少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(24・11月号)

1 はじめに

平成24年7月、少年事件の付添人として活動しましたので、ご報告します。

2 事案の概要

本件は、15歳の少年が家出中に仲間2人と万引きをしたという非行事実でしたが(後に、放置自転車の遺失物横領が追加されました)、共犯の少年らも含め事実を認めており、非行事実そのものは比較的軽微で難解なものではありませんでした。

しかし、少年の生い立ちや生活環境は複雑で、幼少の頃から施設に出入りし、母親が離婚・再婚を繰り返し、家出時は、1DKの住まいに母親の内縁の夫や妹達を含め7人が生活しているというものでした。

また、少年は長期間にわたり家出をしており、驚いたことに一人で飛行機の手配をして一人で北海道に行き、そこでしばらく生活するなど非常に行動力がありました。

3 活動内容

本件は、いずれも家出中の行為でありましたので、まずは少年の家出を防ぐことが可能かどうかが重要と思われました。

そこで、少年と繰り返し接見し、少年自身の家族に対する正直な気持ちをまた、母親や内縁の夫からも少年の事をどのように考え今後どのように接していくつもりなのかを聞き出し、さらに、調査官と母親の面談に同席した上で調査官の意見も参考にしました。その結果、今後少年の家出の可能性は低いという結論に至りました。

調査官は当初は、少年の母親や家庭に対する態度、また母親の少年に対する態度から今後の少年の生活に不安を抱いているようでしたが、少年や母親の面談を通じて、最終的には少年の家出を防ぐことは可能で、家族と一緒に生活することが一番望ましいということで、意見が一致しました。

裁判官との事前面談では、やはり少年の家出が中心となりましたので、少年の家族に対する気持ちや態度に変化があったこと、少年が具体的な目標を持ちそれに向けて邁進する意欲を持ち始めたこと等、少年の家出の可能性は著しく低下したことを説明しました。

そして審判期日でも少年は、家族を大切に思っていることや今後は家出や非行行為を行わないこと等を自らの言葉で述べ、審判は保護観察処分が下されました。

4 最後に

今回の活動を通じて何度か接見を重ねていくうちに、少年は自らの行為によってどれほどの人に迷惑をかけたのか具体的に理解できるようになるなど内省を深め、また、改めて家族の大切さを知り、さらに自分の夢の実現のために具体的な目標を掲げることができるようになる等、少年自身に大きな変化があったように思います。

一方で、少年自身はとても素直で、非行が進んでいたわけではなかっただけに、私自身は今後少年が家出や非行を繰り返さないためにどのような活動をすればよいのか、また、今後の少年の健全な成長・育成を促すために何が一番良い方法なのか、短い期間で答えを出さなければならないことに非常に悩みました。 今回振り返れば、まだまだ付添人活動についての理解が足りなかったところもあったと思われます。しかし、それでも自分の活動を通じて一人でも立ち直るきっかけがつかめた少年が増えるように、今後も少年付添人活動に励んでいきたいと思っております。

毛 利 聖 紀

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