少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(30・5月号)

1 はじめに

今回、私が担当しました少年事件について、ご報告させていただきます。吉野隆二郎先生のご指導の下、付添人活動を行いました。

2 事案の概要

本件は、少年が、複数の友人・知人とバイクで蛇行、逆走などの集団暴走を行ったという共同危険行為の事案でした(以下「本件非行」といいます)。少年は、本件非行当時18歳の飲食店アルバイト従業員で、本件非行の首謀者でした。

3 活動の内容

(1) 初回面会

道路交通法違反事件として出動要請があり、正当番の吉野隆二郎先生と共に接見に行きました。少年は、「少しでも早く外に出たい」、「少年院には行きたくない」と述べており、共同危険行為の首謀者とは思えないほど憔悴した様子でした。また、少年は年齢より幼く見えましたが、一方で、礼儀正しく挨拶や敬語を欠かさない真面目な少年でした。

(2) 観護措置を取らない旨の意見書の提出

少年が、勾留当初から、本件非行について反省し、アルバイト先が繁忙期で、面倒を見てくれた社長に迷惑をかけたくないと述べていたことから、観護措置を取られないようにするための意見書を提出することにしました。

そのために、同居していた少年の母、本件非行に使用したバイクの所有者である兄、アルバイト先の社長と面会を行いました。

兄は、日頃から少年のバイクの乗り方や生活態度を気にかけていたこともあり、バイクが戻り次第処分してくれることを誓約してくれました。また、アルバイト先の社長は、少年が中学を卒業して働き始めて以降、少年の働きぶりが真面目であったこともあり、仕事を通じた監督と社会復帰後の継続雇用を誓約してくれました。

その後、母を含めた3人分の上申書と合わせた観護措置を取らないのが相当である旨の意見書を提出しましたが、観護措置を取られることになってしまいました。

観護措置が取られてすぐに少年と面会したところ、とても不安そうな様子でしたが、「やってしまったことを振り返る時間にしよう」と話をし、審判へ向けた準備をすることにしました。

(3) 調査官との面談

少年との定期的な面会を継続する一方で、付添活動の方向性を確認するために調査官面談を行いました。

調査官から、(1)少年が本件非行の首謀者であること、(2)少年の資質について、普段は仕事を頑張っており真面目な性格である一方で、考えが甘く「暴走」と「ツーリング」の区別が曖昧であること、(3)家庭環境について、母が甘やかしている部分もあり、次に同種非行を行ったら少年院送致以外の選択肢が無いことを認識してもらう必要があることの指摘を受けました。

これまでの接見や鑑別所での面会を通じて感じたところと大きく異なることもなく、率直な意見交換ができ、少年院送致がなされなかった場合に付添人も協力することを確認しました。

(4) 審判へ向けて

まず、少年の反省を深めるべく、面会の度に反省文を書いてもらい、次回面会時までの課題を出すことにしました。初めは、「他人に迷惑をかけた」「悪かった」という抽象的な内容でしたが、面会を重ねるにつれて、「暴走行為を主催したことで、参加した仲間やその家族にまで迷惑をかけてしまった」などと反省が深まっていきました。

また、勾留当初渋っていた携帯電話番号の変更についても、バイク仲間から暴走行為に誘われる可能性や拒否することの難しさについて理解を示し、少しでも再非行の可能性を減らすべく、少年自ら母親へ手紙を書いて、変更手続を行うことができました。

審判前日は、とても緊張した様子でしたが、これまでの反省の深まりを振り返りつつ、趣味の話をしたり、友達の話をしたりしながら過ごしました。

(5) 審判

審判では、緊張しつつも、これまで反省したことをしっかり述べることができ、試験観察となりました。

(6) 試験観察

試験観察中は、調査官との面談の間を埋めるように付添人との面談を行いました。面談では、調査官に提出する日記を見せてもらったり、バイクの保管状況について尋ねたりしながら遵守事項違反がないかを確認し、アルバイトの稼働状況などの日々の生活のことを尋ねました。

また、試験観察中に数日間ボランティアを行うことが決まっており、少年は、障がい者施設へ4泊5日間のボランティアへ行きました。初日は、入所者とうまくコミュニケーションを取ることができず、食事をすることもできなかったそうです。しかし、一緒に農作業などを行うことを通じてコミュニケーションを取れるようになり、少年の収穫した農作物を楽しみにしていた入所者のために作業を頑張れたそうです。ボランティアに行ったことで、「障がい者に対する価値観が大きく変わり、貴重な体験ができて良かったです」と言った少年に大きな成長を感じました。

(7) 最終審判

当初より反省していたことに加え、試験観察中も何の問題もなく過ごし、ボランティアを通じた経験等も評価され、審判の結果は、保護観察処分となりました。

4 おわりに

(1) 18歳の少年に対する付添活動等

私は、本件の付添活動が始まる前に、子どもの権利委員会の委員として、「少年法適用年齢引下げ問題」に関するシンポジウムに関わっておりました。シンポジウムの準備を進める中で、18歳の少年が未熟である反面、可塑性に富んでいること、通常の刑事手続と異なる少年事件の手続(付添活動)の重要性ということを何度も耳にし、頭では理解していたつもりでした。

今回の付添活動を通じて、18歳の少年の可塑性を実感するとともに、仮にこの事件が少年事件手続によらず、通常の刑事手続によって執行猶予付き判決がなされていたら、少年は自らの非行と向き合うことはできたのだろうかと考えました。

また、今年は、全面的国選付添人制度を実現するためのシンポジウムの開催も予定されています。本件は、共同危険行為の事案であり、必要的国選付添人対象事件ではありませんでした。本件のような事案で、付添人の援助が受けられずに、少年にとって不利益になることは避けなければならず、全面的国選付添人制度実現の必要性も感じました。

(2) 謝辞

初めての付添活動でしたが、吉野隆二郎先生のご指導の下、無事に付添活動を終えることができました。吉野先生には特に、時間的な制限のある付添人活動において、少年の家族、勤務先の社長、調査官との面談の計画を迅速に立てていただいたり、試験観察中の少年との面談の計画についてアドバイスをいただいたり、大変勉強させていただきました。事件の見通しについて、的確にアドバイスを受けることで少年やその家族も安心できたのではないかと思います。この場をお借りして御礼申し上げます。

武 寛兼

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