福岡県弁護士会の弁護士・職員の読んだ本・オススメの本

2012年5月17日

アメリカ

キレイならいいのか

著者   テボラ・L・ロード 、 出版   亜紀書房

 アメリカの女性弁護士の書いた本です。ABA(アメリカ法曹協議会。日弁連みたいな団体ですが、強制加入ではなく任意加入)の女性法律家委員会委員長もつとめました。
 容姿に関して、男性と女性は別々の基準が適用される。ダブルスタンダードがある。
 男性は買い物代行サービスや美容のプロの世話にならず、そのための費用を払わずともちゃんとした身なり整えることができる。それなのに、なぜ女性はそれが出来ないのか。
 たとえば、女性のはくハイヒールはひどい腰痛や足の障害の大きな原因になる。女性の5分の4がこうした健康問題をいつかは経験する。
 アメリカ人は、年間400億ドルを投じてダイエットに励んでいる。
 ダイエットに励む人の95%は1~5年のうちに体重が元に戻る。
 消費者が化粧品に投じる180億ドルのうち、材料費が占める割合は7%にすぎず、残りは高価な包装費や、科学者に言わせると効果のない商品の広告費である。
 身だしなみへの投資額は全世界で年1150ドル。ヘアケアに380億ドル、スキンケアに
240億ドル、美容整形に200億ドル、化粧品に180億ドル、香水に150億ドルである。
 だが、このようにお金を使っても、効果はめったに上がらない。
 アメリカの女性は、毎日平均45分かけて基本的な身づくろいをする。
 アメリカでは、成人の3割、思春期の女性の6割がダイエット中だ。
 アメリカ人の1%弱が無食飲症を患い、4%がむちゃ食いをする。
きれいになるための努力から満足感を味わうこともあるだろう。だが、こうした努力は、不愉快な重荷になるし、恥辱感や挫折感の源ともなり、不必要な出費を強いることもある。
 イギリスの有名な女性歌手スーザン・ボイルがイメージチェンジしたとき、マスコミが叩いた。背が低くて太っているけれど、それがスーザン・ボイル。それで何がいけないって言うの?スーザン・ボイルはそう言って開き直った。しかし、それでも周囲からの重圧に耐えかねて、ストレス治療のため入院することになった。
 性的嫌がらせを禁止する法律が出来た。その問題点は、過剰反応ではなく、被害申告があまりに少ないことだった。
 明白な容姿差別禁止令をもつ国はアメリカのほかはオーストラリア一国のみ。アメリカと同じく、オーストラリアでも、審判所に持ち込まれる容姿差別の訴えの大部分(6割)は、人種、性別、宗教、障害など、容姿以外の要因が関係している。訴えの大多数(9割)は成功していない。
女性にとっての美しさのもつ問題点を多角的に検討した本です。
(2012年3月刊。2300円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

2012年5月16日

社会

福島第一原発 ―真相と展望

著者   アーニー・ガンダーセン 、 出版   集英社新書

 アメリカのスリーマイル島の原発事故を研究した専門家による分析ですので、説得力があります。
 3月18日の時点でメルトダウンしているとコメントしたことから、パニックに煽っていると非難された。しかし、実際には、政府や東電の方が間違っていた。メルトダウンは起きていた。福島第一原発では、今なお放熱が続いている。そして、大気や海への深刻な放射能漏れが観測されている。
 政府のいう「冷温停止」というのを額面どおりに受けとめてはいけない。
これで多くの日本人がごまかされていますよね。もう、過ぎたことだという錯覚がまん延しています。そこに原発再稼働を狙う、よこしまな経済界と政治家がつけ込んでいるのです。許せません。
 核燃料は塊と化したまま、中心部で、いまだに溶解しているだろう。
これって、恐ろしいことです。
核燃料が空気中でも溶解しないほどに冷めるには、少なくとも3年を要するだろう。
 一号機は、地震そのものから構造的なダメージをこうむった可能性が高い。そして、格納容器が破損しているということは、水がほかの容器から流出しているだけではなく、格納容器から外へ漏れているということ。この状態が何年も続く。建屋地下の放射線量が高すぎて、誰も近づけず、解決できない。汚染水が漏れ続ける。そして、いったん地下水に入った放射性物質を完全に取り出す術はない。
 二号機は見た目こそ一番ましだが、格納容器の破損は最も深刻である。
 格納容器が破損している一、二号機からは、何年にもわたって大気と地下水に放射能汚染が広がり続ける。
 三号機の格納容器のどこかに漏れがあるのは確実で、今なお蒸気が逃げている。何年にもわたって放出が続く。核燃料の大部分はメルトダウンし、さらにメルトスルーしている。建屋地下には、膨大な量の意泉水が留まっている。
 向こう10年にわたって、海中で核燃料の破片が見つかるだろう。セシウムやストロンチウムだけでなく、プルトニウムもふくんでいる。
 放射能が1000分の1になるまで25万年も付き合わなければならない。これらは、徐々に海中に溶け出す。
 一番の懸念材料は四号機である。四号機は、格納されていない炉心を冷却する機能を失っていた。
 大きな地震に再び襲われたとき倒壊する可能性が最も高い。四号機が崩れたら、即座に東京から逃げ出すほかない。
 四号機の使用済み核燃料プールは、今でも日本列島を物理的に分断する力を秘めている。直径10メートルもある格納容器の床から溶解した核燃料を剥がす方法は、誰も思いついていない。一~三号機の原子炉だけでも257トンのウランを回収しなければならない。格納容器の蓋から底までの高さは35メートルもある。その距離から遠隔操作のクレーンを用いて、溶解し金属と混じった核燃料を探し出さなければいけない。これを解決する技術はまだない。コンクリートと結合した核燃料は冷却のために水没させておく必要があり、水中ロボットを使うことになるが、そんなロボットはまだ設計すらできていない。
 核燃料を取り出すためには、必要な技術を開発して作業に着手するまでに10年、実行するのに10年ほどかかる。
 取り出しが成功するまで、放射性物質の放出は続く、その間、作業員を絶やさないよう次々に訓練しておかねばばならない。
 使用ずみフィルターは、核燃料と同じくらい危険なものである。
 処理費用20兆円という試算は過小評価かもしれない。取り出した核燃料をそのまま福島第一原発にはおいておけない。海辺なので再び津波が来る可能性があるから。
 使用ずみ核燃料は、3年間のプールでの冷却期間と30年間の中間貯蔵を経た最終処分場は決まっていない。これは人類の時間スケールをこえた話なのである。
日本では、現実を直視せず、何事もなかったように「日常」を取り戻すのが最優先になっている。それが可能なのは、実際には始まっている健康被害が直面化するまで数年かかるためだ。これから健康への悪影響が顕在化してくるかもしれない。だから、みんなが立ちあがって口を開く必要がある。
小出助教の最新の本を読むと、玄海原発が今もっとも危険だということです。40年もたって、明らかに老朽化しているからです。大事になる前に、ぜひ手当てしてほしいものです。
 深刻な現実から目をそらしたいのは私もやまやまなのですが、そういうわけにはいきません。とても怖い本でしたが、一読を強くおすすめします。
(2012年3月刊。700円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

2012年5月15日

社会

ルポ 良心と義務

著者   田中 伸尚 、 出版   岩波新書

 「日の丸・君が代」に抗う人びと。これがサブタイトルとなっている本です。どうして日の丸・君が代の押しつけにあんなに狂弄するのか、不思議でなりません。だって、昔と違って、祝日に日の丸を揚げる家庭なんて、とんと見かけなくなりました。「君が代」なんてあの暗い、重苦しい、間のびした歌をうたっても、本来、気分を高揚させるべき儀式のそえものにもなりません。そして、あの歌詞の意味を理解している人なんて、どれだけいるでしょうか・・・。ところが、学校でだけは違います。目の色を変えて、教師と生徒たちに強制します。そこには多様性を育(はぐく)むという視点はまったく欠けています。なんという、お寒い教育現場でしょうか。要するに、そこにあるのは、上からの露骨な教職員統制です。教える側が萎縮していて、子どもたちが健やかに育ち、伸びるはずもありません。
 この本は、「日の丸・君が代」に今なお反抗する人が日本全国に存在することを明らかにしていると同時に、おおかたの人はあまりのバカらしさに口をつぐんでしまっている現実も紹介しています。私も、どちらかと言えば後者のタイプです。
 教頭は、「君が代」をうたえないと、一人前の大人になれないなどと言って生徒たちを脅す。うひゃあ、「君が代」なんて歌えなくても「一人前」の大人に誰だってなれますよ。なんということを、この教頭は言うのでしょうか・・・。
 在日コリアンは、大阪市生野区に次いで、東大阪市に多い。
 前は、校長は、「これより国歌斉唱しますので可能な方はご起立ください」と言っていた。しかし、今ではそんなことを言うのは許されない。
 橋下徹は、大阪府知事時代(2011年6月29日)、「今の政治に一番重要なことは独裁。独裁と言われるぐらいの力。これは、僕は今の日本の政治に一番求められていると思う」と語った。そんなことを語る人物に圧倒的な人気が集まる状況は、きわめて深刻である。
本当にそうですよね。反骨精神の人が多いはずの大阪人は、今、どうなっているのでしょうか。
 最近の新聞(5月2日)に、橋下の率いる維新の会市議団が上からの役員任命はおかしいと騒ぎ立てている記事がのりました。独裁はしたくても、されたくはないっていうことですが、ホントそうですよね、誰だって・・・。でも、橋下人気に頼って当選した市議会議員が独裁されるのは嫌だと騒ぎ立てるなんて、まさにマンガです。ただし、笑っているだけですまないのが残念です。
 教員を黙らせ、校長を支配下に置くためには、「日の丸・君が代」は最も有力な手段だった。今では、徹底的に洗脳され研修がくり返されている。強制を強制と感じない教員がフツーになっている。物言わない教員が最近たくさん出てきている。最近の若い教師は、マニュアル化された人が多く、与えられたものをこなすだけになっている。
最高裁判決で多数意見に反対した一人である、宮川光冶判事の次の意見は傾聴に値します。
「教育公務員は、一般行政と異なり・・・・教育の自由が保障されており、教育の目標を考慮すると、教員における精神の自由はとりわけ尊重されなければならない。
 自らの真摯な歴史観等に従った不起立行動等は、その行為が円滑な進行を特段妨害することがない以上、少数者の自由に属することとして、許容するという寛容が求められている」
 もっと教育現場を自由な雰囲気にして、のびのび教師も子どもも学び過ごせるようにしないと日本の将来は暗いものになってしまいます。
 読めば読むほど、なんだか暗い気分に包まれていく本でした。でも、現実から目をそらすわけにはいきません。日本の現実を知るためにお読みください。
(2012年4月刊。760円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

2012年5月14日

犬から見た世界

著者   アレクサンドラ・ホロウィッツ 、 出版   白揚社

 私は犬派の人間である。
 実は、私も犬派です。物心がついたころから、ずっと犬を飼っていましたので、犬とは慣れ親しんだ関係です。猫は飼ったことがありませんので、まったくなじみがありません。小学生から高校生まで、スピッツが家の中に同居していました。おかげで部屋はいつもざらざらしていました。でも、気になりませんでした。今なら、嫌ですけど・・・。子どもって、慣れてしまえば、何でも平気なんですよね。
 イヌ科のなかで、完全に家畜化されたのは犬だけ。家畜化は、自然には起こらない。
 オオカミは、付属品を装着する前の、いわば原初の犬である。
 考古学的証拠によると、オオカミ犬が最初に家畜化されたのは1万年から1万4千年前と考えられる。今日の犬種のほとんどは、この数百年のあいだに作り出されたものにすぎない。オオカミから犬への変化の速度は衝撃的な速さである。
犬の目は生まれてから2週間以上も開かないが、オオカミの子どもは生後10日で目を開ける。犬は、身体的にも行動的にも成長が遅い。
 犬は本当の意味で群れを形成しない。
 犬は人間の社会グループのメンバーである。人間やほかの犬のあいだこそが彼らの生来の環境だ。犬は人間の幼児と同じく、いわゆる愛着を示し、ほかの者よりも世話をしてくれる者を世話をしてくれる者を好む。世話をしてくれる者から離れることに不安を感じ、戻ってきた相手に特別な挨拶をする。
 同じ体サイズの犬とオオカミを比べると、犬のほうが頭蓋が小さく、したがって脳も小さい。犬は形も大きさも変えられるが、それでも依然として犬である。オオカミのサイズは、大部分の野生動物と同じように、同一環境では、ほぼ均一である。
 犬は人間の目を見る。犬はアイコンタクトをし、情報を求めて人間に目を向ける。オオカミは、アイコンタクトを避ける。うむむ、これって大きな違いですよね。
犬は決してオオカミには戻らない。そして、オオカミを生まれたときから人間のあいだで育て、社会化しても、決して犬にはならない。
犬の鼻は敏感そのもの。犬は鼻の生き物だ。犬は、訓練されると、人間のガンを検知することができる。
犬を洗って清潔にすると、犬のアイデンティティを奪っていることになる。匂いは、犬にとってのアイデンティティである。
 犬は、ある程度まで、人間の言語を理解している。
 犬は体を使って表現する尻尾を振るのも、そうである。
 人間の視野は180度だが、犬のそれは250~270度。犬は獲物を追いかけ、投げたボールを回収する優れた能力をもつ一方、ほとんどの色彩に対して無関心である。
 識別できる色彩の幅が狭いため、犬はめったに色の選り好みを見せない。
 犬の視覚は、ほかの感覚の補足手段である。犬は人間を匂いによって認識している。
 犬はよく遊ぶ。大人になってからも遊ぶ。遊ぶ前に信号を相手に送る。そして、その前に、まず注意をひく行動をする。
 犬は本当の動機から人間の注意をそらして、実際に行動を隠蔽することができる。
犬の時間において、瞬間は、より短い。次の瞬間が来るのが、もっと早いのだ。
 犬の意図について、頭が語らないことは尻尾が語る。頭と尻尾は、おたがいに鏡であり、同じ情報を並行して伝えるもの。
 犬は、なじみのあるものも新しいものも、両方とも好きである。よく知っている安全な場所で、新奇なものを楽しむのが幸せなのである。それはまた退屈をも癒す。新しいものは注意を必要とするし、活動を促す。犬にとって、新しいものは魅力的なもの。
 犬という、人間にとって身近な生き物の実体をさらに知ることができました。犬派の人におすすめの本です。
(2012年4月刊。2500円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

2012年5月12日

司法

過労死・過労自殺、労災認定マニュアル

著者  川人 博 ・平本 紋子  、   出版   旬報社

 身内が亡くなったことを前提として相談を受けているときに、それって過労死じゃなかったの・・・・?と思うことがあります。でも、遺族はなかなか問題にしようとはしません。生前、故人が世話になった会社に弓を引くわけにはいかないという気持ちからです。
 そんな人たちに気軽にすすめることのできるのが、この本です。マニュアル本として、とても実践的な内容です。本文100頁のQ&A方式で実践的かつ明快です。
 「もう疲れました」「悪いのは自分です」という遺書があっても労災と認めなられる。かつては、遺書があれば「故意」による覚悟の自殺だとして業務外とされることが多かった。現在では、遺書にみられる心身の状況や業務に関連する記述が本人の精神障害の症状や業務上の心理的負荷を証明するものとして積極的に評価されることがある。
 労災申請書を出そうとして会社が証明書を書いてくれなかったときには、そのことを書いた証明文をつけて監督署に提出すればいい。
ひどい長時間労働しながら、タイムレコーダーがそうなっていないときには、会社に残ったパソコンで稼働状況を証明する。そのための裁判所の証拠保全手続のときには、パソコンの専門家であるシステムエンジニアを同行して確実に保存する。
 電子的な記録がないときには、同僚から聞き取って報告書をつくる。
つぶれかかっている会社のようなときには、代表取締役個人に対する侵害賠償請求も考える。
 会社と示談するときには、労災保険とは別のものであること、慰謝料であることを明記しておく。慰謝料には所得税がかからない。
著者は私と同じころに大学生でした。今では過労死問題の第一人者です。そのうえ、東大駒場で有名な「川人ゼミ」を1992年から続けています。たいしたものです。引き続きがんばってください。
 著者より贈呈していただきましたので、感謝の気持ちをこめて紹介させていただきました。
(2012年5月刊。1200円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

2012年5月11日

生き物

先生、モモンガの風呂に入ってください

著者   小林 朋道 、 出版   築地書館

 なんとシリーズ第6巻です。偉いですよね。文体が軽くて面白く読めるうえに、観察の対象となった生き物たちが可愛らしいばかりでなく、著者と学生たちの対応がほのぼのしていて、いつも一気に読了してしまいます。場所は鳥取県の山奥深いところが舞台です。
 そこの森に棲むモモンガを探検し、よくよく観察します。
地上から6メートルの高さのところに据え付けた巣箱にモモンガの赤ちゃんを発見。そっと地上に降ろして計測して観察します。洞窟も探索します。冬眠中のコウモリを見つけました。さらに、カエルまで・・・。
 モモンガは、巣の材料として、杉の樹皮を使う。モモンガは巣の中で、スギの香りに包まれて、癒されながら休息する。
モモンガを捕まえると、顔の写真をとり、尾の毛を少し刈り、さらに注射器でマイクロチップを尻の皮下に入れる。いずれも、あとで個体識別できるようにするため。
 こんなユニークな教授とともに森の奥深くまで入りこんで実地調査できるなんて、この鳥取環境大学の学生はなんと幸せなことでしょう。
 恐らく学生である本人たちはそう思っていないでしょうから、私が代わりに言わせていただきます。
 先生、この調子で第7弾を続いて飛ばしてくださいね。
(2012年3月刊。1600円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

アメリカ

ティーパーティ運動の研究

著者   久保 文明 ほか  、 出版   NTT出版

 アメリカの保守主義の実像を知りたくて読みました。ティーパーティって、いったい何なのか・・・・?
 ティーパーティ運動の主要な目的として、宗教的な争点があげられることはほとんどなく、経済争点が主である。
 ティーパーティ運動の支持者の半分近くは無党派層である。この運動は、保守的であり、共和党員と無党派とが混合した運動である。
 ティーパーティ運動は、ローカルでかつ小規模な団体が多く存在している。ティーパーティ運動には指導者がいない。運動全体をまとめる旗振り役は存在しない。
 多くのローカルなティーパーティ系団体は、巨大な連邦レベルの組織と結びつくことを望んでいない。一見すると連邦レベルで一つのまとまった集団のように見えるティーパーティ運動は、実は地域レベルの数々の社会運動の集まりに過ぎない。
 近年の無党派層の急激な保守化、無党派層の急激な経済保守化には、「大きな政府」化によっても好転しない現状に対する反発として理解できる。
 2008年から2010年にかけて、自らのイデオロギーを保守と答えた人が37%から42%へと5%も増えた。他方、穏健と答えた人は、37%から35%に、リベラル派は22%から
20%へと減少した。
 「大きな政府」化を行っても好転しない現状に反発する人たちのうち無党派の人たちは、その多くが近年になって保守化、しかも経済的に保守化した。そして、そうした人たちが、ティーパーティ運動の支持者の半分近くを占めるようになった。ティパーティと共和党主流派との政策的な溝は大きい。
 オバマ大統領について、マルクス主義者ではないが、マルクスモデルの一部を内面化している人物だと見ているそうです。ええっ、そんなバカな・・・・、と思いました。オバマ大統領は、史上もっとも急進的な大統領だというのです。本当でしょうか・・・・???
 減税、小さな政府、大きな自由。この理念というのは、大金持ちにとって住みやすい国づくりということですよね。私は、とんでもない政策目標だと思うのですが、案外、中間層がこれにころっと欺されてしまうのですよね。
ところで、自らをティーパーティと名乗るのは、18%で、実際に行動したり、寄付したりするのは4%に過ぎない。
ティーパーティの内情を分析した本として興味深く読みました。

(2012年1月刊。2800円+税)

投稿者 霧山昴 | URL

2012年5月10日

社会

メルトダウン

著者   大鹿 靖明 、 出版   懇談社

 3.11の起きたとき、東京電力の清水社長は夫人同伴で優雅に奈良を観光していた。そして、実力者である勝俣会長と筆頭副社長は大手メディアの幹部たちを引き連れて中国にいた。
3000人が働く東電の部門は、そこだけが東電全体から独立した王国を形成していた。東電の武藤栄副社長は、この日の来ることを知っていた。しかし、その対策は何ひとつ講じなかった。原子力村のお歴々は、みな巨大津波の想定を知っていた。それなのに、勝俣会長にも清水社長にも知らせなかった。
 東電の原子力部門は東大工学部率が主流を占めていた。吉田昌郎所長は、東京工業大学の大学院で原子核工学を専攻した。日本の原子力行政のトップは、誰も全電源喪失という事態を想定していなかった。
 共産党の吉井議員の想定のほうが、原子力安全・保安院の寺坂院長より勝っていた。ベントが必要だといっても、そんな実務的なことは、協力会社と呼ばれる「下請け」の社長や作業員のほうがはるかに詳しい。
東電の社長は現場に出るのを嫌がった。いざというときに役立つ原発についての知見は「空洞化」し、東電社員の力量だけではいかんともしがたい。
 福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の量は、半減期が30年と長いセシウム137でみると、広島に落とされた原爆の168個分にもなる。ストロンチウム90で換算しても広島型の2.4個分もあった。このように、すさまじい放射能汚染をまき散らした。
 保安院の寺坂信昭院長は東大経済学部を卒業して経産省に入ったキャリア組の高級官僚だ。直近の仕事は、スーパーなど流通業界を管轄する商務流通審議官だった。要するに、原発のことを何も知らない人が原発の保全を監督するところのトップだったというわけです。恐ろしいことですね。ぞっとします。
 ベントが実施されたのは、古田所長が3月12日午前0時過ぎに準備を指示して14時間もたったあとのこと。しかし、そのときすでに1号機はとっくにメルトダウンしていた。
 メルトダウンとは炉心溶融ともいい、核燃料が高熱にさらされ、どろどろに溶け(メルト)、原型を失って原子炉の底に落ちる(ダウン)のこと。
 東電のなかには、怒鳴りちらした菅首相への嫌悪感やら反発心から「菅降ろし」につながっていった。菅政権への敵がい心が東電の深層に芽生えていった。
 枝野官房長官(元・経産大臣)は、「東電を殺人罪で告訴するぞ」と怒鳴ったそうです。大混乱のなかで、東電は自分たちに風当たりの強い首相官邸への不信感が増幅されていった。
吉田所長は「死」を意識した。社員や協会会社の作業員たちの人命を守らないといけない。吉田所長は制御に必要な要員を残して大半は退避させたいと思った。
菅首相が東電本社に乗りこんできた。「東電が逃げたら、日本は100%つぶれる」と叫んだ。
 福島第一原発には、3.11事故当日、3500人が脱出していき、ゴーストメルト化した。注水作業に必要な70人ほど(「フクシマ50」として有名なんですが・・・)を残して「フクシマフィフティーズ」が結成された。実際には50人ではなく、70人が参加した。
 この70人の肩に日本の将来がかかったわけなんです。不幸中の幸いが続いて今に至っています。こんな危ない原発は即刻すべてを廃止すべきだと思います。
(2012年3月刊。1600円+税)

投稿者 霧山昴 | URL