福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2018年12月号 月報

「来たれ、リーガル女子!」~女性の弁護士・裁判官・検察官に会ってみよう!~

月報記事

両性の平等に関する委員会 石田 淳(62期)

1 はじめに

平成30年(2018年)11月3日、西南学院大学法科大学院棟にて、内閣府・男女共同参画推進連携会議・日弁連・九弁連・当会主催の、学生・保護者・教員向けシンポジウム「来たれ、リーガル女子!」~女性の弁護士・裁判官・検察官に会ってみよう!~が開催されましたので、ご報告いたします。このシンポジウムは、内閣府の男女共同参画推進事業の一環と位置付けられ、一昨年は、東京(早稲田大学法科大学院)で、昨年は大阪(大阪大学法科大学院)で、同様のシンポジウムが開催され、本年度は福岡にて九州初開催となりました。新聞の他、当日はテレビカメラ取材が入るなど、マスメディアの関心も高いイベントとなりました。また、このシンポジウムの基調講演及びパネルディスカッションは鹿児島大学、琉球大学にも中継され、それぞれの会場にも学生・保護者・教員が多数参加していたようです。

2 当日の状況

当日は、女子中高生・その保護者・教員等約100名が参加する盛況でした。「来たれ、リーガル女子!」という標題に表れているとおり、女子中学生・女子高校生をターゲットにしたシンポジウムではありますが、男子学生も参加可能でしたので男子学生も数名参加し、また、少数ながら小学生や大学の法学部生の参加(傍聴)もあり、関心の高さがうかがわれました。

第1部の基調講演(講師と聞き手の対談形式)では、講師の原田直子先生から「弁護士になって良かった!」とのタイトルで、ご自身の経験を踏まえ、弁護士になって良かったと感じたときのことや、法律家、特に弁護士になることを勧める理由などについてお話いただきました。福岡セクハラ訴訟で時代を切り開いた原田先生の目から見た、現在の我が国のセクハラ問題など、世間の関心の高い話題も多く、中学生・高校生にわかりやすかったのではないかと思います。

第2部のパネルディスカッションでは、弁護士、裁判官、検察官それぞれ1名ずつのパネリストが、職業選択の動機や、やりがい等を、お互いの職業と対比しながら説明しました。法曹が題材となったテレビドラマと実際との違い、たとえば、テレビドラマのように、法律家が1つの事件だけを1日中扱っているようなことは実際にはないといった話もあって、中学生・高校生の興味を引いたのではないかと思います。

第3部のグループセッションでは、中学生・高校生に6~8名程度ずつの、「民事・家事」、「刑事」、「国際関係」、「企業法務・組織内弁護士」、「憲法・人権」というテーマを設定した小グループに、概ね中学生・高校生の希望に沿って分かれていただき、各グループごとに、弁護士、裁判官、検察官の2名ないし3名からなる登壇者が仕事内容の紹介等をし、中学生・高校生が質疑応答できる時間を設けました。登壇者の話を熱心に聞き取り、メモを取る学生のほか、主体的に質問や発言をする学生の姿もありました。弁護士はドラマのように検察官とバチバチやっているのかとか、結婚相手は同業者が多いのかといった質問もあったようです。中学生・高校生は、将来の進路のために今何をすべきなのかという問題意識が高かったようです。

中学生・高校生がグループセッションを行っている間、保護者・教員向けに、宇加治副会長が裁判官、検察官のパネリストを交え、「法曹という職業選択について」と題する法科大学院、法曹としての就職等に関するガイダンスを行いました。中学生・高校生に負けず劣らず、保護者・教員が熱心に聞き入っていました。

3 所感

私は、両性の平等に関する委員会、法教育委員会、法科大学院運営協力委員会、対外広報委員会のメンバーからなる本シンポジウムの当会における実行委員会のメンバーとして、本年7月から準備業務に携わるとともに、第1部の基調講演の聞き手弁護士として登壇もさせていただきました。シンポジウム当日、中学生・高校生の前に座り、また、後ろから傍聴した者としては、法曹に関心を持ち、来場した中学生・高校生の真剣な眼差しや、登壇者の発言をメモに取る熱心さに驚かされました。また、学生同士の「面白かったね」との感想の会話が漏れ聞こえたという報告に接し、大変嬉しく思いました。同時に、中学生・高校生の関心、質問、発言を引き出すためにコーディネートする登壇者の必要性、重要性も認識し、この点においては学生向けイベントを定例的に実施している法教育委員会のメンバーの知見が大いに役立ったと感じています。

法曹人口における女性割合の拡大のため、また、法曹を目指す意欲ある学生の確保のために、このようなシンポジウムを開催し続け、かつ、開催していることを広く知ってもらうための広報活動が重要であることを改めて認識した次第です。

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第61回人権擁護大会シンポジウム「組織犯罪からの被害回復」~特殊詐欺事犯の違法収益を被害者の手に~のご報告

月報記事

民事介入暴力対策委員会副委員長 天久 泰(59期)

はじめに

日弁連民事介入暴力対策委員会が中心となって、第61回人権擁護大会(10月4、5日。青森市)において、特殊詐欺事犯に関する被害の防止、回復等を目指す大会決議について承認を得ることができました。本稿では、大会前日のシンポジウム(4部構成)の内容を中心にご報告します。なお、このシンポジウムに先立ち、本年7月28日には、北九州市において、「特殊詐欺事案の被害回復の現状とその課題」をテーマに、日本弁護士連合会及び九州弁護士会連合会と共催のもとプレシンポジウムが開催されています。

1 第1部「特殊詐欺被害の実態」

「特殊詐欺」とは、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により現金等を騙し取る詐欺をいい、オレオレ詐欺、架空請求詐欺に代表される振り込め詐欺、振り込め詐欺以外の特殊詐欺(金融商品等取引名目の特殊詐欺等)を総称したものです。2017年の「特殊詐欺」の認知件数は、1万8212件、被害総額は約394.7億円に上り、一向に減少の兆しが見えません。

第1部では、特殊詐欺被害者の被害実態に詳しい辰野文理教授(国士舘大学法学部)による基調講演を含む、パネルディスカッションが行われました。

その中では、特殊詐欺の手口も電子マネー型、収納代行利用型の手口が急速に増えつつあり、特殊詐欺を敢行する犯罪組織が、民間企業が社会に提供するサービスやツールを利用して、その利益の最大化を図っていることが報告されました。近年では、暴力団の特殊詐欺への関与が深まっている実態があり、2017年における検挙被疑者に占める暴力団構成員等の割合は約25.2%となっています。

実際に被害を受けた被害者のインタビュー映像も流されました。老後の資金として貯めた多額の現金を詐取された事例では、資金を失った喪失感とともに、加害者の言葉を信用した自らの落ち度を責め、心身に失調を来たしたり、自殺を図ることを考えたりする事態に追い込まれていることも報告されました(特殊詐欺件数1万3196件のうち、65才以上の割合は72.5%)。このような被害実態からは、他人に被害を打ち明けられず、一人で抱え込む傾向にあること、被害者の主体的な申告を期待するのではなく、事前予防こそが重要であるという意見が示されました。

2 第2部「特殊詐欺に対する行政・民間企業の各種取組」

被害者対策、通信手段対策について、行政・民間企業の取り組みに関する報告がありました。

通信手段については、IP電話の転送機能や転送電話サービスを悪用するなど、犯罪組織の手口は更に進化しており、必要十分な対策が講じられているとは言い難いようです。

その他、民間企業が提供するサービスやツールを犯罪組織に入手・利用させないことによって特殊詐欺による被害を未然に防止するよう自主的な取組の推進や、民間企業同士で特殊詐欺の手口や、これに対する有効な対応策及び取組事例について情報共有する仕組みなどの紹介がありました。

3 第3部「特殊詐欺に対する捜査と裁判の現状」

特殊詐欺に対する捜査と裁判の現状についてパネルディスカッションがありました。

具体的には、警察庁は、2015年1月29日、重点的に取り組むべき事項等、特殊詐欺対策の推進について指示した「当面の特殊詐欺対策の推進について」を発信する等、特殊詐欺の取締りを強化しています。その結果、2017年においては検挙件数4644件(2011年以降で最多。)、検挙人員2448人(過去最多だった2015年とほぼ同等の水準。)という成果を挙げています。

また、最高裁第三小法廷平成29年12月11日決定は、「だまされたふり作戦」の開始後に共謀に加功した「受け子」について、加功前の欺罔行為の点も含めて詐欺未遂罪の共同正犯としての責を負うとの判断をしたことなど、裁判実務においても積極的な判断がなされる傾向にあることが紹介されました。

もっとも、特殊詐欺を敢行する犯罪組織の首謀者らは、犯罪組織の実態を巧みに隠蔽しているため、末端の受け子や出し子に対して有罪判決が下されても、首謀者の検挙にまで至る例は少なく、特殊詐欺の犯罪組織の解明や被害回復には程遠い状態にあるとの指摘もありました。

4 第4部「特殊詐欺等の組織犯罪に係る被害回復」

被害回復手段について、スイス視察の結果報告が注目すべき点でした。

スイスでは、詐欺被害者に附帯私訴を申し立てる権利があること、犯罪被害者が、犯罪者、保険会社等の第三者からの補償を受けられない場合、犯罪者が支払った罰金、没収物等を被害者に給付することができること、有罪判決によらない没収手続があること、有罪判決によらない没収手続のうち、訴訟手続による没収は、検察官又は裁判官が凍結し、刑事責任を問えない限定的な場合に判決により没収すること、犯罪組織が処分権を有する全ての資産は没収できること、捜査手法として郵便・電気通信の監視、技術監視装置、観測、銀行取引の監視、司法取引、潜入捜査が可能であることの紹介がありました。

また、刑法にマネーロンダリング罪及び没収の規定があること、マネーロンダリング対策のための法(AMLA)では、「疑わしき取引の報告」が定められ、同法10条に「財産の凍結」が定められていることが重要であり、日本でも導入が検討されるべきであると指摘されました。

5 さいごに

シンポジウムの翌日の大会では、前日までのシンポジウム及び基調報告書の内容に基づき、大要以下のような内容の決議案が採択されました。

  1. 特殊詐欺による被害を未然に防止するため、各企業は各種防止措置を講じ、各業界団体は取組事例を周知共有して、業界レベルでの防止措置を推進するとともに、国及び地方自治体は特殊詐欺対策としての取組を強化すること。
  2. 国及び地方自治体は、十分な予算及び人員を投入し、特殊詐欺に係る捜査態勢を拡充すること。
  3. 国は、刑事訴訟手続を利用した実効性を有する犯罪被害回復制度を採用している諸外国の例も参考にしつつ、実効性のある被害回復制度を構築すること。
  4. 国は、金融機関による自主的取組として実施されている預金口座等の凍結を支援し、更に推進・拡充するため、実効的に被害の回復を行うことができる法制度の導入を検討すること。
  5. 国は、海外に移転された犯罪収益につき海外当局による没収を通じた被害回復のための国際的連携を強化すること。
  6. 国は、以上の取組を推進するため、犯罪対策閣僚会議において、特殊詐欺に係る対策の基本計画を策定し、関係各政府機関へその対応を指示することにより、官民一体の特殊詐欺対策を推進すること。

以上のような決議を前提に、民事介入暴力対策委員会のみならず、全ての弁護士が特殊詐欺の被害は甚大な人権侵害であるとの認識を持ち、積極的に被害回復と被害の事前予防に向けた各種方策の提言等、必要な活動を行うべきであると考えます。

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中小企業法律支援センターだより「創業応援セミナー~創業時のお金のハナシ~」

月報記事

中小企業法律支援センター副委員長 牧 智浩(61期)

1 はじめに

本年10月24日、「創業応援セミナー~創業時のお金のハナシ~」を福岡市スタートアップカフェにて、九州北部税理士会、日本政策金融公庫、福岡県信用保証協会と共催しました。

4機関での創業応援セミナーは昨年に続き2回目の開催でした。講演、パネルディスカッション、交流会・相談会の3部構成で開催しましたが、関係者を除く参加者が42名(定員50名)と大盛況でした。また、セミナー当日には、日経新聞の記者による取材もあり、10月25日付の紙面に記事が掲載されました。

2 第1部(講演)について

最初に、日本政策金融公庫福岡ビジネスサポートプラザ所長の高橋秀彰氏と福岡県信用保証協会保証統括部創業・経営支援統括課主任の沖隆一郎氏に、「創業時の資金調達のポイント」というタイトルでご講演いただきました。

高橋所長からは、参加者に対し、金融機関に提出する創業計画書作成にあたっては、(1)簡潔に読みやすく書くこと、(2)具体的に書くこと、(3)自己の強みをアピールすることが重要であるとの助言がありました。

また、沖主任からは、自己資本については、単純に額面のみではなくその形成過程にも着目しているとのお話がありました。

やはり金融機関の担当者の話には非常に興味があるらしく、参加者はメモを取るなどしながら真剣に聞いていました。アンケートでも、講演内容について、38%の方が大変参考になった、54%の方が参考になったと回答しており、参加者から高い満足が得られました。

3 第2部(パネルディスカッション)について

次に、「専門家に聞く!これだけは知っておきたい創業のイロハ」というテーマでパネルディスカッションを行いました。高橋所長、沖主任に加え、九州北部税理士会所属の寺井博志税理士、当会の日隈将人会員がパネラーとして登壇しました。

寺井税理士、日隈会員から、金融機関のお2人に対し、「初年度赤字の創業計画書でも大丈夫なのか?」、「創業計画あるいは事業計画に士業が関与している場合、融資審査の際の信頼度が上がるのか?」、「法人と個人とで融資の受けやすさに違いがあるという噂は本当か?」といった質問がありました。

みなさん、これらの質問への回答はどうだったと思いますか?

気になる方は是非、来年度の創業応援セミナーにご参加ください!!開催未定ですが・・・(笑)

また、高橋氏や沖氏からは、弁護士や税理士に対して、創業時の支援活動の内容やアクセス方法などについて質問がありました。

日隈会員が、無用な法的トラブルを避けることの重要性とリスク回避における弁護士の有用性を訴えたうえで、ひまわりほっとダイヤルなどの相談ツールがあることを参加者に案内していました。参加者や金融機関を含む関係者各位に、弁護士による創業支援活動を知ってもらういい機会になったと思います。日隈会員、お疲れさまでした!!

このパネルディスカッションの目的は、第1部の講演内容の掘り下げと、弁護士や税理士の有用性を伝えることでした。アンケートでは、パネルディスカッションに対して、概要、「シナリオがよかった」、「それぞれの機関の考え方を知ることができた」、「詳細な話が聞けてよかった」との意見が寄せられており、目的は十分に達成できました。また、パネルディスカッションについては、54%の方が大変参考になった、38%の方が参考になったと回答しており、非常に高い満足を得られたようです。関係者一同、講演へのアンケート結果も含め、安堵しました。

4 第3部(交流会・相談会)について

セミナーを開催した会場では、そのまま、参加者と登壇者との交流会を行い、同刻、別会場で相談会を開催しました。

交流会場では、各登壇者のもとに参加者が集まり、個別に話を聞いて盛り上がっていました。

また、相談会では、5つの相談ブースを設け、合計10組の相談を受けました。この相談会の特色は何といっても、日本公庫、保証協会、税理士、弁護士が同席して相談を受ける真のワンストップサービスの実現にあります。

相談を受けた方に私が感想をお聞きしたところ、「4機関に一度に相談できるのはスゴイですね!!」とのご回答がありました。

5 最後に

本セミナーを開催するにあたっては、多くの方にご協力いただきました。

お忙しい中にもかかわらず閉会のご挨拶をいただきました池田耕一郎副会長、また広報の面でお力添えいただいた対外広報戦略PTの南川克博会員には、この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

最後になりましたが、当センターでは、今後も、創業支援を含む中小企業支援を通じて、中小企業事業者の方たちに、弁護士をより身近に感じてもらえるように努力していきたいと思っております。会員のみなさまにおかれましては、今後とも、当センターの活動にご理解・ご協力賜りますようお願い申し上げます。

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第61回人権擁護大会シンポジウム「外国人労働者100万人時代の日本の未来」のご報告

月報記事

国際委員会 丸山 明子(61期)

1 はじめに

本シンポジウムは2018年10月4日リンクステーションホール青森で開催されました。

「外国人雇用状況」の届出状況(2017年10月末時統計)によると、日本で働いている外国人労働者の数は約128万人(前年比18%増)、このうち約30万人が留学生等の資格外活動、26万人が技能実習生、約24万人が専門・技術(外国料理の調理師、語学教師など)分野となっています。すでに労働者50人のうち1人が外国籍の方となっており、今期の臨時国会では新しく在留資格「特定技能」を設置し、現行技能実習制度で受け入れている業種を拡大するための入管法改正案1が審理されており、成立すれば来年4月から施行される予定となっています。

まさに時機にかなったシンポジウムの内容ですので、本稿でご紹介できればと思います。

2 移民大国ドイツの先例

基調講演では宮島喬お茶の水女子大学名誉教授が登壇され「外国人労働者の受け入れと『人』との権利の保障」と題し講演されました。その中で、戦後の労働不足を補うため1961年より主にトルコから外国人労働者を受け入れてきたドイツの事例が紹介されました。

当初、ドイツでは彼らを定住化させないために2年〜数年程度の短期ローテーションで受け入れる政策を採っていましたが、受入企業から短期雇用による不経済(仕事ができるようになると帰国されるため、再度新たに人材育成しなければならない)を指摘され、1971年法律を改正し、より長期かつ更新可能な在留資格を設定するようになったという経過があります。石油危機後の不況で73年に外国人労働者の受け入れを停止し、帰国奨励政策を採るも効果がなく、かえって定住を選択し(帰国すると二度と戻れないため)、家族の呼び寄せを権利として求めるようになり、90年法律の改正により家族の呼び寄せを制度として認めるようになります。

受入当初の政策の姿勢及びその後の経過は、日本が現在そしてこれから直面する問題をそのまま映しているようです。

3 日本の現状:「技能実習生」

報告では「技能実習生」に特化し、問題点等が報告されました。報道等で頻繁に取り上げられておりますが、簡単にご紹介すると、

  1. 技能実習生は現地送出機関(ブローカー)に多額の保証金等を納めている人がほとんどで、こうした初期費用を返済するためには1年以上かかる。
  2. 安価な労働力としか見なさない受入機関が後を絶たず、劣悪な労働環境(雇用契約違反、低賃金、長時間労働、残業代の不払い、過労死、労災死、セクハラ、パワハラ等)、劣悪な住環境、強制帰国など労働法違反・人権侵害の温床となっている。
  3. 職場移転(原則)・転職の自由がない上、保証金等の返済のため帰国もできず、劣悪な職場から抜け出すために失踪、不法残留、不法就労に陥る実習生が少なくない。
  4. 技能実習という建前だが実態は単純労働に従事させるもの。

といった問題が存在します。「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」鳥井一平代表が、実習生がまさに受入機関の人から強制的に帰国されようとしている空港での緊迫したやり取りを撮ったビデオを流されましたが、日本でこのようなことが起きているのかと唖然とするものがあります。

これまで日本は援助や支援を通じた外交により、こうした送り出し国の人々からは好印象を持ってもらっていたはずですが、このままでは、これまでの外交成果を無に帰するどころか、若い人たちに日本への悪感情を植え付けることになりかねず、憂慮せずにはいられません。

なお、留学生(技能実習生よりも労働人口として多い)や専門・技術の在留資格で働いている外国籍の人、その他様々な就労形態で働いている外国籍の人たちには、それぞれ同様・固有の問題があるのですが、当該シンポジウムではそれについては全く触れられませんでした。「外国人労働者」と銘打っていますが「技能実習生」とすべきでしょう。なお宣言案採択に際し留学生について質問が上がり「新たな非熟練労働者受け入れ制度ができれば解決する。そもそも人権侵害の訴えが少ない。」と回答されていましたが、決してそのようなことはありません。

4 「特定技能」制度

パネルディスカッションでは、経団連井上隆常務理事が、経営者は中長期の在留・人材育成を望んでいること、労働人材獲得の国際的競争があり日本で働きたいと思ってもらえるような制度・環境が望ましいと発言されており、先に紹介したドイツの先例をも合わせて考えると、「移民政策は取らない」、「単純労働による就労資格は認めない」建前を考え直さなければならないのは、時間の問題であろうと思われました。

現在国会で審理されている特定技能制度は、残念ながらこうした声に応えるものではなく、また先に述べたような技能実習制度の問題を解決するものにはなっていません。また、最長10年の在留を認める制度でありながら家族の帯同を認めない、外国人のための生活支援(日本語の習得等)を国が行わない(民間や地方に丸投げ)といった問題点がさらに指摘されています。

なお、当該法案については、11月13日付で日弁連が意見書を出しています。

5 さいごに

今回のシンポジウムでは、外国人労働者受入後のあるべき社会として「共生」をテーマにした報告もあり、お決まりの海外=欧州視察報告もありましたが、1991年から日本語を母語としない人の日本語支援、生活支援、地域との交流会をしている「のしろ日本語学習会」、外国人の子の不就学ゼロに取り組まれている「浜松国際交流会」、66名(2017年度)の外国籍生徒を有する東京都立一橋高校(定時制)が抱える様々な課題と取り組みが紹介されました。

シンポジウムの成果として宣言が採択されましたが、法的サービスが必要な外国人労働者にアウトリーチできていない我々の課題について、他に向ける厳しい目を自分たちにも向ける必要はないのだろうかと思われました。

また、今回、私は、本シンポジウムの実行委員として福岡からスカイプを利用し会議に参加していましたが、会議の進行ではそうした参加者を把握しない等々広く意見を聞く様子はなく、一部(主に関東)の意見に日弁の衣を着せる場のようで、これまで日弁で活動されてきた地方委員の方々のご苦労に想いを馳せる機会ともなりました。

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2018年10月号 月報

事業承継セミナー・個別相談会のご報告

月報記事

中小企業法律支援センター 委員 三角 亘平(67期)

第1 はじめに

当会は、毎年、日弁連及び全国の弁護士会と連携して全国一斉で中小企業向けシンポジウム及び無料相談会を開催しています。

当会では、同シンポジウム及び無料相談会を、福岡、北九州、筑後、筑豊の4地区で同時開催しておりますが、今年は、平成30年9月7日(金)、例年同様に同4地区で同時開催されました。

具体的には、福岡地区では天神のエルガーラホールにおいて、事業承継に関するセミナー等が開催されました。

同セミナーにおいては、まず「伝統の味をつなぐ」と題し、因幡うどん前社長竹﨑敏和氏による、当事者側から見た事業承継に関する講演、次に「事業承継支援ネットワーク事業について」と題して承継コーディネーター田淵耕一郎氏による講演、さらに「弁護士による事業承継支援」と題し、当委員会の委員である高柴弁護士の講演が行われました。その後、それに付随して、弁護士による個別相談会も実施されました。

セミナーは、ほぼ満員の大盛況であり、弁護士にとっても大変ためになるものでした。

以下、福岡地区での個々のセミナー及び個別相談会それぞれの概要についてご報告いたします。

第2 「伝統の味をつなぐ」

創業65年の歴史と伝統を持つ因幡うどんにおいて、工場設備の老朽化による大きな再投資が必要になり、後継者選定の必要性が現実のものとなって事業承継が検討されることとなりました。

その際、店を閉める、子供に経営を譲る、社員に経営を譲るといった選択肢も検討されましたが、資金力の問題や、従業員の雇用の問題、別の仕事を生き生きとしている子供の意思といった問題を考慮し、最終的に第三者に経営を譲るという選択をされたということでした。

第三者に経営を譲るとの決断をしてから、弁護士、会計士、税理士を含む専門家集団に譲受企業の紹介から、会社の客観的価値の評価、譲渡対象にどこまでの資産を含めるのか、会社分割等利用するスキームの選択、具体的契約内容まで支援を受けることになりました。

この際、前社長が最も重視していたのが、演題でもある「伝統の味をつなぐ」、すなわち、味と品質を承継する、ということでした。

実際に事業承継を終えた後も、前社長は顧問として承継会社に残り、店で出汁を取ったり、味と品質の維持に関わり続けており、非常に満足感を得ているとのことでした。

仮に専門家集団の支援がなければ、伝統の味や品質が維持できなかった可能性があるばかりか、そもそも伝統ある会社が廃業していた可能性もあります。弁護士を含む専門家集団の支援の必要性が痛感されるとともに、その影響の大きさに感銘を受けました。

第3 「事業承継支援ネットワーク事業について」

承継コーディネーターの田淵氏からは、主として事業承継の現状と課題及びネットワーク事業の意義等の説明がありました。

まず、事業承継の現状と課題として、好業績企業でさえ、高齢化の波に押され、後継者難に瀕し、廃業の可能性がある現状が指摘されました。

第2で取り上げた因幡うどんといえば、博多うどんといえばココ!というほどの有名店なわけで、そのような好業績企業が廃業予定企業の中に存在しているということでした。

因幡うどんの場合はうまく弁護士等が入ることで成功した例ですが、実際には、事業承継がなされずに廃業予定の企業が多数あり、それにより雇用、技術、ノウハウが失われてしまう可能性が指摘されました。

なお、廃業予定企業の廃業理由は下のグラフのとおりであり、後継者難という消極的な理由が3割近く占めていることが目を引きます。

事業承継セミナー・個別相談会のご報告 廃業予定企業の廃業理由(田淵氏の当日配付資料より引用)

(田淵氏の当日配付資料より引用)

他方、事業承継を支援するに当たって、弁護士を含む支援機関の支援が細切れになっているという問題点が指摘されました。

そこで、福岡県事業承継支援ネットワークでは、この点を解決すべく、地域中小企業支援協議会と商工団体、金融機関、士業等専門家、行政が連携するネットワーク構築を重要視しているとのことでした。

具体的には、事業承継診断を実施して、潜在的な事業承継問題を顕在化させ、連携する専門家への相談が適当と判断される場合には、専門家を派遣するとともに、診断ヒアリングの実施者がこれに同席して連携していること等が説明されました。

また、診断においては、事業承継前に経営改善を図り、後継者候補等が継ぎたいと思えるような経営状態に高める取り組みや経営の「見える化」、企業の魅力作りを進める取り組みについて、わかりやすい説明がなされました。

第4 「弁護士による事業承継支援」

高柴弁護士からは、M&A以外の事業承継の場合に何が問題になるのかといった説明や、事業承継における法的問題の指摘がなされ、弁護士の支援の必要性が説かれるとともに、ひまわりほっとダイヤルが一般向けに周知されました。

第5 個別相談会

その後、個別相談会が催され、こちらも事業承継を主たるテーマに設定してはおりましたが、その周辺分野も含め、不動産の所有権について、M&Aで買い取る場合の法的問題点について、M&Aによる買収の進め方について、労働関係について、契約書について、といった様々な相談がなされ、大変盛況でした。

第6 おわりに

事業承継は、高齢化が進む現在において、ホットな分野であることは間違いありませんが、中小企業経営者にとっては先送りしがちな問題です。

我々弁護士が、その支援をしていくことの重要性が痛感されるとともに、逆に当事者からのフィードバックを受け、より良い支援体制を構築していくことが重要だと感じました。

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