少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(25・1月号)

1 事案の概要

平成24年10月ころ、私が当番で出動したところ17歳の少年被疑者だったので、被疑者援助でついてその後付添人までつとめました。私にとっては、新人としてサポート研修をした後、初めて一人で担当した少年事件でした。

非行事実は住居侵入。何台かで原付自転車を運転しており、警察にみつかりバイクを置いて走って逃げ出し、他人の家で隠れていたところ、警察にみつかり現行犯逮捕されたとのことでした。

留置所での印象としては、初めての逮捕で緊張しており、非常に心細い思いをしているようでした。

2 被疑者段階

非行事実自体には特に争いがないということだったので、一緒に暮らしている父に連絡をとりました。父によると「少年が小学生くらいのときに離婚し、一時期は母親のところで暮らしていたが、その後私と暮らすようになった。ただ、母親とは現在もよく会っているようだ。中学校卒業後はバイトを転々としてた。しかし、ここ2、3カ月は仕事が楽しいと言っており、仕事がある前日は遊びにいくようなこともないので、信頼していた」とのこと。父親、兄、母親、祖母それぞれが交替でほぼ毎日面会に行っていました。

仕事の話が出てきたので、早速社長さんに電話したところ、いきなり、「弁護士さん、少年に『出てきたらはちくらすぞ!(多分ぶんなぐるぞの意味)』と言ってください」と言われ、これは今後の雇用継続は無理かと思いましたが、よくよく聞いてみると愛情のある方のようで、また出てきたときに働かせることは構わないとのことでした。

少年自身も、働いていたところに戻りたいと希望がありました。

私は、「少年はまじめに働いていたし、今後もそこで働くことができるし、受け入れる家族もしっかりしているし、これは観護措置はとられなくてよい事案なんじゃないか!」と思い、観護措置は必要ないとの意見書を裁判所に提出しました。

しかし、あっさり観護措置になってしまいました。あとあと、調査官や他の弁護士と話をしたところ、暴走行為をする少年らって昼はまじめに働いたりしてますからねーと言われ、「真面目に働いていてえらいじゃないか、これは観護措置なんて必要ない!」と考えた私は安易だったなと思いました。ただ、その段階では、雇用者の誓約書等も用意できなかったので、観護措置の必要性がないというためにはそこまですべきだったかなとも思います。

3 審判での様子

環境も整っていることから、鑑別所に入ってからは、再非行しないよう、今までの自分を振り返り、今後の生活や目標についてじっくり少年と話をすることに努めました。

審判当日、父親と離婚した母親が審判に来てくれました。少年は私と話すときは普通に話してくれるのですが、審判官からの問いかけにうまく答えることができませんでした。

少年は理解力がないわけではないのですが、自分の考えを言葉にまとめて話すのが苦手で審判の緊張もあいまって完全にフリーズしてしまっていました。

審判の結果は保護観察になりましたが、審判での対応をフォローできなかったのが悔やまれます。調査官意見にもあったのですが、少年は成功体験に乏しく、自分に自信がないところがあったので、審判をうまく乗り越えることができればその点も含めて評価してあげたかったので余計に残念に思ってしまいました。

4 最後に

いろいろ振り返れば、もっとああすればよかった等の思いがこみ上げてきます。弁護士としてはもちろん、人生経験も浅い私なので、よきアドバイスで少年を引っ張っていくようなことはできませんが、出会った少年が少しでもよりよい人生を歩んでいけるよう、ともに悩み考えていけたらと思います。

諸 隈 美 波

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