弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年7月 1日

金工品から読む古代朝鮮と倭

日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 金 宇大 、 出版  京都大学学術出版会

古墳時代の日本が朝鮮半島の国々と、いかに関係が深かったのか、視覚的にもよく分かる本です。
新羅の耳飾、大刀そして百済の耳飾と大刀は、似ていますが、微妙に違います。
また、朝鮮半島南部には加耶諸国がありました。かつて任那の日本府といわれた地方でしょうか・・・。大加耶の耳飾と刀は、これまたデザインが違います。
そして、倭と言われていた日本です。耳飾には、新羅、百済、そして大加耶のそれぞれの影響が認められます。大刀も同じです。
冠や耳飾、帯金具、装飾、大刀などの金工服飾品が特定個人に威信を認定・付与する「威信財」として流通した。金工品は、各地の政治集団によって盛んに制作され、地方首長との関係構築の媒介品として配布された。
朝鮮半島の諸国にとって、「倭」との関係は、隣国との交渉を有利にすすめるための切り札、一種の抑止力として機能した。
金工品は、きわめて政治的なアイテムとして活用された。制作技術を周辺に拡散させることは、製品の配布主体である中枢勢力にとって、あまりメリットのあることではない。
ほとんど金でつくられる垂飾付耳飾は、素材確保の難度の構造の複雑さからみて、いろいろある金工装飾品のなかでも群を抜いて生産が困難である。にもかかわらず、垂飾付耳飾は、金工品のなかでもっとも盛んに制作され、流通していた。当時の朝鮮半島の人々が、いかに垂飾付耳飾に特別の価値を見出していたかがよく分かる。
現在、金工服飾品が中央の工房で一元的に制作され配布されたとは考えにくいとされている。今では、地方でも金工品が制作されていたと多くの人が考えている。
日本列島で出土する垂飾付耳飾の形態は、実に多種多様である。このことは、古墳時代の中期以降、朝鮮半島の各地から、系譜の異なる耳飾が継続的に流入し続けていたことに起因している。
日本列島で出土する長鎖式耳飾は、大加耶からの舶載品であるとみなすより、大加耶工人と同じ技術系統に属する工人が、大加耶で耳飾制作が始まるのとほぼ同じ時期に、朝鮮半島から渡来していて、その彼らが日本列島で制作したと考えるほうが自然ではないか・・・。
熊本にある有名な江田船山古墳の出土品は、金板圧着技法、環頭部基部の段差という百済の大刀制作技術の特徴を備えていて、百済で制作された搬入品と思われる。
在日三世の著者による画期的な本だと思いました。写真で紹介されている黄金色に輝く耳飾などは、あまりにすごくて、モノも言えません。私も、ぜひ現物をみてみたいです。
(2017年3月刊。4900円+税)

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2017年7月 2日

Suicaが世界を制覇する

社会

(霧山昴)
著者 岩田 昭男 、 出版  朝日新書

私は昔からカードはなるべく持たない、作らない主義なのですが、スイカだけはもたざるをえません。地下鉄もモノレールも、これ一枚でスイスイですので、こんな便利なものはありません。その前は、改札口で切符を買うとき、小銭がなかったりして困ったことが何度もありませた。そして、スイカがあると、コインロッカーも百円玉がなくても利用できるのです。これで、百円玉をもたないときに両替機を探すという手間が不要になりました。エキナカのコンビニでもスイカでちょっとした買い物ができるようになりました(とはいっても私は利用していませんし、したくありません)。
この新書は、日本でガラパゴス的に発達したスイカが世界に飛躍しようとしている状況を実況中継しています。
スイカの発行枚数は、2016年3月末で5704万枚。利用可能な店舗は34万2600店。
こんな無敵のスイカにも、死角があった。なぜか、国際標準と認められなかったから。ところが、スイカがついにアイフォンに搭載されることになった。これで、世の中が変わるのか、どう変わるというのか・・・。
JR山の手線の駅に初めて自動改札機が出現したのは、1990年4月のこと。1997年4月からの実験で、それまでのICカードに内蔵されていた電池をなくすことが試みられた。導線を磁場の中で動かすと導線に電流が流れる電磁誘導の動きを応用し、ICカードに入っているアンテナに電力が発生するようにした。電池を入れる必要がなくなったことから、電池切れの心配がなくなり、カードをより薄く、軽くできるようになった。
ICカードに電子マネーの機能をもたせる。データの容量には、まだまだ容量がある。その空いている部分をつかって買い物に利用できるようにしたらどうか・・・。
自動改札機は、朝夕のピーク時には1分間に60人もの利用客が通過することを前提として設計された。そして、ICカードが財布の中に2枚以上入っていると、カードに内蔵されているアンテナが電力を奪いあい、通信距離が短くなってしまう恐れがある。
ソニーのICカード、フェリカは、処理スピードが2倍も速い。高度なセキュリティ機能をもち、さらにマルチ・アプリケーション機能を備えていた。
スイカと同時にJR各社は「エキナカ」ビジネスを始めた。なにしろ、都内の主要駅は、1日に新宿駅で435万人、池袋駅で345万人、渋谷駅が219万人という利用者数。これだけで、東北6県の全人口985万人をこえる。
スイカ・ショッピングは少額利用が多いので、決済手数料は2~3%ほど。それでも、店もJRもウィンウィンの関係に立つ。
電子マネーは、5兆1436億円を決済している。決済件数も52億件に近い。電子マネーの1件あたりの決済金額は991円のみ。少額決済は電子マネーで、という傾向がある。
私は、電子マネーなんて使いたくもないし、使えませんが、それはそれでよいですよね・・・。それにしても、スイカはたしかに便利ですが、カードと一元化されてしまったら、怖い気もしてきます。
(2017年5月刊。720円+税)

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2017年7月 3日

すっきりした朝に変わる睡眠の本

人間


(霧山昴)
著者 梶本 修身 、 出版  PHP研究所

世の中には眠れないと訴える人が本当に多いと思います。私の場合には、夜7時以降にコーヒーかお茶を飲むと眠れません。
ぐっすり眠って、さわやかな目覚めというのは最高ですよね。この本は、睡眠の目的は前日までの疲れを完全に消し去ることにあるとし、そのため、朝、すっきり目覚めるためには、どうしたらよいかを具体的に解説しています。
睡眠は量より質が大切。必要十分な睡眠時間は、個々人の睡眠の質によって異なる。
脳にある自律神経中枢の細胞で活性酸素が発生し、酸化がおこることで疲労が生じる。
いびきは、自律神経の中枢を回復させる唯一のチャンスを奪う。
日本人の睡眠時間は年々、短縮していて、2010年は、平均して7時間14分。1960年の8時間13分と比較すると、50年間で1時間も短縮している。日本は先進国のなかで一、二位を争う睡眠時間の短い国だ。
寝始めの3時間に、成長ホルモンが多く分泌されるから、この3時間が重要なのだ。
6時間睡眠が10日間続くと、徹夜明けと同じ程度にまで認知機能が落ちる。
決まった時間に起きることが大切。ヒトは起きた時間によって、ほぼ眠くなる時間が決まる。
目を覚ましたあと、太陽の光をしっかり浴びると、眠気が吹き飛ぶだけでなく、夜もぐっすり眠れることにつながる。太陽光は、屋内の照明より数倍から数十倍も強い。時間的には数分間でもよい。
昼寝は20分以内にとどめる。それ以上寝ると、深い睡眠に入ってしまい、目覚めたときに強い眠気を感じることになる。昼寝する前にカフェインをとるとよい。カフェインの効果があらわれるまでに20分以上かかるから。
眠気を感じるまではベッドに入らない。眠れないときには、ベッドから出るのがよい。
寝室は真っ暗でなく、人がいるかどうかは分かるけれど、誰がいるかは認識できないくらいの暗さが理想。
寝返りできる布団がいい。
とても分かりやすく、実践的な睡眠の本です。
(2017年5月刊。1400円+税)

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2017年7月 4日

2015年安保、総がかり行動

社会

(霧山昴)
著者 高田 健 、 出版  梨の木舎

共謀罪法案の国会審議はひどいものでした。いえ、言い直します。ひど過ぎます。加計学園の問題点が国会という公の場で究明されるのを恐れて、会期延長せずに徹夜国会にして「多数の横暴」で問答無用式に明らかに憲法違反の法律を制定してしまいました。自民党や公明党議員にも個人的には話せば分かってもらえる人もいると思うのですが、首相の言いなり、その手駒として右往左往するだけで、とても良識の府とは言えません。
こんな人たちが道徳教育をすすめ、日本の国を愛せよというのですから、子どもたちの目が白黒するのも当然です。
この本は、2015年夏の総がかり行動を中心によくまとめられています。
弁護士会も、日弁連も全国各地でも本当に一生けん命に取り組み、盛り上がりました。安保法は成立こそしましたし、駆けつけ警護とか米艦警護出動を形ばかりは施行しましたが、今までのところ、幸いにして戦死者は一人も出していません。
それでも、イラク・サマーワへ派遣された自衛隊員の数人が自殺して亡くなったとのことですが、南スーダンへ派遣された30代の自衛隊員が自殺したようです。詳しい状況はもちろん不明ですが、過酷な「戦場」体験がそのひきがねになったのではないでしょうか・・・。
この本に紹介されているマンガのセリフを紹介します。
「戦争に行け」と言う奴に限って、自分は行かない。
これは、正確には、もちろん自分は行かないのですが、自分の家族や親戚・知人まで行かなくていいように特別手配をします。
「国のために死ね」と言う奴に限って、自分は死なない。
これも、正確にいうと、死なないどころか、大もうけするのです。戦前の高級軍人は軍需メーカーと結託して甘い汁を吸っていましたし、今も防衛省の制服組たちが軍需産業に続々と天下りして、ぬくぬくとしています。彼らにとって、戦争はもうかるものなのです。
総がかり行動が目ざしたのは、「同円多心」。共通の目標という大きな円のなかに自立した「心」が多数存在するような、それぞれの団体・個人が自立したセンターであるような共同体づくりを目ざした。
私も国会周辺へは昼と夜に、各1回だけ行きましたが、すごい熱気でした。
安保法制法の制定を強行し、その前の秘密保護法、今度の共謀罪法の制定、そしてモリ・カケ疑惑の放置、日本の民主主義が足元から揺さぶられています。
日本国民をあまりにも馬鹿にした自民・公明政権に対して、強く反省を迫る必要があります。
(2017年3月刊。1800円+税)

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2017年7月 5日

行こう、どこにもなかった方法で

社会


(霧山昴)
著者 寺尾 玄 、 出版  新潮社

しっとり、じっくり読ませる本でした。車中で読みふけっていため、いつのまにか目的地に着いていました。社内放送はまったく耳に入らず、著者の語りに全霊を傾けていたのでした。
夢の扇風機や感動のトースターを発案したというのですが、わが家にはどちらもありません。孫が遊びに来るようになってエアコンは取り付けましたが、それまでは天然自然のクーラー(要するに何もない)でした。それが下の田圃で隣人がお米をつくらなくなってから、そうもいかなくなりました・・・。
朝食にパンを食べていた時期がありましたが、今ではニンジン・リンゴ・青汁ジュースのみです。ですからトースターは不要なのです。
それにしても、扇風機の風が肌を刺して、気色悪いと思っていた理由が解けました。風が渦をつくって、一直線に肌にあたるからなのです。そこで著者は渦を解消して、自然のやわらかい風を再現したのでした。それでも一機3万5千円もします。どうやってそれを世間様に認知してもらい、売り込むのか、そこに人生を賭けた必死の努力があったのです。その過程が実によく分かります。
人の本気さは、いろいろな物事を動かす力をもっている。
思春期は、子どもが大人になるために絶対に通過しなければならない時期だ。しかし、子どもが大好きな親にとっては、過酷な時期である。
著者が14歳のとき、母親がハワイの海で亡くなった。自分や家族の身に一大事がおこり、どんなに悲しくても辛くても、それは政界の悲しみではなかった。どんなに悲しみに打ちひしがれようとも、世界は暗黒になったりはしなかった。なぜなら、それは世界や他者にとっては何もないことだからだ。
本当に、著者の言うとおりなんですよね・・・。私という存在と他者、そして世界とは、まったく別の存在なのですよね・・・。
それにしても、著者は詩を書いていたというだけあって、言葉づかいが新鮮です。
ただの解放感は、自由とはまったく異なるものだ。
著者は高校を中退し、17歳のとき、スペインへの一人旅に出て、1年間、放浪した。スペイン語も出来ないのに、たいしたものです。やはり若さですよね。
結局、著者の価値観の基礎となったのは、両親が言葉と身体で教えてくれた事柄だった。いつでも真剣に生きること、常識にとらわれず自由に考えること、本気で夢を信じていいこと。
離婚して、子どもに辛い目にもあわせた父親と母親を、著者は心底から愛していることが本書を通じて、よくよく分かります。
18歳から歌手になってステージに立って歌った。自分で天才だと思って・・・。そして、挫折したあと、モノづくりの世界に飛び込むのです。いやあ、よくもこれだけ自分の心象風景を素直に文字にできるものです。まさしく天才的、です。最後に、「それでは、みなさん、良い旅を」と呼びかけています。
読んでいると、なんだか、すーっと、心が軽くなってくる。そんな本でした。ひき続き、常識にとらわれないモノづくりに挑戦してください。なんか新鮮な刺激がほしいなというあなたに、ご一読をおすすめします。
(2017年4月刊。1600円+税)

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2017年7月 6日

寅さんの世間学入門

社会

(霧山昴)
著者 佐高 信  早野 透 、 出版  ベストブック

山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリーズが始まったのは、私が大学3年生のとき、1969年でした。マドンナ役は光本幸子です。私はその前にテレビで放映されていたというのは残念ながら見ていませんし、知りません。DVDにも全部は残っていないようですね・・・。
1969年以来、1997年の特別篇まで49作という超長シリーズです。なにしろ、お盆と正月に新作が封切られていたのですから、すごいことです。
私の子どもたちが一緒に映画をみてくれるようになってからは、正月に家族みんなでみていました。高笑いしながら、しみじみ泣けてくるという映画ですが、やはり観客みんなで笑うところに大きな感動がありました。東京・銀座の高級封切り館でみたときには、観客の笑いが、さすがに上品でしたから、もう、こんな上品な映画館では「寅さん」映画はみないと固く心に誓ったことを覚えています。
対談する二人は、私たち団塊世代より少しだけ年長です。一人はサユリスト(早野)、対する一人はリリー派(佐高)です。
サユリストの私ですが、寅さんの恋人役にふさわしいのは、なんといってもリリー(浅丘ルリ子)です。寅さんが肩の力を抜いて話せる女性だということが画面からよく伝わってきます。
リリーが登場するのは5作もあります。「ハイビスカスの花」は、筑豊の映画館でみましたが、ちょうど「オンボロ旅館」(失礼します)に泊まって弁護団合宿をしていましたので、みんなで腹をかかえて笑ってしまいました。
それにしても、渥美清が亡くなって20年にもなるなんて、信じられません。
この20年間に生まれた人は、寅さん封切り映画をみれなかったわけで、お気の毒としか言いようがありません。
最新の『家族はつらいよ』が、寅さん映画の雰囲気を伝えていますが、やはり面白みでは寅さんにはかないません。そこは、なんといっても渥美清という役者の奥深さです。
この本を読んで久しぶりに寅さん映画の感動に少しばかり浸ることができました。
(2017年3月刊。1400円+税)

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2017年7月 7日

世界の産声に耳を澄ます

人間

(霧山昴)
著者 石井 光太 、 出版  朝日新聞出版

身体を張った突撃取材で定評のある著者が、今回は世界各地の出産事情を取材するのです。知らないことが多々ありました。
タイでは代理母出産です。日本人も多く利用しているようです。アメリカだと代理母出産は1500万円。インドでは3分の1の500万円ですんでいた。ところがインド政府が規制を強化したら、タイへ移っていった。タイでも500万円かかる。
代理母の女性への報酬は122万円。分割で支払われる。契約時に10万バーツ、妊娠期間の9ヶ月間に1ヶ月ごとに1万バーツ、残りは出産後に支払われる。ただし、女性は20代に限る。30歳をすぎたら代理母にはなれない。
ヨルダンの難民キャンプ。ここでは物価が町より安くて、2分の1とか3分の1。そこで、品物をここで買い、難民キャンプの外へ持ち出して転売すると、利益が出る。難民キャンプには、いろいろな利権がある。
そして、難民キャンプでは出産が増えている。その母親は十代も多い。親からすると、厄介払いの面もある。そして、出産には帝王切開が多い。これだと予定日がずれるということがない。
アフリカのスワジランドは、HIV大国と呼ばれるほど、エイズ患者が多い。出産のときに母子感染することがある。18歳から49歳までの3人に1人がHIVに感染している。平均寿命は49歳。13歳から24歳までの女性の3分の1がレイプを体験している。性的暴行は膣を傷つけるので、一般の性行為よりHIV感染率が4倍も高い。HIVは、子どもから両親を奪ってしまう。エイズ孤児は、5万人以上もいる。
フィリピンでは母乳をのむと病気になるというデマが横行している。そのため、母乳をやって子どもを病気にしないために民衆は粉ミルクを求める。そして、実は、粉ミルクを母親が与えるのは、母親である女性がタバコやお酒、そして、シンナーやドラッグをやっているからでもある。
子どもを安心して出産でき、安全・快適な環境のもとで育てていける環境づくりこそ、世界平和の基礎だと痛感させられました。
安全に気をつけて、これからも突撃取材に励んでください。
(2017年5月刊。1500円+税)

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2017年7月 8日

植物はそこまで知っている

生物(植物)


(霧山昴)
著者 ダニエル・チャモヴィッツ 、 出版  河出文庫

じっとしていて動かないように見える植物が、実は動いていて、意外に賢い存在だと認識を改めさせられる本です。
遺伝子という観点で比べると、植物は動物よりも複雑であることが多い。
植物は中枢神経系、つまり体全体の情報を調節している「脳」は存在しない。それでも、植物は環境に最適化するよう、各部位を緊密に連携させて、光や大気中の化学物質、気温などの情報を根や葉、花、茎で伝えあっている。
植物は、さまざまな方法で光を見ている。それは、人間の見えない色まで見ている。
植物に屈光性が生じるのは、植物の苗の最先部が光を見て、その情報を中央部に伝えて曲げさせるため。
植物は光を浴びている時間を測っている。植物の視覚は、ヒトの視覚よりも、ずっと複雑だ。植物にとって、光とは単なる合図以上のもの、食料そのものだ。植物は光を使って、水と二酸化炭素を糖に変える。受けとる器官が異なるだけで、植物もヒトと同じく、光を感知している。
植物は、匂いを嗅いでいる。古代エジプト人は、イチジクの実を収穫したあと、まず2個か3個に深い切れ目を入れておくと、残りの実すべてが熟すことを知っていた。それはエチレンガスがもれ出して、ほかのイチジクの完熟を促したのだ。
ネナシカズラは、明らかに匂いを嗅いで食べ物を探している。
葉を食べる昆虫が襲来すると、木々は、互いに警戒しあっている。
植物は、病原菌やウィルスの攻撃を受けたときにサリチル酸をつくる。植物にとって、サリチル酸は、免疫機構を増強する「防御ホルモン」だ。
植物は触覚を感知できる。オジギソウの葉の基部には葉枕(ようちん)という膨らんだ構造があり、その中に葉枕細胞という、運動細胞がある。ここに電気信号が作用すると、オジギソウの葉は垂れる。筋肉がなくても葉枕は葉を動かしている。
シロイヌナズナは、1日に数回、人の手でさわられると、何もしないシロイヌナズナに比べて、草丈がずっと低く、開花もうんと遅れる。
植物は聞いている。
植物は、地面に対して垂直に育っているのか、斜めに育っているのかを知っている。
この本を読むと、植物について、まったく誤解していたとしか言いようがありません。知的刺激にあふれた本です。
(2017年3月刊。800円+税)

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2017年7月 9日

うんちの正体

人間

(霧山昴)
著者 坂元 志歩・鱈 耳郎 、 出版 ポプラ社

毎日お世話になっている「うんち」の本です。へそのゴマから話が始まる面白い絵本です。子ども向けのようでいて、実は大人向けの健康教本です(私は、そう思いました)。
まず、病気を治すのに、健康人の「うんち」を薄めて、病人の鼻からチューブで腸へ注入するという治療法があるというのに驚きます。つまり、腸内の菌を殺すのではなく、腸のなかの菌の多様性を増進することによって、病気を治すのです。その病気は大腸炎ですが、なんと、この方法で9割以上が治るというのです。
大腸には、100兆個もの菌がいて、全身になると1000兆個もの菌がいる。これに対して、ヒトの身体は37兆個の細胞から出来ている。
へそのゴマには、2368種もの菌がいて、そのうち1458種が新発見の菌の可能性があった。ヒトのへそに共通の菌はいなかった。
宇宙飛行士は、宇宙船のなかで、おならをし、便を排せつする。その処理は大変だ。無重力の世界では、おならもゲップも、吐い息さえも、まとまって動く。しかも、おならには、燃える成分だって含まれている。
宇宙船のなかで、「うんち」が爆発したり、漂ってしまった事故が2度も起きた。「うんちバッグ」のなかで、殺菌剤とよく混ぜあわせておかないと、破裂してしまうのだ。
快食・快眠そして快便が私たちの健康を支えてくれます。この本は、そのなかの快便について、分かりやすいマンガつきで解説してくれています。子どもと一緒に読める楽しい絵本です。
(2015年2月刊。1300円+税)

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2017年7月10日

スタンフォード式・最高の睡眠

人間

(霧山昴)
著者 西野 精治 、 出版 サンマーク出版

スタンフォード大学の医学部教授であり、睡眠生体リズム研究所所長である著者による初めての日本語著書です。
睡眠は本当に大切ですよね。私は、朝おきたときに空腹感があるのが健康のしるしだと考えてきましたが、本書に同じことが書かれていて、うれしくなりました。
朝、起きたら、おなかがすいている。これは、質の良い睡眠がとれているかどうかのバロメーターだ。
一流のアスリートは、真剣に睡眠と向きあう。眠りの力を認識し、力を入れて取り組んだ選手だけが一流になれる。
睡眠の質は、眠り初めの90分で決まる。最初の90分さえ質が良ければ、残りの睡眠も比例して良質になる。最初の90分間のノンレム睡眠は、睡眠全体のもっとも深い眠りである。ここで深く眠れたら、その後の睡眠リズムも整うし、自律神経やホルモンの働きも良くなり、翌日のパフォーマンスが上がる。
週末の寝だめでは、睡眠負債は解決しない。そもそも眠りは、ためられない。普通の人は、最低でも6時間以上眠ること、これがベスト。
レム睡眠は、ストーリーがあって実体験に近い夢をみる。ノンレム睡眠は抽象的で辻つまのあわない夢になることが多い。
最初の眠気のタイミングは絶対に逃してはいけない。眠くなったら、とにかく寝てしまう。そうしないと、そのあと深い眠りはやって来ず、いくら長く寝ても、いい睡眠とはならない。
質の良い眠りには、ノンレム睡眠だけではなく、レム睡眠も欠かせない。
質の良い眠りなら、体温が下がる。体温の低下が睡眠には欠かせない。脳が興奮していると、体温も下がりにくい。
睡眠中は、温度を下げて臓器や筋肉、脳を休ませ、覚醒時には温度を上げて体の活動を維持する。健康な人だと、入眠前には手足が温かくなる。皮膚温度が上がって熱を放散し、深部温度を下げている。
いつものベッドで、いつもどおりの時間に、いつもどおりのパジャマを着て、いつもどおりの照明と室温で寝る。音楽を聴くなら、いつも同じ単調な曲。考えないままスイッチオフで眠る。眠れなかったら、ベッドから離れる。
良質の睡眠の意義と、その確保の仕方がとても具体的かつ実践的で、大変参考になります。
(2017年5月刊。1500円+税)

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2017年7月11日

裁判所の正体

司法

(霧山昴)
著者 瀬木 比呂志・清水 潔 、 出版 新潮社

元裁判官で現在は大学教授が、ジャーナリストに対して裁判所の内幕を明らかにした本です。
法廷に出る前に裁判官は黒い法服を着る。あれを着ることによって「人間」ではなくなる。一種の人間機械ともいえる。ところが、アメリカでは裁判官は少しえらい「普通の人」である。
家裁の裁判官は、身の危険を感じることが多い。当事者から、恨みを買いやすい。帰宅するときにあとをつけられたという裁判官もいる。
法廷にたくさん人が入っていると、裁判官は強権的な訴訟指揮をしにくいし、弁護士も主張・立証のあり方についてきちんとしてくるので、わずかでも見ている人がいる裁判は違ってくる。たくさんの人が継続的に傍聴にきている裁判では、それなりによく考えるというのは、まともな裁判官だったら、ありうること。たくさんの人が傍聴に来ていれば、より慎重に判断しがちだ。真面目にきちんと聞いている人が多いほど、まともな裁判官なら動かされる。人間は社会的動物だから。
裁判官の官舎は、裁判官を管理・隔離するうえで、非常に都合がいい。
裁判官の官舎には、必ずちょっと変な人がいて、非常に住みにくいところ。
裁判官は、そのときどきの自民党の中枢の顔色をうかがう傾向は強い。たとえば、夫婦別姓については、まさに「統治と支配」の根幹にふれ、自民党主流派の感覚にもふれるから、絶対にさわらない。
非嫡出子の相続分については、そんなに大きな問題ではないので、民主的にみえる方向の判断を下す。最高裁はそんなバランスをとっている。つまり、国際標準の民主主義にかなう判決はわずかでしかない。
日本の裁判官の多数派は「俗物」だ。エリート行政官僚と何ら変わらない。ただ、行政官僚よりも、はるかに伸び伸びできないので、陰にこもった人間が多い。
最高裁の裁判官になったあと、最近は、昔と違って、平気で天下りする人が多い。民間企業への天下りは、本当に節操がなく恥ずべきことなのに・・・。
多くの裁判官は、きわめて想像力に乏しい。
日本の裁判官は、権力そして時の世論に弱い。日本がどんどん悪くなっているとき、歯止めになる力がきわめて乏しく、それはごくごく一部の裁判官にしか期待できない。
裁判官の給料は、20年を過ぎると、出世レベルが上のほうだと2000万円に手が届くくらい。65歳で裁判官をやめるときには、家と土地があって、退職金をふくめて1億円くらいある。
裁判官の不祥事は、近年ふえている。2001年から2016までの16年間で10件の懲戒処分が公表されている。これは、実際に発覚した件数。
裁判所というのは、現実感が薄い。一種の精神的収容所なので、ものが見えにくくなる。裁判官の世界は、閉ざされて隔離された小世界である。いわば「精神的な収容所」である。外の世界から隔離されているので、価値観まで、おかしくなっている。裁判官って、本当に孤独。
裁判官は、期を中心として切り分けられ、競争をさせられる集団である。
裁判官の再任請求を市民ととも審査する。再任を拒否された裁判官は、年に4人、5人も出た。理由も告げられずクビになったということであれば、全体が萎縮する。その結果、能力に自信のない裁判官たちは、ひたすら上ばかりをうかがうヒラメになって保国を図ることになりやすい。
最高裁には人事評価の二重帳簿がある。絶対極秘の個人別評価書がある。
若くて能力の乏しい裁判官を中心にコピペ判決が増えている。裁判官の能力は下がりつつある。最近の若手裁判官は、大事務所を勝たせる傾向が強い。権力とか、力をもっているもののほうを勝たせる。国や地方公共団体、そして、大企業を勝たせようとする。
最高裁が裁判官協議で事務総局が局見解として打ち出したものをみて、裁判官は、非常に萎縮する。
著者の指摘には、一部これは違うというように違和感を覚えるところもありますが、全体としては、鋭く問題点をついていると思いました。
(2017年5月刊。1500円+税)
 キャナルの映画館で「ハクソーリッジ」をみてきました。日本軍は前田高地の戦いと呼ぶようです。
 宗教上の信念と子ども時代の苦い思い出から銃を持たないという「良心的兵役拒否者」が、結局、衛生兵として戦闘部隊の一員として戦地の沖縄に赴任します。平穏に上陸したかと思うと、地獄のような戦場に一変し、衛生兵が大活躍せざるをえなくなるのです。戦場のむごさ、残酷な現実が、嫌やになるほど再現されます。ノルマンディー上陸作戦を描いた「プライベート・ライアン」に匹敵するほどの凄惨な戦場シーンが続き、思わず身を固くして息をひそめてしまいます。
 上官たちが、戦争は人を殺すものなのだ、敵を殺すしか自分の身は守れないと喩すのですが、軍法会議にかけられても、自分の主張・信念を貫こうとするのです。
 自衛隊を軍隊にするとき、今でも実質は軍隊というものの、人殺しを経験していないという歴史上かつて存在したことのない軍隊ですが、「私は敵を殺したくない、捕虜にすればいい」と兵士が言いだしたら軍隊(自衛隊)はどうなるのでしょうか・・・。
沖縄戦については、「シュガーローフの戦い」(光人社)を前に紹介しました。1945年5月12日から180日までの一週間でアメリカ軍の第六海兵師団は2000人をこえる死傷者を出したのです。
 アメリカ軍による沖縄侵攻作戦は、55万人の将兵と1500隻の艦船を動員するものだった。攻撃開始日だけで18万2000人が参加したので、前年のノルマンディー上陸作戦のロデイを7万5000人も上まわっている。
 シュガーローフの戦いの現地は、いまはモノレールの「おもろまち」駅の付近です。
 今では、アメリカ軍の無理な攻撃自体が戦略上のミスではなかったかという厳しい批判がなされているとのことも知りました。「ハクソーリッジ」をみた人には、この「シュガーローフの戦い」(光人社)も読んでほしいと私は思います。

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2017年7月12日

「ヒトラーの裁判官、フライスラー」

ドイツ

(霧山昴)
著者 ヘルムート・オルトナー 、 出版 白水社

第二次対戦下のドイツでヒトラーに反対して声をあげた「白バラ」グループに死刑を言い渡したナチスの裁判官として有名なフライスラーの人生をたどった本です。
「白バラ」グループとして捕まった学生たちは死刑判決を受けた、その日のうちにギロチンにかけられました。むごいものです。
フライスラーは51歳で敗色濃いベルリンで空襲にあって死亡しますが、その妻は裁判官の配偶者として戦後も長く年金を受給しました。つまり、フライスラーは死後も資格を剥奪されることなく「裁判官」だったわけです。同じように、ナチス時代の裁判官たちは、戦後の東西ドイツで司法界にとどまっていたのです。まあ、この点は、日本と共通していますね・・・。
ドイツ弁護士会は、ナチスが政権をとると、まもなく、「民族および帝国の健常化に貢献するために」全力を傾注することをナチス政府に確約した。
1933年10月初め、ライプツィヒで開催されたドイツ法曹大会には、全国から2万人以上の法律家が参集したが、次のようにナチスに誓った。「我々はドイツ民族の魂に誓わん。我々がドイツ法曹人として、我らが、総統閣下に付き従い、我々の日が尽き果てるまで、ともに歩み続けるであろうことを」
日本も、大日本弁護士報国会をつくって戦前の弁護士たちは戦争に協力していきました。
1933年に、ドイツの弁護士1万9500任のうち、4394人、22%がユダヤ系だった。大都市では、もっと比率が高かったし、弁護士会の役員にもユダヤ人弁護士が幹部を占めていた。ドイツにはたくさんの優秀なユダヤ人弁護士がいたのに、全員、資格が奪われてしまったのです。
大都市では裁判官の10%をユダヤ人が占めていた。
フライスラーにとって、政治犯は最悪の裏切り者であり、国家の敵であった。24時間以内に起訴がなされ、24時間以内に判決が下され、犯罪者は直ちに処罰されなければならない。情状酌量を認めた時代は、もう終わらせなくてはならない。
人民法廷は、第一審かつ最終審であり、判決についての法的救済手段は一切認められなかった。被告人には起訴状が渡されず、弁護人は裁判の直前に起訴の内容を知るだけで、あらかじめ準備することは出来なかった。審理が終わると、弁護人は、起訴状を返還しなければならなかった。
したがって、ナチスの権力者にとって、いかなる形であれ、反対者を徹底的に排除し、せん滅させる場として、人民法廷に全幅の信頼を置くことが出来た。
1943年1月から1944年1月まで、「防衛力破壊」を理由として124件の死刑が宣告され、即時執行された。
1943年2月のスターリングラードでの敗戦以降、たいて死刑が言い渡された。「公正な判決」など、論外だった。
フライスラーが単独で裁判長をつとめた1943年上半期、1730件の有罪判決が出され、そのうち804件で死刑判決、無罪判決はわずか95件のみ。
死刑があまりにも多すぎて、刑務所のなかには死刑が追いつかないほどだった。親族には決して通知されず、死刑囚の遺書は捨てられた。
人民法廷の長官として、フライスラーは、数千人も人々を死へ送り込んだ。まさしく法服をまとった殺人鬼だった。人民法廷が1942年に言い渡した1200件の死刑判決のうち、半分以上の650件がフライスラーの第一部が下したものだった。1943年の1662件の死刑判決のうち、約半数の779件がフライスラーの第一部によるもの。1944年の2100件の死刑宣告のうち第一部が下したのは866件だった。
では、何が死刑判決の根拠になったのか。本書にはその死刑判決の理由がいくつか紹介されています。気心の知れた仲間内でヒトラーに対して漠たる疑念を冗談めかして語っただけの人がいます。それが密告によって、人民法廷にひきずり出され、見せしめ的に「国家反逆罪」「防御力破壊罪」といったものものしい罪名のもとで死刑が言い渡されたのです。
つい先日、日本で成立してしまった共謀罪の恐ろしさを実感させられます。
ほかにも、他愛のないジョークでしかないもの、今からみたら的を射た洞察が、その正しさゆえに、国家の存続を脅かす危険思想の発露とみなされて、死刑を言い渡され、即日、ギロチンで処刑されていったのです。まさしく、嘘でしょ、こんな冗談で死刑になるなんて・・・、と叫びたくなります。密告者だって、まさか死刑にまでなるとは思っていなかったことでしょう...。
ナチス・ドイツの反省にアベ政権下の日本人として、大いに学ぶところがあるように思いました。日本の裁判官って本当に大丈夫なんでしょうか・・・。ゾクゾクしてきました。
(2017年4月刊。3400円+税)
 フランス語検定試験(一級)の結果通知が届きました。もちろん不合格なのですが、得点は64点で、自己採点を11点も上まわっていました。仏作文が少し評価されたのでしょう。150点満点ですから、4割をこえたところでした。合格点は87点ですから、やはり6割をとる必要があります。
 めげず、くじけず、引き続き毎日フランス語の書きとりを続けます。そして車中はフランス語の聴きとりです。

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2017年7月13日

オリーブの丘へ続くシリアの小道で

シリア

(霧山昴)
著者 小松 由佳 、 出版 河出書房新社

内戦まっただなかの2012年春、シリアの首都ダマスカスに3ヶ月いて、シリアの人々を写真に撮った日本人女性カメラマンによる写真集です。
いったい、なぜこんなひどい内戦が、こんなに長く続いているのか、日本にいて本をいろいろ読んでも、よく分かりません。一刻も早く内戦が終息し、人々が平和に生きられるようになることを願います。
暴力に対して暴力ではいけない。平和的手段でなければダメ。そう叫んでいた若者が、やはり暴力には暴力しかないと言って戦闘員に加わったという話も出てきます。たしかに、悲しい現実があるのですよね、でも、・・・。
2011年に内戦が始まって、すでに5年たち、シリアの難民・死者は相変わらず増え続けている。2200万人の人口のうち、25万人が死亡、470万人が国外で難民で暮らしている(2016年2月)。
そして、シリア国内にも760万人もの人々が避難生活を送っている。国民の半数以上が家を失った(2015年7月)。
シリア難民の子どもたちの通う学校の授業光景を撮った写真もあります。
シリアは日本と同じく、六・三・六制で、小学校の6年間が義務教育。男女共学は小学校だけで、中学校からはイスラム教の道徳によって男女別となる。
小学校の教室で、若い女の先生が男の子3人と女の子5人に歌を教えている様子がうつっています。この学校では、子供たちがシリアの文化を失わないよう、トルコ語のほか、アラビア語やシリアの歴史・文化を教えている。ということは、この学校はトルコにあるのですね。
この学校では、不発弾の取り扱い方法を子どもたちに教えている。近づいたり触ってはいけない。誰かを叫びなさい、と。
「教師として、希望をもちなさい、希望があるから私たちは生きていける、と子どもたちに話さなければいけない。しかし、現実には、自分でさえこの生活に希望をもてずにいる。子にとっても教師にとっても、希望をもつとか本当に難しい」
いやあ、本当に内戦が続くというのは大変なことですよね。難民の子どもたちは、いつかシリアの故郷に帰ることを夢見ている。
可愛らしく聡明そうなシリアの子どもたちの願いを一刻も早く実現させてやりたいと思わせる貴重な写真集です。
(2016年3月刊。1900円+税)

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2017年7月14日

子どもたちの階級闘争

イギリス

(霧山昴)
著者 ブレィディみかこ 、 出版 みすず書房

3歳児、4歳児でも、ちゃんと自己主張するし、できることも良く分かる本です。
イギリスの保育園で働く日本人女性がイギリスの保育事情を紹介しています。イギリスって、まさしく昔も今も階級社会なのですね。日本だと、それが見えにくいわけですが、イギリスでは、あからさまのようです。なにしろ、住んでいる地域が異なるし、コトバだってはっきり所属階級の違いが分かるというのです。そして相互に深く交流することはないのです。日本人として不思議な気がします。ええっ、英語って、ひとつじゃないの・・・。まあ、「マイフェアレディ」を思い出せばよいのでしょう・・・。
私立校で教育を受けたミドルクラスやアッパークラスの人々は、BBCのアナウンサーのような明瞭な英語を話す。対して、労働者階級の人々は、地域色豊かなアクセントになり、下層に行けば行くほど、単語の最後の音をいい加減に発音する。だから、イギリスは、口を開けば属している階級が分かってしまう。
イギリスの保育園に2歳児をフルタイムで預けると、1ヶ月で14万円もかかる。それで、イギリスの保育園はミドルクラス家庭の御用達施設と呼ばれている。
保育園は、下層幼児たちの受け入れを拒否している。幼児教育現場での階級分離が進んでいる。貧困エリアにおける肥満している子どもの割合は、少年の場合は豊かな地域の3倍、少女の場合には2倍になる。
イギリスの裕福な家庭は子どもパブリックスクールと呼ばれる私立校に通わせる。年間学費が300~400万円かかる。
貧しい人々は、家賃の安い地域、つまり地域の学校が荒れているので、親たちが敬遠する地域に住むことになり、富める人々と貧しい人々の居住地域の分離が進んでいる。
貧民街の子どもたちは、保育施設から小学校、中学校と一貫して貧しい地域の、自分と同じような階級の子どもたちに囲まれて学ぶことになり、上の階級の子どもたちと知り合う機会はもちろん、すれ違うことすらない。
人間は、希望をまったく与えられずに欲だけ与えられて飼われると、酒やドラッグに溺れたり、四六時中、顔をつきあわせなければならない家族に暴力をふるったり、外国人とか自分より弱い立場の人々に八つ当たりをしに行ったりして、画一的に生きてしまう存在だ。それは、セルフ・リスペクト(自己尊重)を失うからだ。
イギリスでも、フランスのル・ペンのように反移民・EU離脱を唱える右翼が伸長している。それは、イギリスにEU圏からの移民が急増しているから。
2011年の国勢調査では、イギリスで生まれる子どものうち、少なくとも両親の一人が外国人である子どもの割合は全体の31%で、2001年より10%も増加している。両親とも外国人だという子どもも18%いる。
アフリカや中東そしてアジアから来た移民の親たちは、決まって、イギリスのアンダークラス民、「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる人々が大嫌いだ。子どもを厳しくしつけず、やりたい放題にさせているから、この国、イギリスはダメになったと高言する。移民の多くは、勤勉で上昇志向の強い人々だ。イギリスの食べ物はおいしくなったが、それは、これらの人々のおかげだ。 
イギリスは、もともとワーキングクラスという階級が誇りをもって生きてきた国である。終戦直後に、労働党政権は、無料の国家医療制度を実現し、公営住宅の大規模建設、大学授業の無料化など、底上げの政策を徹底的にすすめた。その効果が一斉に花開いたのが、1960年代だった。
ところが、このエキサイティングな階級の流動性は、もう遠い過去の話になった。今では、間違っても、下層階級の人間がそこから飛び出す可能性は支えられていない。
現代のイギリスは階級が固定化しすぎている。格差の拡大はよくないが、どんなにがんばっても、自分たちが再びクールになる時代は来ないという閉塞感が下層にいる人々を絶望させる。
そんななかで保育園を運営し、一人ひとりの子どもたちを保育していくのですから、日々まさしく困難の連続です。移民をどんどん日本に受け入れたときには、保育園だけでなく、社会の隅々まで、貧困と身の安全を守るために考え、行動しなければならないことがたくさんあることを実感させてくれる本でもありました。
(2017年6月刊。2400円+税)

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2017年7月15日

先生、犬にサンショウウオの捜査を頼むのですか!

生物

(霧山昴)
著者 小林 朋道 、 出版 築地書

先生シリーズも11冊目のようです。すごいですね。ただ、先生も活躍しすぎたのか、少々お疲れのご様子。本書では、何ヶ所か体調不良になって走れなくなったという類のエピソードが紹介されています。先生、どうぞ無理するのもほどほどにして、息長くご活躍、そして学生の指導にあたってくださいね。
今回の生物のトップバッターは、なんとゲジゲジです。わが家にもたまに見かけます。不気味ですから、ゴキブリと違って殺さず、家の外へ放り出してやります。殺す勇気はないのです。
次にヤドカリの生態調査。ヤドカリと殻の大小の関係を実験で明らかにするとは、たいしたものです。残念なことにピンボケ写真のオンパレードです。先生がスマホで手ぶれしながら撮っているからでしょうか・・・。
そして、洞窟に棲むコウモリです。コウモリの赤ちゃんを拾って育て、洞窟に戻してやったのです。数時間おきにスポイトを使って、ミルクを飲ませて育てたというのです。信じられない苦労です。そして、4日目には飛んで去っていくのでした。
この鳥取環境大学には構内にアナグマが生息しているようです。わたしの家の近くにはタヌキの子連れ姿を見ることがあります。こんな先生のもとで、野外研究・観察ができる学生は幸せですよ。
モモンガが学生のかけた巣箱に入って育っているという話もうれしい限りです。
(2017年5月刊。1000円+税)

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2017年7月16日

チェンジ

アフリカ

(霧山昴)
著者 山田 優花 、 出版  海竜社

ウガンダで子どもたち支援活動を5年あまりも続けている日本人の若い女性がいます。すごいですね。ついつい応援したくなります。しかも、彼女は熊本の出身なのです。
著者は「あしながウガンダ」の代表をつとめています。
「あしながウガンダ」が支援する遺児家庭の多くは、母子家庭。
ウガンダでは、男性に比べて女性の立場が弱い。とはいうものの、実は、日本よりもウガンダのほうが女性が活躍している。日本の男女格差指数は世界で101位に対して、ウガンダは58位である。
赤道直下にあるウガンダ共和国は、「アフリカの真珠」と呼ばれるほど緑あふれる美しい国である。標高が高く、国土の大部分が丘陵地帯なので、年間の平均気温は21~23度と温暖で、1年中過ごしやすい。「アフリカの軽井沢」と日本人は呼んでいる。綿花、コーヒー、バナナが主要な輸出品目。
独立後20年間は政情不安定で、内乱が続いたが、ムセベニ大統領のもとで、この30年間は安定して発展してきた。
仏統的な家屋には、室内に風呂やトイレがない。家の外に小さな水浴び場兼トイレ用の小屋が設けられている。キッチンと呼べるものもなく、調理は室内の隅か外のかまどでする。
ウガンダ人は、50以上の民族と相当な数の言語から成っている。ウガンダ人は、ことあるごとに、「何とかなる」と言う。
「時間を守らなければいけない」という意識が乏しい。ただし、ウガンダ人は、ホスピタリティにあつい。そして、純粋な優しさがある。
著者は、女性の一人暮らしをしているので、防犯には気をつかう。鍵と南京錠を幾重にもかけ、枕元に金属バットを置いている。愛猫をなでて、気をやすめる。
あしなが育英会の奨学金を受けて外国語大学に学び、英語と中国語を身につけ、アフリカへ単身とびこんだ勇気ある女性の話は、読んでいて元気が出てきます。
(2017年4月刊。1300円+税)

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2017年7月17日

「レ・ミゼラブル」の世界

世界(フランス)

(霧山昴)
著者 西永 良成 、 出版 岩波新書

ヴィクトル・ユゴーと、「レ・ミゼラブル」について掘り下げた本です。あの大作を改めて読みたくなりました。といっても、実は、私は全文を通して読んだことはないと思います。子ども向けの本はもちろん読みましたし、フランス語を勉強していますので、いくつかの章は原文でも読んではいるのですが・・・。
ユゴーが死刑廃止を必死で訴えていたというのを初めて知りました。日本の弁護士には、死刑制度の存続を強烈に主張する若手弁護士の集団がいて、私には違和感があります。
死刑とは何か? 死刑とは、野蛮さの特別で永遠のしるしである。死刑が乱発されるところは、どこでも野蛮が支配する。死刑がまれなところは、どこでも文明が君臨する。
驚くべきことに「レ・ミゼラブル」は、カトリック教会の禁書リストに1962年まで入っていた。それは、協会の正統的な教義に反する深刻な内容がふくまれていたからだ。
ユゴーは、洗礼を受けておらず、自分が新でも宗教的儀式とすることを禁止した。しかし、ユゴーは無神論者ではなかった。
ユゴーはルイ・ナポレオンを初めは賛美していたが、あとではナポレオン3世を徹底的に批判した。「レ・ミゼラブル」の発表から8年後、1870年にナポレオン3世は、普仏戦争で捕虜となって退位する。そして、ユゴーは、亡命先からフランスに戻った。1885年に亡くなり、国葬とされたときには、200万人もの人々が葬列に加わった。
ユゴーは、貧困が犯罪を生み、刑務所が犯罪者をつくり出すと考えた。
これは、弁護士生活40年以上になる私の実感でもあります。
ジャン・ヴァルジャンは、意図的に何度もイエス・キリストになぞらえられ、あたかも殉教者のように描かれている。
500頁の文庫本で5冊という大長編小説。登場人物も100人をこえる。
フランスでは、聖書に次いで読まれている。
いやはや、大変な大長編小説なのですね。どうしましょうか・・・、読むべきか、読まざるべきか、それが問題だ。
(2017年3月刊。780円+税)

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2017年7月18日

深海散歩

生物

(霧山昴)
著者 藤倉 克則 、 出版  幻冬舎

「極限世界のへんてこ生きもの」というサブタイトルがついている本ですが、まったくそのとおりです。奇妙奇天烈としか言いようのない形や色をした生物が海底深くに、こんなにも存在しているなんて、神様でもご存知なかったことでしょう。となると、誰が創造主なのか・・・という疑問が生まれます。
私がもっとも奇妙な姿だと思ったのは、カイメンです。枝がハーブのように広がって伸びているカイメン(タテゴトカイメン)、ピンポン玉のような球がいくつもついているカイメン(コンドロクラティア・ランパディグロバス)、打ち上げ花火の形をしているカイメン。これらは肉食性カイメン。甲殻類を食する。
写真をぜひ見てみてください。なんとも不思議な形と色をしています。
水深6000メートルという超深海では植物が育たない。だから、獲物は滅多に出会えない。大きな口をもって、一口で丸飲みしてしまい、逃さない。
リュウグウノツカイは、成長すると、大きなものは10メートルをこえる。銀色の体でウロコはなく、背びれは赤い。人形伝説のモデルになったと思われる。
深海は太陽光が届かない暗黒の世界。なのに、深海にすむ動物たちは、派手な赤や銀などを身にまとう。ほんと、派手すぎる色と形のオンパレードです。
ヒカリボヤは、5000メートルをこえる深海にもすんでいる。数ミリの小さな個虫が集まり、群体として生きている。最大20メートルにもなる。個虫のなかに発光バクテリアが共生しているので、強く明るく光る。
いやはや、生物の多様性には今さらながら驚かされます。人間が万物の霊長だなんて根拠もなく言うのは許されない、そんな気分にさせる素晴らしい深海にすむ生物写真集です。ありがとうございました。
(2017年6月刊。1300円+税)

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2017年7月19日

不発弾

社会

(霧山昴)
著者 相場 英雄 、 出版  新潮社

東芝を連想させる「大手電機企業」の粉飾決算について、小説仕立てで内情を暴露する経済小説です。
ところが、この本では東京と並ぶ第二の舞台が、なんと福岡県大牟田市なのです。大牟田駅のすぐ近くに「年金通り」と呼ばれる目立たない飲食店街があります。まったく偶然にも、この本を読む前日に、私はちょっとした相談を受けていました。売上が10年前の3分の1にまで減っているので、飲みにきてくださいと誘われたばかりだったのです。年金生活者が乏しい年金で飲んで歌って半日すごせるというのが「年金通り」の由来だと聞いています。昔は、店の二階の小部屋で売春が横行しているという噂が立っていました。この本にも、それらしい状況が書き込まれています。そして、暴力団とのつながりも深いとされています。今はともかく、昔は恐らくそうだったのでしょう。昔の大牟田では、利権争いからの暴力団同士の殺人事件が絶えませんでした。
サブの主人公は、そんな大牟田から脱出して、証券会社に入り、無知な人々から大金を騙しとり、次には大企業の使い走りのようにして、利益保証・補填し、役員個人の蓄財にまで狂奔し、そのおこぼれにあずかるのです。
ホンモノの主人公は東大法学部を卒業した警察キャリア。ところが、なんとしてでも自分の手でホシをあげたいという個人的野望につき動かされて行動するのです。さすがに、その行動力とあわせて、各界にのびている広いネットワークのおかげで、大牟田出身の男の実像に迫っていきます。そして、いよいよ大手をかけたところ、アベ首相とモリカケ理事長の個人的関係と同じように、「政治的に処理され」無罪放免されるのです。なんと理不尽なことが起きているのかと、憤慨するばかりです。ところが、先日の都議会議員選挙の投票率は、わずか51%でしかありませんでした。日々、きつい労働に直面している人たちは、投票所に行く元気もないのでしょう。それでも投票所に足を運ばないと、日々の生活がますます暮らしにくくなるだけなのです。やはり怒りの声はあげて、叫ぶ必要があります。
証券取引で、個人投資家は自己責任として、損を出しても平然と見捨てられます。しかし、企業投資家だったら、「損失」は証券会社がカバーしてくれるのです。まことに不公平な仕組みです。許せません。ゼニカネ一本槍の人間はそれでいいのかもしれませんが、やはり世の中は、それだけですまされたくはありません。
国政を私物化するような政治家、目先の利益しか念頭にない大企業には退職・廃業してもらう必要があると私は思います。この本を読んで、ますますそう思いました。
(2017年2月刊。1600円+税)

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2017年7月20日

北朝鮮、終りの始まり

朝鮮(韓国)

(霧山昴)
著者 斎藤 直樹 、 出版  論創社

本文500頁近くもある堂々たる大作です。北朝鮮の現代史をあますところなく論述していて、説得力があります。まずは現在の金正恩政権をどうみるか、です。
金正恩を後継者に選任するよう金正日に助言したのは、金正日の妹婿の張成沢だった。このとき金正恩は30歳にもなっていない青年。金正日は金正恩を補佐する後見人役を張成沢と夫である実妹の金敬姫に託した。この決定を意外と思ったのは、当時の組織指導部を牛耳っていた第一副部長の李済剛などの幹部たち。
金正日は、2011年12月17日に亡くなった。そして、2年後の2013年12月、張成沢が粛清された。
張成沢は2回も失脚し、左遷されながらも、復権を果たした人物である。
張成沢の取り仕切る党行政部は、権力中枢を占める党組織指導部、朝鮮人民軍、国家安全保衛部の幹部達と激しい利権争いを繰り広げた。
張成沢は金正恩を動かし、不可侵ともいえる朝鮮人民軍の利権を侵食しようとした。これに対して、朝鮮人民軍総参謀長・李英浩の配下は張と党行政部に対して激しい恨みをもった。総参謀長の解任が張成沢に対する人民軍の敵対心を一層強めたことは間違いない。
張成沢は、朝鮮労働党中央委員会行政部長、朝鮮労働党政治局委員、国防委員会副委員長などの要職を手中に収め、金正恩指導部で事実上の権力を掌握し、しかも中国指導部から北朝鮮における最も重要な人物の一人であると認知された。ところが、これについて北朝鮮の支配層のすべてが歓迎していたわけではなかった。
2013年7月、張成沢が催した盛大な酒宴の場で、側近たちが「張部長同志、万歳」と礼賛した。ところが「万歳」は、北朝鮮の最高権力者のみに許されたものだった。それを知って「万歳」したということは、張成沢が最高権力者を企むものという格好の口実を与えることになった。
張成沢は、朝鮮人民軍と外貨獲得競争で激しくしのぎを削った。漁業権は、朝鮮人民軍にとって重要な利権の一部であった。ところが、その漁業権が張成沢の取り仕切る党行政部が握るようになり、朝鮮人民軍幹部の怒りを買った。
2013年9月、金正恩は張成沢の側近たちをまずは逮捕して処刑した。そして12月には、張成沢を逮捕して、死刑判決が下され、即日処刑された。
張成沢は国家転覆陰謀行為に該当する。凶悪な政治的野心家、陰謀家、希代の友逆者というレッテルを貼られた。
祖父・金日成、父・金正日という二人の金は、自身の権力基盤に刃向う者たちに対して仮借なき粛清を続けながら、自身の権力基盤の確立と安定を図った。その意味で、金正恩が叔父にあたる張成沢を刃にかけたことも理解できる。金日成にはじまり、金正日を経て金正恩に至る三代にわたる金体制を通じて一貫して流れるのは、独裁体制の確立とその堅持のためには仮借なき粛清を常としてきた。金正日の葬儀で代表をつとめた7人のうち、これまで張成沢を含めた5人が既に排除されている。
金正日時代にまして、金正恩体制の権力構造は不透明で不確実であり、権力基盤は必ずしも盤石であるとは言いがたい。金正恩が朝鮮人民軍と手を組んでいる限り、「先軍政治」が優先され、中国や韓国などとの経済協力路線はなかなか進まない。金正恩は、基本路線として、経済再生と先軍政治の双方をかかげている。しかし、この二つは、本質的に相友するものなので、板ばさみにあうのは必至である。
いつ倒れるのか、周囲はひやひやしながら見守っているのに、なかなか倒れないという不可思議な国です。北朝鮮がミサイルを打ち上げるタイミングは、日本の支配層が苦境にあって、内政から目をそらしたときのことが多いという奇妙な現象があります。骨は折れますが、一読する価値が十分にある北朝鮮の研究書です。
(2016年3月刊。3800円+税)

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2017年7月21日

満蒙開拓団

日本史(戦前)

(霧山昴)
著者 加藤 聖文 、 出版 岩波書店

「五族協和」、「王道楽土」、こんな美しい掛け声で、多くの貧しい日本人が夢をみて戦前の満州に渡り、悲運に泣いたのでした。もちろん、騙した政府当局者が悪いのですが、騙されたほうも、時勢に流されてしまった結果だった。やはり、みるべきことは見ておかないといけない、言うべきときには言わないと、もっと悪くなるということなのですよね。今のアベ政権のデタラメきわまりない政治のあり方を黙過していたら、戦前の悲劇を再びもっと大規模に繰り返すことになってしまいます。
長野県は満州へ送り出した開拓移民が4万人近くで、日本一多かった。二位の山形県は半分の1万7千人。そして、満州開拓政策に重要な役割を演じた人物も、なぜか長野県出身者が多い。
満州事変を起こした関東軍は、早くから日本人移民に積極的だった。それは、満州を日本の領土とするうえで、日本人があまりにも少ないという認識から。ところが、陸軍中央は消極的だった。あまりに露骨に日本領土化を進めることによる国際社会からの猛反発を買うのを恐れた。関東軍は、満州が独立国家という建前をとる以上、国家内での日本人の人口比率があまりにも低いのは問題だと考えた。
満州移民に対して、陸軍は一枚岩で積極的ではなかった。陸軍中央には懐疑的な人が少なくなかった。満州移民は、それぞれの個人や組織の政治的思惑が異なるなかで、関東軍と拓務省が連携し、それを陸軍中央が追認した。それを在郷軍人会が積極的に後押しして、軍事色の強い武装移民となった。
満州の土地所有制度は複雑で、権利関係が入り組んでいたから、日本による強引な土地買収は、現地を混乱させた。
開拓民は、月給100円という宣伝文句につられてやってきたのに、現実は、食費として1ヶ月5円しか支払われなかった。そこで、故郷から送金してもらっていた。召集を免れられるという風評を信じて開拓民に応募した人もいたが、現実には、あとで日本の敗色が濃いなかで兵士とされ、家族と引き離された。
満州に侵入してきたソ連軍は174万人(日本軍は60万人)、火砲・戦車・航空機の数量では25倍以上と、日本軍を圧倒した。
当時の国際的通年からすると、開拓団は軍事組織と見なされていた。ところが、当事者は、日本国内にいくつもある「村」としてしか認識しておらず、関東軍が守ってくれる以上、軍事攻撃にさらされるなどとは露ほども思っていなかった。
満州に渡った開拓団は928団、24万人。これに対して、戦後、無事に日本に帰国できたのは14万人でしかない。
満蒙開拓団の実際を冷静に、多面的かつ深く掘り下げた本でした。
(2017年3月刊。2200円+税)

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2017年7月22日

足利尊氏

日本史(室町)

(霧山昴)
著者 森 茂暁 、 出版 角川選書

足利尊氏の実相に迫った本として、興味深く読みとおしました。なにより後醍醐(ごだいご)天皇との関係については目新しい説であり、なるほどと驚嘆してしまいました。
そして、足利尊氏は聖なる天皇に反抗した「逆賊」なのかという点の考察にも感嘆するほかありませんでした。足利尊氏逆賊説は、狂信的な南朝正統論の落とし子だった。
足利尊氏は後醍醐に対して、最後まで報謝と追幕の念を抱いていた。
足利尊氏と後醍醐とは、政治的また軍事的に対立する立場に立ったことは事実だが、かといって尊氏が後醍醐を追討や誅伐(ちゅうばつ)の対象とした事実は史料的に裏付けられてはいない。
足利尊氏は後醍醐に対して明確な謀叛(むほん)を企んだとはいえないので、尊氏に「逆賊」というレッテルを貼るのは、歴史事実のうえからみて、御門違い(おかどちがい)と言わなければならない。
足利尊氏は歴史的人物であるが、その評価は、英雄と逆賊の間をゆれ動いた。これほど、評価の振幅の大きい人物は、日本史においては珍しい。
後醍醐天皇の主宰する建武政権の存続期間は、2年半ほど。
御教書(みぎょうしょ)は、どちらかというと、私的性格をもつ文書。下文(くだしぶみ)は所領をあてがう公的文書。
尊氏の尊は、後醍醐天皇の偏諱(へんき)の尊をもらって「高氏」を「尊氏」としたもの。尊氏は、20ヶ国にわたる45ヶ所の北条氏旧領を天皇から獲得した。
恩賞納付のための文書の様式として、鎌倉将軍にならって袖判下文(そではんくだしふみ)を初め発給した。
歴史上に有名な人物を見直すことができる本でした。
(2017年3月刊。1700円+税)

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2017年7月23日

アガサ・クリスティーの大英帝国

イギリス

(霧山昴)
著者 東 秀紀 、 出版 筑摩選書

アガサ・クリスティーの推理小説は、私も何冊か読んでいます。読むたびに、そのトリックと推理の見事さに驚嘆したものです。
アガサ・クリスティーを、観光ミステリ作家と形容する人がいるそうです。なるほど、「オリエント急行殺人事件」など、観光地を舞台としていますよね。アガサ・クリスティーの2番目の夫は考古学者で、オリエントの発掘現場にも行っていたそうです。その体験が本に生かされています。
日本で観光ミステリ作家と呼べれる一人に松本清張のミステリがある。あれほど登場人物たちに日本各地を出張の形で回らせなければ、戦後日本を代表するベストセラーにはならなかったのではないか・・・。多くの読者が、小説を読んで旅への願望を紛らわせ、出張の際に各所に立ち寄っていた当時の日本人をあわわしている。
松本清張の本のなかに、南フランスの「レ・ボー」という村を舞台とするものがあります。私も、タクシーに乗って出かけました。列車の駅から遠く離れているところですので、レンタカーを借りるか、タクシーに乗らなければいけないのです(もちろん、ツアーに加わればいいのですが・・・)。岩だらけのアメリカの西部劇映画に出てくるような村でした。
アガサ・クリスティーの描いた小説の舞台は、二つの大戦の間の束(つか)の間の平和。そして、その時期の大英帝国の栄華。
アガサ・クリスティーが前夫との離婚話の起きた1926年に失踪事件をひきおこしたということを初めて知りました。そして、本人は真相を死ぬまで明らかにしなかったというのです。よく出来たミステリーを考えた作家は、なんと自分の人生にもミステリーを秘めていたわけです。
1930年代に、アガサ・クリスティーは、毎年2作のペースでミステリを世の中に送り出した。1年に5作という年もあります。驚くべき多作です。私が読んでない本がこんなにたくさんあるかと思うと、ぞっとしてしまいました。
ヒトラーが登場してくる本もあるようです。その本のなかで、ヒトラーは、当時のイギリス人の多くが望んでいたように、平和を望んで引退するというのです。まさしくチェンバレン首相と同じく、著者もヒトラーへの幻想に踊らされていたのですね。
アガサ・クリスティーのミステリー小説を改めて読んでみようという気にさせる本でした。
(2017年5月刊。1600円+税)

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2017年7月24日

バッタを倒しにアフリカへ

アフリカ

(霧山昴)
著者 前野 ウルド浩太郎 、 出版  光文社新書

いやあ、面白いです。文句なしに面白い本です。なにしろ、アフリカの地でときに大量発生して猛威をふるい大災害をひき起こすサバクトビバタの生態を解明し、その対策に貢献している日本の若手学者がいるというのです。その苦労話ですから面白くないはずがありません。私は1時間の車中、身じろぎもせず集中して、全身全霊を傾けて没入してしまいました。幸い、私の降りる駅は終点でしたから、乗り過ごすこともなく、無事に降りることが出来ました。車内放送も何もかも耳に入らず、ひたすらアフリカの大地を著者とともにサバクトビバッタを求めてさすらっている心境でした。
実は、著者の本を読んだのは2冊目です。前に、このコーナーで紹介しました『孤独なバッタが群れるとき』(東海大学出版部)も面白かったのですが、この本は、さらに面白い。というのも、科学者の論文づくりの裏話というか、苦労話が満載なのです。
ブログで人気を集めていいたらしいのですが、著者の本が面白いのは、プロによる文章指導があることも知り、なるほど、なるほどと納得しました。
私も、モノカキを自称していますから、文章を書くのは一向に苦になりませんし、そこそこの文章は書けます。ところが、人を泣かせる文章にまでは、はるか道遠しです。そして、後進の、とりわけ弁護士の文章は、見るも無惨なのです。少しは読み手のことも考えて読みやすい文章を書いてくださいな・・・。そんな気持ちから、せっせと赤ペンを入れています。
アフリカのモータリニアには、驚くほど親日家が多い。モータリニアでとれるタコは、日本のマダコと食感、そして味が似ていて、日本人好みだ。だから、「築地銀だこ」は誇りをもってモーリタニア産のタコを使っている。
砂漠にあるオアシスは、現実にはドス黒く濁った水を茶色の泥が囲み、そのほとりには、水を飲みに来た動物たちの足跡だらけの糞だらけで、とにかくクサい。オアシスの正体は、不愉快な水たまりでしかないというのが悲しい現実だ。
バッタは、漢字で飛蝗と書き、虫の皇帝。バッタとイナゴの違いは、相変異を示すか示さないか。相変異を示すものがバッタで、示さないものがイナゴ。
バッタの英語名は、ラテン語の焼野原から来ている。バッタが過ぎ去ったあとは、緑という緑がすべて消え去ることからきている。
サバクトビバッタは、混みあうと変身するという特殊な能力をもっている。まばらに生息している低密度下で発育した個体は孤独相と呼ばれ、一般的な緑色をしたおとなしいバッタ。お互いを避けあう。ところが、まわりにたくさんの仲間がいる高密度下で発育したものは、群れをなして活発に動きまわり、幼虫は黄色や黒の目立つバッタになる。これらは群生相と呼ばれ、黒い悪魔として恐れられる。
ふだんは孤独相のバッタが混みあうと群生相に変身するが、この現象を「相変異」と名づける。ひとたび大発生すると、数百億匹が群れて、天地を覆いつくし、東京都くらいの広さの土地がすっぽりバッタに覆い尽くされる。
そして、成虫は風に乗って、一日100キロ以上も移動するので、被害は一気に拡大する。地球上の陸地面積の20%がバッタの被害にあい、年間被害総額は西アフリカだけで400億円にもなり、アフリカの貧困に拍車をかけている。
著者は生粋の秋田っ子なのに、虫好き人間として、ついにはアフリカにバッタの大量発生を喰いとめる研究者の一員にももぐり込んだのでした・・・。いやあ、その涙ぐましい努力には身につまされるところがあります。
そのうえ、アフリカの地で日本人がサバクトビバッタの研究に日夜、全身で没入して少しずつ成果をあげていく様子に、読んでいて拍手を送りたくなりますし、こちらが励まされます。
また、表紙の写真がいいのです。緑色のアフリカ衣装を着て、バッタを今にも捕まえようと著者が身構えています。
バッタが大量発生するとしても、それがいつなのか、どこが始まりなのか、まだまだ十分に解明されていないということばかりだそうです。
380頁もある新書版ですが、少しでもアドベンチャー精神がある人には一読を強くおすすめします。ちなみに、私にはもはや冒険心は残念ながら乏しいです。身体の若さはなくしてしまいました。だから、こういう冒険小説のような本には心が惹かれるのです。
(2017年7月刊。920円+税)

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2017年7月25日

シリアからの叫び

シリア

(霧山昴)
著者 ジャニーン・ディ・ジョヴァンニ 、 出版  亜紀書房

シリアで内戦が始まって、もう何年にもなります。
「戦争は、いつ終わるの?」 この子どもの素朴な質問に対して、「もうじき終わるのよ」と答えるとき、胸が痛むと書かれていますが、まったくそのとおりです。シリア内戦が始まってからの5年間で、シリア国民の平均寿命が79.5歳から55.7歳にまで20年以上も縮まったとのこと。哀れです。
推定死者は47万人。負傷者は190万人。殺害されたジャーナリストは94人。
イスラム教徒は、死者を死んだ当日の日没前に埋葬しようとする。死者の名誉を称えるた
めに。湯灌(ゆかん)させ、白い死装束を着せる。葬儀の祈りを唱える。頭がメッカの方向を向くように埋葬する。
普通の人々にとって、戦争は何の前触れもなく始まる。娘たちのために歯医者の予約を
し、バレエのレッスンを手配していたのに、突然、カーテンが下りる。ATMは機能し、携帯電話もつながり、日々の習慣は続いていたのに、突然、何もかもが停止する。
バリケードが築かれる。徴兵がおこなわれ、近隣では自衛団ができる。政府高官が暗殺
され、国は混沌に向かっていく。父親が消える。銀行は閉鎖され、富も文化も生活も一気に消滅する。
戦争とは、破壊。骸骨、そして人の生命の抜け殻。
昔の世界は、すっかり消えている。煙草の煙のように・・・。
戦争とは、延々と待つこと。
 終わりのない退屈。ここには電気もテレビもない。
本は読めず、友だちにも会えない。絶望が深まるが、それを燃やす方法はない。
ここには、ほとんど何も残ってない。パンを焼くための動力がなかった。料理をするガスがな
かった。ここでの生活は欠乏だらけだった。
ここで生きていくために重要な二つのルールがある。一つは、政府軍の摘発を受けずに身
を守ること。もう一つは、食料を見つけること。
戦時下の人々の生活はすさんだものだった。だれも停戦など気にかけない。戦時下では、
もっともなことだけど、犯罪と不信と悲嘆しかない。
シリアの人々の苦難な状況がなんとなく分かった気になりました。
著者は、シリアの現状を現地まで出かけて取材したのというのですから、その迫力は並み
たいていではありません。いったい全体、誰がこんな戦争するのか当たり前の状況になったのでしょうか・・・。シリアの近況を写真とともに見ることの出来る本です。
(2017年3月刊。2300円+税)

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2017年7月26日

スパイの血脈

アメリカ

(霧山昴)
著者 ブライアン・デンソン 、 出版 早川書房

信じられない実話です。アメリカ軍の兵士がCIAに入り、アメリカという国を守って活動しているうちに、家族(子ども)を守るためと称して、お金のためにソ連(ロシア)にCIAの機密情報を売り渡し、それが発覚して刑務所に入ったあと、今度は、その息子が父親に頼まれて同じようにロシアに父親からの情報を流して大金をもらっていたというのです。この息子もアメリカ軍の兵士でした。いやはや、スパイが父親相伝することもあるのですね。信じがたい実話です。
父親のジム・ニコルソンは1980年にCIAに入ったあと、マニラ、バンコクそして東京で勤務したあと、ブカレスト支局長に昇進した。そして、1994年、クアラルンプール駐在時にロシアの情報部員に接触し、情報を売り渡すようになった。そのあと、CIAの訓練所の教官になり、監視のためCIA本部につとめていたところを1996年に逮捕され、翌1997年に懲役23年7ヶ月の判決を受けて刑務所に収容された。
ここで物語が終わらないところが本書の目新しさです。父親がスパイとして逮捕されたとき12歳だった息子のネイサンを、受刑して7年後に、父親は獄中からロシアに連絡することが出来たのです。それほど、父子の関係は親密でした。ちなみに妻(母)とは離婚して音信不通、他の姉兄は関わってはいません。
いったい、刑務所に入れられた元スパイのもたらす情報がいかほどの価値があるものなのか、門外漢には理解できないところですが、ロシアのほうは気前よく100万円単位で息子に報酬を支払っていました。つまり、スパイを摘発したときのCIAの人事・役割分担などについて知ることはロシアにとっても有益な情報だったということです。
それにしても、CIAにはロシアに情報を売るスパイがいて、ロシアのKGBにもアメリカへ情報を流すスパイがいたというのに改めて驚かされます。いずれも、イデオロギーより、金銭目当てのことが多いようです。
本書の主人公の父親も妻と離婚し、子育てにお金がかかり、新しい女性との交遊のためにもお金がほしかったようです。
父が、子どもたちを養うためにロシアのスパイになったと高言したとき、それを聞かされた当の息子はどのように受けとめるのでしょうか・・・。
息子のネイサンは実刑判決ではなく、5年間の保護観察と退役軍人省での100時間の社会貢献活動が命じられただけだった。
CIAとFBIの関係、そしてKGBとその後身の関係も興味深いものがあります。
スパイする人、その家族、その監視をする人、その家族、いずれもフツーの平凡な家庭生活は保障されていないのですね。大変な職業であり、仕事だと思いました。だって、対象者の会話を24時間ずっと盗聴して異変をつかむのが仕事だというのって、やり甲斐というか、生き甲斐を感じるのでしょうか・・・。私にはとても我慢できませんね・・・。
人間の本質を知ることのできる貴重な本だと私は思いました。
(2017年5月刊。2000円+税)

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2017年7月27日

私の愛すべき依頼者たち

司法

(霧山昴)
著者 野島 梨恵 、 出版  LABO

若手弁護士の奮闘記。なるほど面白いです。文才があるのでしょう、読ませます。
私の敬愛する中村元弥弁護士(旭川)の推薦文がついています。
クマチン先生こと中村弁護士は読み手の弁護士を挑発します。自分の扱った事件を、この本くらいに面白く伝える工夫と努力をしたか、そんな才能をもってるかと問いかけるのです。
すみません、たしかにそんな文才がないので、相変わらず、しがない田舎弁護士を続けています。
われらがノジマ弁護士は北海道は旭川ではなく、さらに士別市で法律事務所を開業します。旭川には行ったことが何回もあります(旭山動物園にも2回・・・)が、士別市には行ったことがありません。冬は大変のようです。自動車の運転は生命がけなのですね・・・。
そして、ノジマ弁護士も、冬道でスリップして死にかけ、夏にはスピード違反で、危く被疑者、被告人そして免許取消へ・・・(そうはなりませんでした・・・、えかった、えかった)。
私は国選弁護人として、ヤミ金をやっていた若者を弁護したことがあります。暴力団とは関係のない若者がネット情報だけで、ヤミ金をやっていたという調書を読んで驚き、かつ呆れました。
ノジマ弁護士は振り込め詐欺の一味に加わった若者の国選弁護人になるのです。「週休2日で手取り月収30万円。毎日、電話をかけるだけ」。こんなおいしいキャッチフレーズ求人誌にのっているそうです。今どきありえない好条件ですよね。何かウラがあるに決まっています。いったん入ったら、抜けようとすると、リンチされること必至のヤクザな暗黒世界。本当に怖い世の中です。そして、そんな若者の伴侶は、ベターハーフと言えるのか、単なる金の成る木なのか・・・。金の切れ目が縁の切れ目、男は実刑になって刑務所に行き、よよと泣いていた女はすぐに別の男を見つけて・・・。
こんなストーリーを短編で見事に描けるわけですから、文才のあること間違いありません。
刑事弁護人の次は、家事代理人。北海道は、九州と同じく離婚率が高くて有名です。雪に閉じ込められて冬にはすることがなくなるので、離婚が多いというのです。では九州・沖縄で離婚事件が多いのは、どうしたわけでしょうか・・。
北海道では不貞は、すぐにばれる。なぜか・・・。
第一に、人口密度が低いから、目立つ。
第二に、行動が車なので、所在が知られやすい。
第三に、デートする場所が限られている。
ふむふむ、ここでは不倫しようったって、すぐにバレそうなんですが、そこは恋は盲目なので・・・。そして、ノジマ弁護士は断言する。それこそ、まさしくメシの種。弁護士たるもの、正面切って、このどろどろの中に頭から突っ込んでいって、成功報酬を勝ちとらなければならない。
うんうん、そうなんですよ、ノジマ先生・・・。
そして、そうやって、このどろどろとした状況と、どろどろに浸り切った依頼者とに真正面から取り組んでいけば、きっと、それからの弁護士の長い人生の糧(かて)になるのです・・・。
交渉にのぞむときには、ぎりぎりに約束の時間位飛び込むのはまずい。交渉の舞台には先に到着しておくべき。交渉の場所と空気にある程度慣れ、ここに相手が来て、やりとりをする場所を想像して、イメージトレーニングをしておく。これが大切。
いやあ、ノジマ弁護士の言うとおりなんですよ。私も、絶えず、イメージトレーニングをしています。もちろん、すべては想定どおりにはいかないのですが、それでもそれができるくらいの心の余裕があるのがいいのです。
ノジマ弁護士は、今は東京で活動しているとのことですが、田舎弁護士の良さを忘れないでほしいものです。
(2017年6月刊。1500円+税)

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2017年7月28日

凛とした小国

キューバ

(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版  新日本出版社

コスタリカ、キューバ、ウズベキスタン、ミャンマーの良さは日本も大いに学ぶべきだと思いました。とりわけ世界有数の自然環境保全国でもあるコスタリカの話は感動的です。心が揺さぶられます。
コスタリカは、「世界で一番、幸福な国」で1番にあげられている。日本は、51位でしかない。コスタリカは、1949年、日本に次いで世界で2番目に平和憲法をもった。日本と違うのは、本当に軍隊をなくしてしまったことです。それまで、軍事費が国の予算の3割を占めていたのを、そっくり教育費に充てました。教育も医療も無料。兵舎(参謀本部)は博物館になりました。軍艦も、戦闘機も戦車ももっていない。警察と国境警備隊はある。ただし、いざとなれば、自衛のための軍隊は結成できることになっている。
コスタリカは、周囲の国で内戦が続いたけれど、幸い平和な国であり続けた。「自分たちにとってもっとも良い防衛手段は、防衛手段をもたないこと」
私は、まさしく本当だと思います。決して「平和ボケ」のコトバではありません。
コスタリカでは、大統領選挙があると、小中学校はもちろん、幼稚園児も模擬投票する。
コスタリカでは、小学校に入ると、子どもたちは、「だれもが愛される権利をもっている。この
国に生まれた以上、あなたは政府や社会から愛される」と教えられるそうです。
日本でも道徳教育のときに、これを教えたらいいと私は思います。
そして、コスタリカでは憲法訴訟が1年間に2万件近く提起され、最終的に2割近くが違憲
だと判断されるといいます。これはともかくすごいことです。
 コスタリカは周辺国からの難民もすべて受け入れており、400万人だった人口が500万人になったそうです。信じられない数字です。
 コスタリカの人々は、幸せな社会を自分たちでつくりあげているという意識にみちているようです。すばらしいです。
 先日の国連における非核平和条約を制定する議会でもコスタリカの女性が委員長として大活躍していましたよね。日本も平和憲法、9条をさらに実現する運動が必要だと思います。
 ほかのキューバ、ウズベキスタン、ミャンマーについては、ぜひ、本書を読んでみて下さい。読んで決して損はしない本です。
(2017年5月刊。1600円+税)

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2017年7月29日

鳥を識る

(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  春秋社

鳥だって夢を見るし、寝言をいうというのです。ええっ、ま、まさか・・・と思います。しかし、たしかに人間と話せる鳥がいるのは間違いありません。
あくびだって、人間と同じように移るのです。セキセイインコで確認されています。
インコ科のヨウムという鳥は、うるさい音をたてる人間に対して「あっちへ行け」と叫んだり、用があるときには「ここに来て」とお願いすることができました。鳥と人間とのあいだで、対等に言葉をつかってのコミュニケーションが成り立つことが実証されたのです。アレックスと呼ばれた、このヨウムは31歳で亡くなってしまいましたが、人間との会話が自由にできていました。
人間の場合、遊びをするのは大人になる前の子ども。ところが、鳥だと、遊ぶのは基本的に成鳥(大人)。脳が発達していくにつれて、遊びたがるようになり、その遊びも高度になる傾向がある。つまり、鳥は人間と同じで、遊ぶのです。
そして、鳥のなかには、道具をつくる文化をもつものもいます。ニューカレドニア島のカレドニアガラスは、エサをとるための道具を自分でつくり、それを使いこなします。
鳥のなかには、人間の音楽にあわせて声を出しながら全身で踊ってみせるのもいます。スノーボールと呼ばれるキバタンの動画がユーチューブで確認できます。
現在、世界には3000億羽の鳥がいる。最小のマメハチドリは体長5センチ、体重はわずか1.7グラム。もっとも大きいワタリアホウドリは、翼を広げると、3.7メートル。ダチョウの体重は100キログラムをこえる。
私が小学生のころ、我が家でもジュウシマツを飼っていました。ジュウシマツは江戸時代の日本で品種改良して誕生した小鳥です。わずか200年間で、祖先の鳥(コシジロホンパラ)には認められない複雑なさえずりを展開するようになった。
鳥の祖先は恐竜だというのは、今では確定した定説です。でも、不思議なことですよね。絵本に出てくる超大型恐竜が絶滅したのではなくて、鳥として今も生き残っているというのです。
鳥を識るというのは、人間を識り、生物を識るいうことだと思いました。
(2017年3月刊。1900円+税)

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2017年7月30日

12人で「銀行」をつくってみた

社会

(霧山昴)
著者 岡田 晴彦 、 出版  ダイヤモンド社

私自身は銀行に行ったことは久しくありませんし、ATMを利用したことは一度もありません。ですから、振り込め詐欺の被害者にはなりようがありません。また、コンビニも、出張したとき以外に入ることはありません。ケイタイはもちろんガラケーで、スマホはつかっていませんし、使う気もありません。
この本は、インターネットバンキングの創立過程の「生みの苦しみ」を明らかにしたものです。
2000年(平成12年)10月に開業したジャパネット銀行は日本初のインターネット専業銀行だった。インターネット専業銀行とは、実際の店舗をもたないで、インターネット上で各種サービスを提供する銀行のこと。インターネット銀行は実店舗がないし、預金通帳も発行されない。そのため業務コストが低く抑えられるので、預金金利はいくらか高く、手数料も少し安い。なにしろ24時間、365日、いつでも振込、振替そして残高照会などのサービスが利用できる。
インターネット専業銀行は1999年10月、メンバー12人による準備室の発足から始まった。非対面での本人確認のやり方について、試行錯誤を重ねた。
インターネット専業銀行であるジャパネット銀行は、決済手数料を収益の柱としている。し
たがって、たくさん残高のある人よりも、たくさん利用してくれる客のほうがありがた。
インターネット専業銀行では、取引回数こそが重要になってくる。つまり、インターネット銀
行とは、顧客のターゲットが異なるということ・・・。
ジャパネット銀行では、銀行員のやることをすべてユーザー自身にやってもらう。そのことに
よって、客が取引に自覚するようになる。
ジャパネット銀行では、毎月の月初めに利息をつけるというサービスをしている。
ジャパネット銀行の自己資本比率は、30.1%で、国際基準を大きく上回っている。
いやあ、世の中の進歩についていくのは本当に大変なことです。
(2017年2月刊。1500円+税)

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2017年7月31日

スリープ

人間

(霧山昴)
著者 ショーン・スティーブンソン 、 出版 ダイヤモンド社

最高の脳と身体をつくる睡眠の技術、というのがサブタイトルです。
ぐっすり眠れるのが、私の健康を支えてくれています。車中でも居眠りはしますが、基本的に車中は貴重な読書タイムです。
睡眠は、人生の隠し味だ。睡眠不足は、ガン・アルツハイマー病・うつ病・心臓病にかかる確率を高める。睡眠は量より質。8時間寝ても、毎朝、疲れがとれずにぐったりとした気持ちで起きている人はたくさんいる。健康な身体のもと、幸せで充実した人生を過ごすカギを握るのは、良質な睡眠である。
睡眠を健全にしない限り、健康にはなれない。睡眠を定義するのは人生を定義するようなものだ。完璧に理解している人は誰もいない。眠ることで身体が再生され、若さが保てる。
良質な睡眠をとると、免疫系が強化され、ホルモンバランスが安定し、新陳代謝が促進される。身体のエネルギーが増加し、脳の働きも改善される。
目覚めているときの脳にはたくさんの老廃物が絶えずたまっていくが、そのほとんどは、睡眠のもつ修復の力で除去される。
体内時計がもっとも敏感に反応するのは、早朝の午前6時から午前8時半までの太陽光だ。私は、毎朝、目が覚めたら真っ先に雨戸を開けて太陽光を室内にとり入れます。
夜にパソコンやスマホなどの我慢を見る時間を減らす。これらは睡眠を奪い、睡眠不足をもたらす。眠くなったら、すぐにインターネットから離れる。
身体が必要としている深い睡眠をとるには、少なくとも寝る90分前には、あらゆる画面の電源を切ること。私は、今もガラケーですし、自宅でパソコンを扱うこともありません(扱えないのです)。そのおかげなのでしょう、すぐに入眠できています。
午後10時から午前2時のあいだに睡眠をとるのが、ホルモンの分泌や疲労回復に最大限の効果がある。
健康を一番に考えるなら、夜間シフトで働いてはいけない。睡眠サイクルを頻繁に変えるのもいけない。二交代や三交代、夜勤専門という人はとても多いわけですが、気をつけなければいけないようです。
夜に運動するのは体深部の温度を上げてしまうので、睡眠のためにならない。
この本には、ブラジャーをつけたまま寝る女性は、乳ガンを発症するリスクが60%も高くなると書かれています。うひゃあ・・・、と叫びたくなりました。世の中の女性のみなさん、気をつけましょう。美乳より健康ですよ・・・。
身体を締めつけない、ゆったりしたパジャマで、あれこれ深く悩まずにぐっすり眠りたいものです。明けない夜はない・・・、のです。
(2017年6月刊。1500円+税)

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