糞は白い。
ライオンは軟らかくておいしい肉を食べるから糞は軟らかく、非常に臭い。
ザトウクジラは、暖かい海で子どもを産んで育てる。子育てのあいだ、親(メス)は何も食べない。南の暖かい海にはクジラの食べるものは何もない。
なぜクジラは海面を出てジャンプするのか、その理由は分かっていない。
ペンギンのヒナは夏が終わって産毛がすっかり落ちてしまうまで、海で泳げない。産毛が残っていると、海水がしみ込んでしまうからだ。
地獄谷のサルにとっては、人間にはちょっと熱めの42度くらいが一番心地よいようだ。
野生動物をよく見ていると、彼らもまたこちらをよく見ていることに気がつく。そして、あいつは危害を加えるものではないとして、警戒心を解いてくれる。そうすると、ライオンが狩りを見せてくれることもある。ええっ、それでも怖いですよね。
いわごうさんの写真は、どれも動物が生きています。生命の躍動感がありますよね。
(2015年12月刊。1200円+税)
フランス語の口頭試問を受けました。
3分前にペーパーが渡されます。一問目は天皇の生前退位をどう考えるかというものです。これは、日本語でも難しい問題ですからフランス語で話せる自信はなく、すぐにパス。二問目は子どもの虐待が日本で増えていることをどう考えるかというものでした。暴力とネグレクトの2種類あると話したのはいいのですが、親自身がその親から愛情たっぷりに育てられていないことも原因だと言いたかったのですが、フランス語になりませんでした。トホホ・・・。
3分間スピーチには、いつも苦労しています。

2017年1月21日

ペンギンの楽園

(霧山昴)
著者 水口 博也 、 出版  山と渓谷社

 パンダも大好きですけど、ペンギンもまたいいですよね。
 旭山動物園の冬のペンギンの大行進をぜひ間近に見てみたいと思います。
 ペンギンと言えば、あのコウテイペンギンの子育てのすさまじさには泣けますよね。3ヶ月も飲まず食わずで、足の上でヒナを育てる。そして、極寒の地で、ブリザードを浴びながら身を寄せ集まって耐え忍んでいる光景なんて、まったく感動するしかありません。
海から帰ってきた親は、大勢のヒナ集団の中から、自分のヒナを声で見つけ出して、エサを与える。親が事故にあったら、ヒナは餓死するしかないのですね・・・。
 ジェンツーペンギンが大勢そろったところで、一斉に氷上に飛びあがるのは、氷縁に恐ろしいヒョウアザラシが潜んでいるから。危険地帯をみんなで一気に乗り越えようというのだ。
 アデリーペンギンが個体を減らすなかで、ジェンツーペンギンは圧倒的に個体を増やしている。その原因は、温暖化。雪による影響をアデリ―ペンギンは受けやすく、しかも、前シーズンに営巣した場所にアデリ―ペンギンはこだれるので、子育てがむずかしくなっている。
 ジェンツーペンギンは、場所のこだわりが少なく、エサにも融通性がある。
 ペンギン尽くしの楽しい写真集です。とても行き届いた解説があり、勉強になりました。

(2016年8月刊。1800円+税)

2017年1月16日

進化

(霧山昴)
著者 カール・ジンマー 、 出版  岩波書店

生物の進化に関する面白い興味深い話が盛りだくさんの大型本です。
ダーウィン・フィンチの写真があります。ガラパゴス諸島に生息するフィンチのくちばしが、こんなに異なっていることに驚かされます。ダーウィンは、これによってすべての生物は進化したのだと結論づけたのです。
人間が音を聞くのに使っている骨は、かつて人間の祖先がものをかむのに使っていた骨である。
化石から、鳥がどのようにして恐竜から進化してきたのかが分かる。羽は、恐竜の子孫たちが空を飛べるようになるはるか以前に、恐竜のからだに進化し、単純なトゲのようなものから、ふわふわした羽毛になり、最後には飛行中の動物を支えられるようになるまで、徐々に進化してきた。
羽毛をつくっている遺伝子は、もともとウロコをつくっていた。その後、皮膚の一部は、羽毛をつくるために使われるようになった。
光が眼に入ると、オプシンというタンパク質にぶつかる。オプシンは光受容細胞の表面にあり、それが光子をとらえると、一連の化学反応の引き金を引いて、光受容器が脳に向かって電気信号を送ることになる。
初期の眼は、おそらく明るいか暗いかが分かるだけの、実に単純な眼点にすぎなかった。ずっとあとになって、いくつかの動物に、光の焦点を合わせて像が結べる球状の眼が進化した。像が結べる眼にとって決定的に重要だったのは、光の焦点を合わせるレンズの進化だった。レンズは、クリスタリンとよばれる驚くべき分子でできているが、クリスタリンは、からだのなかでもっとも特殊化したタンパク質のひとつである。透明だが、入ってくる光線を曲げ、網膜に像が結ばれるようにする。クリスタリンは、また身体のなかでもっとも安定なタンパク質であり、その構造は何十年と変化しない。ちなみに、白内障は、老年期にクリスタリンが固まることで生じる。
古生物学者は、かつて存在したすべての種の99%が、この地球上から絶滅したと推定している。今日存在している昆虫のすべての料の50%が2億5000万年前にも存在していた。2億5000万年前に存在した四足(しそく)類のどのひとつの料も、現在は存在しない。
植物を食べる能力は、昆虫に大量の食料を提供する。植物を食べることが昆虫の多様性を爆発的に増やした。
動物はカンブリア紀に突然この地球上に降ってわいたのではない。進化してきたのだ。
鳥のメスは、単純なさえずりのオスよりも、複雑なさえずりを歌うオスを好む。カエルのメスは、夜間に小さな声で鳴くオスよりも、大きな声で鳴くオスを好む。
つがいを形成する鳥たちの多くは、見た目ほどには互いに対して忠実ではない。つがいを作っている鳥たちの巣にいるヒナのDNAを分析すると、しばしば、そのうちのかなりが、母親のつがいのDNAでないことが判明している。母親は、つがい相手以外のオスと交尾しているのであり、つがい相手は一生けん命そのヒナを育てている。
カモなどの水鳥の交尾の3分の1は強制交尾だ。ところが、望まれないオスが実際にヒナの父親になるのは、わずか3%でしかない。メスは、体内で精子をコントロールし、侵入者の精子よりもつがい相手の精子を優先させている。
夜の照明と飛行機による長時間の飛行は、ともにガンのリスクを上昇させる、ホルモン周期を撹乱させるからだろう。
学習した頭の良いハエは、15%も寿命が短くなる。より長く生存するのは愚かなハエのほうだ。うひゃあ、そ、そうなんですか・・・。
(2012年5月刊。5600円+税)

2016年12月 5日

ライオンは、とてつもなく不味い

(霧山昴)
著者 山形 豪 、 出版  集英社新書ヴィジュアル版

アフリカで育った日本人がいるのですね。そんな野生児は、現代日本社会では住みにくいと感じるのも当然です。その野生児は、大人になってフリーのカメラマンとして、主としてアフリカやインドで野生動物の撮影をしています。
被写体となった野生動物の表情が、みな生き生きとしています。カメラマンに向かって突進寸前のものまでいて、ド迫力満点です。
タイトルは、まさかと思いました。ライオンの肉を食べるなんて、そんなことはありえない。何かのたとえだろうと思っていると、なんと、本当にライオンの干し肉を食べたというのです。
家畜を襲ったライオンは害獣として駆除してよいという法律があり、駆除されたライオンは殺された牛の持ち主に所有権がある。毛皮は売って、肉は干して食用にする。味付けをしていないただの干し肉だったせいもあるかもしれないが、今まで食べたどの肉よりもマズかった。とにかく生臭いうえに、猛烈に筋っぽかった。
人間にとっては牛のような草食動物のほうが美味しいのですよね。肉食動物の肉は一般に人間の口にはあわないようです。
ライオンから人間が襲われる事故は決して多くはない。それは、そもそもライオンは総数4万頭以下と個体数が決して多くはないから。人と接触し、事故が起きる確率が低い。
これに対して、カバによる事故は多い。カバの気性が荒いというだけでなく、水辺を好むカバと人間とは接触する機会が多いからだ。
現実世界の「草食系」動物は、決して優しくもないし、おっとりもしていない猛獣たちなのである。
テントの周囲にライオンやハイエナがうろついていても、テントの中にいて寝込みを襲われたという話は聞いたことがない。テントを破って中身を食おうという気にはならないのだ。
しかし、テントのフラップを開け放して寝ていた人間がハイエナに食べられたというケースはある。
アフリカで食べられないように注意しなくてはいけないのは、ナイルワニ。カバの次に多くの人の命を奪う動物は、ワニである。
しかし、もっとも恐ろしいのは、なんといっても、人間である。他の動物にはない、悪意や物欲というものを持っている。しかも、刃物や銃をもっているので、危険きわまりない。
写真と文章で、しっかりアフリカの野生動物たちの生態を堪能できる新書です。東アフリカの野生動物の写真といえば、小倉寛太郎氏を思い出しました。『沈まぬ太陽』のモデルとなった人物です。小倉氏は大阪の石川元也弁護士の親友でしたので、その関係で一度だけ挨拶しました。大人の風格を感じました。
(2016年8月刊。1300円+税)

2016年11月26日

クモの糸でバイオリン

(霧山昴)
著者 大﨑 茂芳 、 出版  岩波書店

すごい話です。庭にいる普通のクモから糸を取り出し、それをより集めてバイオリンの弦にして音楽を奏でたというのです。
クモの糸だって体重100キロの人を吊り上げることが出来るのです。その話は、前に、著者の本で紹介しました。ところが、今度は、クモの糸が強いというだけではなくて、バイオリンの弦にすると柔らかくて深い音色を出せるというのです。
問題なのは、そのクモの糸をどうやって集めるのか、ということです。クモがカイコのように簡単に糸を吐き出してくれるとは思えません。その涙ぐましい努力の過程が、この本で紹介されています。
いったい、著者は何を職業としているのでしょうか・・・。医学部の教授ですが、医師ではなくて、生体高分子学を専門としています。そんな著者が40年間にわたってクモの糸の性質を調べてきた成果が結実したのです。著者は、私より少しだけ年長の団塊世代です。心から尊敬します。
クモは世界に4万種いて、日本には1500種いる。
日本のクモの半数は、獲物を探し歩く徘徊性のクモ。残る半数が網を張って獲物を獲る造網性のクモ。
クモの糸の縦糸は巣の骨格をつくり、粘着性はない。粘着性があるのは、横糸だけ。横糸には、粘着球が等間隔にくっついている。
クモから糸を取り出すには、クモが元気な状態でないといけない。ところが、クモはヒトの足元を見る。優しく扱っても、それが過ぎるとなめられてしまう。厳しすぎると、へそを曲げて、言うことをきかない。
クモの糸の第一の特徴は、非常に柔らかく、曲げやすいこと。
クモの糸を弦とするバイオリンで、「荒城の月」や、「アメージンググレース」を著者がひいている様子がネットで公開されているそうです。いやはや、たいしたものです。あくことなくクモの糸に挑戦して立派な成果をあげられたことに心から敬意を表します。
(2016年10月刊。1200円+税)

2016年10月17日

外来種は本当に悪者か?

(霧山昴)
著者  フレッド・ピアス 、 出版  草思社

何が外来種なのか、そう簡単な話ではないということを、この本を読んで知りました。
自然はたえず流動しており、不変の生態系など、ほとんど存在しない。どこに生息しようと、そこは仮の宿でしかなく、あらゆる生態系はたえず変化していて、地質学的な偶発現象の犠牲になる生き物も多々ある。
セイヨウミツバチを、ほとんどのアメリカ人は在来種と信じている。しかし、イギリス人が17世紀にアメリカに巣箱を持ち込んだもの。つまり、意外にも外来種なのである。
スノードロップは我が家の庭にも春に咲いてくれます。これがイギリスの花かと思っていると、16世紀にフランスのブルターニュ地方から園芸植物として入ってきて、すぐに野生化したものなのだ。
熱帯には手つかずの自然がそのまま残っているというのは神話でしかない。実は、どんなに深い密林にも、数千年前から人間の手が入っていた。手つかずの自然というより、放棄された農園なのだ。昔、熱帯雨林でも、偉大な文明が繁栄していた。
自然はぜったいに後戻りしない。前進するのみ。たえず更新される自然に、外来種はいち早く乗り込み、定着する。
外来種の侵入は人間にとって不都合なこともあるが、自然はそうやって再野生化を進行させている。それが、ニュー・ワイルドということなのだ。
私たちの素朴な思い込みは、案外まちがっているということのようです。
たとえば、ひところセイタカアワダチソウが危険な外来種として日本全国で話題となり、躍起になって、その絶滅を目ざしていましたよね。ところが、今では、ほそぼそと生き残るだけで、かつての勢いはどこにも認められません。それは、ひところの絶滅運動の成果ではなく、自滅システムが作用したからのようです。
先日、わが家の庭に固くなった古パンをまいていると、真っ先に見つけてやってきたカササギを三羽の黒光りのする太いカラスが追い払ってしまいました。このカササギは朝鮮半島からの外来種とされていますよね。ところが、ヨーロッパに行くと、列車の車窓から田んぼにカササギを普通によく見かけます。自然って、偶然と必然が交互に起きるものでもあるのですね・・・。
(2016年8月刊。1800円+税)

2016年8月29日

虫のすみか

(霧山昴)
著者  小松 貴 、 出版  ペレ出版

 私たちの身のまわりには、庭にも道ばたにも土の中にも、虫たちの不思議な巣であふれているのですね。そのことを満載した写真によって実感できる、楽しい虫の本です。
アリジゴクの主(ぬし)は、ウスバカゲロウの幼虫だったんですね。アリジゴクは、獲物をつかまえると食べるのではなくて、巨大なキバを獲物の体内に突き刺して、中身を吸い取ってしまう。そして、アリジゴクは糞をしない。成虫(ウスバカゲロウ)になったとき、まとめて大きな糞をする。ええっ、そんなことが可能なんですか・・・。
ハチやアリ、シロアリの多くは集団で分業して社会生活を送る。まるで人間のように洗練した高度な社会をもっている。だから、ある高名の昆虫学者が「利口ムシ」だと評した。それに対して、一人で好き勝手に食べて寝て暮らすだけの虫は「馬鹿ムシ」だと評する。しかし、著者は逆だと主張します。
群れなければ何ひとつまともな生活が出来ず、ひとりにされたら惨めに野垂れ死にする社会性昆虫こそ「馬鹿ムシ」であり、誰に教わるわけでもなく、たった一人で精巧な巣をつくり、毒針で狩りをする狩人蜂こそ至高の「利口ムシ」だと・・・。なるほど、ですね。
ヤマアリは強力な蟻酸をもっている。鳥のなかには、わざとアリ塚の上に降り立って暴れ、アリの蟻酸攻撃を受けることで、羽についた寄生虫を退治する「アリ浴び」の習性をもつものがいる。人間も、戦争中、服を洗うことが出来ないとき、ノミやシラミが湧いて困ったら、服をアリ塚に突っ込んで消毒していた。
うひゃあ、そんなこと知りませんでした。そんなことも出来るんですね・・・。
軍隊アリは、ジャングルにはなくてはならない存在である。軍隊アリは、ジャングルの空間にいちばん多く優先して生息する生物を一掃してしまうので、その区画内に「空き」が生まれる。そのことによって、森の生物の種の多様性をつくり出している。なるほど、そういうこともあるんですね。
東南アジアの国にはツムギアリの「アリの子」を食用にしているところがある。アリの幼虫をスープに混ぜたり、お米と一緒に炊いて食べる。かなり酸味の利いた味。まずいというのではないが、決して美味しくもない。そして、ツムギアリの巣を落として、その幼虫を鳥の餌にもしている。
攻撃的なツムギアリは、しばしば害虫駆除のために活用される。
たくさんのカラー写真とともに丁寧に解説されているので、素人にもよく分かります。
(2016年6月刊。1900円+税)

2016年8月22日

なぜ蚊は人を襲うのか

(霧山昴)
著者  嘉糠 洋陸 、 出版  岩波科学ライブラリー

 ガーデニングの天敵こそ蚊です。冬のガーデニングは蚊がいないので、防寒に気をつけるだけですみます。ところが夏は、熱中症対策だけでなく、蚊から身を守るための装備を欠かせません。
蚊が人間の血液を吸いとったとき、そのお返しに残すのは、痒みだけではない。望まないお土産として、感染症の原因を体内に送り込む。
蚊は病原体の有力な媒介者である。マラリア、フィラリア症、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱、そしてブラジル・オリンピックで注目されたジカ熱をもたらす。
蚊は、病原体を充塡した注射器が空を飛んでいるようなもの。
平清盛そして、光源氏はマラリアに襲われた。平安時代は比較的温暖だったことから、マラリアがあたりまえの国土病として存在していた。
著者は研究室で蚊を数万匹の単位で飼育しているとのこと。驚異です。
蚊のオスもメスも、自然界では、花の蜜やアブラムシの排出する甘露をエサとしている。ふだんはそれだけで十分に生きられる。ところが、オスの精子を受け入れたメスは、吸血に対する欲求が高まる。これに対して、処女メスは人間の匂いには全然反応しない。メスの蚊は、卵を少しでもたくさんつくるために、血を必要とする。
蚊は、飛行機に乗って移動する。車輪の格納庫に入り込む。そこはマイナス50度の世界なのだが、蚊は10数時間ほどのフライトなら、その環境下でも生きのびる。
蚊は、人間から遠いところではなるべく最短で標的に向かう。近くなるとジグザグに飛行し、匂いや熱の助けを借りて着地点である肌を探す。
蚊に刺されたくなかったら、明るい色の服を着たほうがよい。
蚊は、血をしこたま吸ってしまうと、それで満足する。血の種類には、まったく無頓着である。
1回の産卵サイクルで生み出す卵の数は、ハマダカラで200個、アカイエカは100~150個。そしてネッタイシマカとチカエイカは100個未満。
蚊についての基礎知識をたっぷりいただきました。
クーラーをつかわない生活をしていますので、蚊取り線香に毎晩お世話になっています。
(2016年17月刊。1200円+税)

2016年7月11日

先生、イソギンチャクが腹痛を起こしています


(霧山昴)
著者  小林 朋道 、 出版  築地書館

 先生!シリーズも、ついに10冊目となりました。すごいです。鳥取環境大学の学生は幸せですよ・・・。コバヤシ先生は相変わらず快走中です。
 でも、私には洞窟探検なんて、とても出来ません。真っ暗な洞窟に何がいるか分かりません。天井にコウモリがたくさんぶら下がっているのを見つけて喜ぶなんて、コバヤシ先生はやっぱり変人でしょう。いえ、その勇気には大いに敬意を表します。でも、コウモリの毛のなかにクモを見つけて、そのクモはどのコウモリ(の毛)を好むのか、なんて実験をするのです。なんだか学者って、正気の沙汰じゃありませんね。いえ、これも尊敬の言葉ですよ・・・。
 さらに、コウモリは、何か悪い病気をもっているかもしれないので、決して素手では触らないというのです。でも、手でつかんではいるのですよね。ええーっ、気色悪い・・・。
 さらに洞窟の奥にハクビシンがいたりします。ヘビなんかが、うじゃうじゃいるなんてことはないのでしょうか。
 コバヤシ先生の実験室では1メートル以上もある大きなアオダイショウを飼っています。ヘビを見たとき、モモンガがどんな反応を示すのかという実験もします。そして、ヘビが逃げたら追いかけて、尻尾をつかまえるのです。いやはや、私は生物学者になんて、とてもなれません。
私も小学生のころには、カエルを手でもって、地面にたたきつけて股をさいて皮をむき、ザリガニ釣りのエサにしていました。カエルのもも肉は絶好のエサなのです。ところが、成人してからは、カエルなんてとても触れません。梅雨になると家の周囲に全身緑色の小さなアマガエルが姿をあらわしますが、ともかく見るだけです。
 海水魚の話そして、犬が罪悪感を感じるのか、など、10冊目のこの本にも興味深い話が盛りだくさんです。なにより、写真がたくさんあるので見ても楽しいのです。
 コバヤシ先生と学生の皆さん、引き続きがんばってくださいね。
(2016年5月刊。1600円+税)


先日うけた仏検(一級)の結果が分かりました。46点でした(150点満点)。自己採点は54点ですから、8ポイントも下まわっています。これは仏作文、書きとりが自己評価以上に悪かったのだと思います。残念です。ちなみに合格点は84点ですので、あと40点も上乗せする必要があります。まだまだ険しい道のりです。くじけず、めげずに引き続きがんばります。

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