少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌 逆送少年(23・6月号)

第1 付添人生活1年を振り返って

平成21年12月に弁護士登録して以来、6件の少年付添事件を担当した。

最初に担当した少年は検察官送致、いわゆる逆送であった。2件目及び3件目に担当した少年は少年院送致となった。4件目及び5件目に担当した少年は試験観察を経て保護観察処分となった。

現時点で最後に担当した少年は、検察官送致となった。つまるところ、私が担当した少年は、すんなりと社会に戻ることが出来なかったのである。

今回は、逆送されてしまった2人の少年について記してみたい。

第2 逆送少年A

1 初回面会

私は、当番付添人要請がなされたため、小倉少年鑑別支所にAに面会に行った。道路交通法違反保護事件であった。

Aから一通りの話を聞くと、Aは19歳と11カ月であることがわかった。また、今回鑑別所に入れられたのは無免許運転と飲酒運転であるが、以前にも無免許運転で逮捕され略式罰金刑を受けていることがわかった。

2 内妻との面接

Aの内妻はAより2つ年上であり、2人の間には0歳の子供がいることがわかった。Aも内妻も子供との3人での生活を希望していた。

3 父親との面接

Aの父親はAが内妻と同居していることに猛烈に反対していた。

4 審判

私は、Aの審判には父親に来てもらうことにし、父親との衝突を避けるため内妻には審判に来ないように説明した。

審判では、Aの就業先が確保されていること、父親の監督が期待できることなどを意見として述べたが、年齢切迫少年であり、刑事処分相当として検察官送致となった。

5 公判

検察官送致となったAは在宅のまま起訴され、引き続き私が刑事弁護人として活動することとなった。

公判にあたって、少年が運転していた車を処分することから始め、父親及び雇用主に情状証人として証言してもらった。

6 判決

元少年は、懲役1年、執行猶予3年、猶予期間中の保護観察、という刑に処せられ、訴訟費用までAの負担とさせられた。

第3 逆送少年B

1 初回面会

私は、当番付添人要請がなされたため、小倉少年鑑別支所にBに面会に行った。福岡県青少年健全育成条例違反であった。

Bは、後輩2人に入れ墨を入れたため警察から逮捕された、後輩は同意していたのであるから悪くないと述べていた。

Bも19歳11か月であった。

2 調査官からの連絡

私は、法律記録を謄写後、どのような意見を述べるか思案していた。

すると、調査官から連絡があった。調査官は、Bの年齢が切迫しているため、本日付けで検察官送致決定とし、同時に観護措置決定を取消したいので、付添人の意見を伺いたいと言った。

私は、同意すると言った。

3 鑑別所にBを迎えに来る母親たち

私は、鑑別所にBを迎えに行った。そこには、Bの母親とその妹が2人で迎えに来る予定になっていた。

私は手続きに来ていた調査官とBとの3人で母親たちの到着を待った。母親たちは両者ともに携帯電話を持っておらず、Bを含めて本当に鑑別所に向かってくれているのか不安になった。

それから2時間が経過し時刻は午後6時となった頃、2人は到着した。

Bは母親を「かあちゃん」と呼んでいた。そして、母親の妹のことを「ママ」と呼んでいた。

Bは、母親と姉と3人で同居しているが、姉の実母はBの母親の妹であった。

つまり、Bの父親は母親姉妹との間に子供をもうけていたのである。

第4 さいごに

少年A、Bともに複雑な家庭環境及び社会状況にあった。

付添人として彼らの人生にかかわる時間は限られたものであり、彼らの人生を劇的に変えることは困難だといえる。

しかし、彼らが、この先道に迷ってしまった時、再び私に連絡をしてもらえるような、そんな付添人活動が出来るよう心掛けている。

疋田 展大

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